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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
255/530

愛が故の沈黙 その②

愛が故に


それを憎み

2


背後に誰かが立ったことに気がついた響也は、長い黒髪をかき分けながら振り返った。


椿班の赤スーツにも負けず劣らずの、漆黒のタキシード。


表情が読むことが出来ない、能面のような白い仮面。


骨ばった手が握るのは、ジェントルマンのステッキ。


「・・・・・・」


響也は薔薇班の男から視線を外し、彼の足元に倒れている、八坂を見た。


八坂は白目を剥き、口から泡を出して微動だにしない。


「・・・!!」


響也の唇がピクっと動いた。


(あいつ、八坂を倒したのか?)


架陰奪還作戦で、八坂とチームを組んだ響也だからこそわかっている。


八坂は、三席と言えど弱くはない。


名銃【NIGHT・BREAKER】を構え、息を殺して敵を討つ。


遠距離射撃を得意とした狙撃手ではあるものの、反射神経だって悪くないのだ。


悪魔の堕慧児の一人である、【鬼丸】と対峙した時も、的確に戦場の照明を撃ち抜いて、自分の有利な暗闇の展開に持ち込んだ。そして、勇敢にも、鬼丸に立ち向かった。


普段は、存外に扱う響也だったが、これでも、椿班の八坂の実力は認めている方だった。









その、八坂が、薔薇班の男に負けたのだ。









(こいつ、どうやって八坂を倒した?)


気絶した八坂には、特に外傷がある訳では無い。


無傷のまま、意識を刈り取られている。


「・・・、お前・・・」


「失礼します・・・、響也様・・・」


薔薇班の男は、まるで地を這うような声で言った。


「ここで、眠っていただきます・・・」


男は、左手に握ったステッキの柄を、右手で握る。


スラッと、音がして、ステッキの中に仕込まれていた白銀の刃が姿を現した。


響也は思わず半歩引いていた。


「仕込み刀?」


「左様でございます・・・ 」


男は仮面の奥でそう頷いた。


手練。


その言葉を体現したかのような佇まい。


男は、ステッキのU字の柄から伸びる白銀の直刀を、流麗な動きで振り回した。


静かに、空気が張り詰める。










「【バトラーの仕込み杖】・・・!!」










響也は舌打ちをした。


戦いは好まない。


そもそも、我々はUMAハンターなのだ。UMAを倒すためのハンターなのだ。UMAを倒すための職業なのだ。


それが、ハンター同士の優劣を決めるために、人間同士で戦い合うなんて、馬鹿げている。


「私はね、戦いたくないんだ・・・」


「私も、戦いたくありません・・・」


「じゃあどうして・・・!!」


「あなたにも、いずれ分かることになります・・・」


薔薇班の男は、剣の切っ先を響也に向けた。


「いずれ、抗うことが出来ない【運命】に、抗いたくなることが、あなたにも、来るのです・・・」


「言っていることが分からないな・・・」


響也は、肩に掛けていたDeath Scytheの三日月形の刃を、地面と平行に構えた。


「まあいい。さっさと終わらせてやるよ・・・」


「はい、よろしくお願いします・・・」


風が吹き付けた。


辺りの木の葉が散り、視界の中でチラチラと舞った。


ザリッと、響也が地面を踏み込む。


一瞬で男との間を詰めた。


「はあっ!!」


男の意識を刈り取るため、素早くDeath Scytheを振り下ろした。


ガツンッ!!と、響也の手の中に痺れるような衝撃が走った。


「っ!!」


響也は勢いそのままに弾き返される。


「なんだ!?」


空中で身を捩り、何とか着地。


顔をあげる。


そこには、透明な緑色の壁が現れていた。


「結界!?」


あの硬質な壁が、響也の斬撃を弾いたのだ。


男は静かに「そうです」と言った。










「これは、【結界】です」


「・・・・・・!!」


「何が何だか・・・?、という感じですね。あなたはもしかして、能力者と会ったことがないのですか?」


「あるに決まってるだろ? アクアさんも、架陰だって能力者だ!!」


「そうです。その【能力】なのです」


男が、左手でパチンと手を鳴らすと、結界が消え失せた。


「これが私の能力、【結界】。空間中の至る所に、自在に、どんな攻撃も防いでしまう結界を張ることができるのです・・・」


「くっそ・・・!!」


響也は再びDeath Scytheを構えた。


性懲りも無く、向かっていく。


「はあっ!!」


「無駄です!!」


男が指を鳴らす。


その瞬間、目の前に、緑色の結界が現れた。


ゴンッ!!


と、響也は顔面から結界に突っ込んでいた。


「くっ!!」


額が割れて、血が眉間の間を伝った。


血が眼球に流れ込み、視界が赤く染まる。


「終わりです!!」


男は、身動きが取れなくなった響也へと襲いかかった。















その③に続く

その③に続く

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