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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
259/530

骸骨をください その③

鼻の穴から鉤爪を入れて


脳みそを引きずり出し


脇腹に斧を下ろし


はらわたを引きずり出し


噎せ返る臭気の中


転生を望む忌み子の


なんとも美しき様よ

3


響也の斬撃を、結界を使って防いだ時、西原「手を誤った」と悟った。









「行け!! 死神の使い!!!」









死角から、響也のDeath Scytheより分離された、三日月形の刃が飛んでくる。


これは、ただの飛び道具ではない。


Death Scytheを握る響也の意思のもと、その軌道を自由自在に変えることができるのだ。


「っ!!」


西原は顔を逸らした。









パンッ!!









三日月形の刃が、西原が、顔に装着していた仮面に直撃する。


木を彫って作られたそれは、鋭い刃に、一瞬で切断されてしまった。


(しまった!!)


西原への直接のダメージは無かったものの、お面が割れてしまったのだ。


パラッと、真っ二つになった仮面か地面に落ちる。


仮面の奥から、西原の年老いた顔が現れる。










それを見た瞬間、Death Scytheを構えて追撃の体勢に入っていた響也の顔が、明らかに困惑した。


眠たげな目を見開き、薄く上品な唇が震える。


開いた喉の奥から、驚嘆の声が洩れた。









「お前は!!!」










見慣れた顔だった。


いつも、響也の親友の傍にいる男だった。


響也が今まで対峙していた、薔薇班の男が、自分の親友である、城之内カレンの付き人である、【西原】だと、気づいてしまった。


「っ!!」


西原は咄嗟に顔を覆ったが、時すでに遅し。


響也は、西原の顔をしっかりと見てしまっていた。


西原はそれでも、地面を蹴って後退する。


「てめぇ!!」


響也はわけが分からぬまま怒鳴った。


「てめぇ!! カレンの!! 執事の!!!」


西原は観念して頷く。


「左様でございます。私は、カレン様の付き人である、【西原】でございます・・・」


二人は、一時休戦となった。


響也は、Death Scytheの刃を下げる。


そして、深呼吸をしてから落ち着くと、ゆっくりと西原に尋ねた。


「お前・・・、なんでここにいるんだ・・・!!」


「すみません・・・」


西原はただ謝った。


「この戦闘服を見ての通り、私は、薔薇班の人間でございます・・・」


「それは、もう理解した!」


響也が聞きたいのは、そこでは無い。


「なんでお前が、薔薇班にいるんだ!!」


「・・・・・・」


西原は皺が入った下唇を噛み締める。よっぽど力が強かったのか、血が滲んだ。


「申し訳ありません・・・」


「謝ることしかできないのか?」


響也は謝罪なんてものは求めていない。


ただ、困惑しているのだ。


どうして、桜班の城之内カレンに使えている執事であった男が、薔薇班に手を貸しているのか。


いや、まさか、もとより薔薇班の一員だった?


「お前・・・、まさか、桜班のスパイをしていたんじゃないだろうな?」


響也の勘ぐりを、西原ははっきりと否定した。


「違います」


そして、深深と頭を垂れた。


「申し訳ありません。響也様・・・、私は・・・、私の、カレン様に対する忠誠は揺るぎないものでございます。私は、これから先も、ずっとカレン様をお護りする所存でございます」


「だったら、なんで!!」


「こればかりは、言うことが出来ません・・・」


西原はふっと息を吐くと、再び、直刀を構え直した。


「失礼ですが、響也様・・・、あなたには、ハンターフェスが終わるまで眠っていただきます・・・」


「・・・っ!!」


響也は嫌々で、Death Scytheを構える。


脚の筋繊維に鉛でも注射されたかのように、身体が重くなった。


(三段論法なんだよ・・・、全部!!)


A=B


B=C


つまり、A=Cなのだ。


響也とカレンは仲がいい。


カレンと西原は、主従関係にある。


だから、響也は、西原のことが好きだった。


家族のように愛しているカレンと、同じくらいに、慕っていたのだ。


「お前・・・!! 一体、何があったんだよ・・・」


「申し訳ありません」


謝ることしかしない。


「事態は、複雑なのです。あなたが思っているよりも、ずっと・・・!!」


「分からない!!」


響也は感情的に叫んだ。


「私には分からない!! お前が、何をしようとしているのか!! どうして、薔薇班にいるのか!! どうしてUMAハンターであったことを、私とカレンに隠していたのか!! どうして、私を襲うのか!! 分からない!!」


「嘘はいつかはバレるものです・・・」


西原は静かに、ねっとりとした声で言った。


「そして、私が、十年間つき続けてきた嘘が・・・、このハンターフェスで、明かされてしまった・・・!!!」


「・・・嘘だと?」


響也は確認するように聞いた。


「それは、カレンと関係しているのか?」


「その通り・・・」


西原は、はっきりと答える。


「嘘が、化けの皮が、剥がれたのです。ですが、私は、それを認められない。認めてはならない。湖面のような、窓から覗く街並みのような、そんな平穏な日々を求めているのです・・・」


「・・・!!」


西原の目がぎらりと光った。


「終わりにしましょう・・・」










第79話に続く

第79話に続く

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