【第75話】野性的 その①
野性的ってことはな
つまりだな
この地中に根を張るってことだよ
1
三島梨花が刀を振った瞬間、齋藤は確信した。
(この人・・・、機動力には、欠けるな・・・)
齋藤が放った投げナイフを弾いた時の動き。振りにキレが無く、弾いた時の金属音も鈍かった。
(つまり、この人は、中距離型のUMAハンターだ・・・!!)
名刀・葉桜。
地面に突き立てることにより、地中に埋まった植物の姿を変異させ、動く根と化す。それは、梨花の意思で自在に動き、敵を貫き、絡めとる。
「まずはこの根をどうにかします!! お嬢様!! 架陰様!! 御協力を!!」
「分かりました!!」
「わかったわ!!」
架陰と城之内花蓮が二人同時に切り込む。
「架陰様!! 共同作業ですね!!」
「はい!!」
迫り来る数多の植物の根。
先に前線に出たのは城之内花蓮だった。
「名刀・絹道!! 第一航路!!」
ヌルヌルと身を捩り、這うようなステップを踏んで根っこを躱していく。
まるで舞うように、握っていた青龍刀の刃とリボンを振った。
「鴎!!!」
根すら、斬られたことに気が付かない。
城之内花蓮が「鴎」と宣言した瞬間、生き物のように動き回っていた根が、バラバラになって地面に落ちていく。
「さあ、架陰様!!」
「はい!! 一掃はおまかせを!!」
架陰は魔影刀を両手で握りしめ、城之内花蓮がやりきれなかった残りの根を絶やしに掛かる。
「【魔影刀】!!!」
ドンッッ!!!
架陰が横に一閃した瞬間、黒い刃から放たれた衝撃波が、残りの根を吹き飛ばした。
「くっ!!」
自分の周りを取り囲む根が消えてしまった三島梨花は、刀を地面から抜くと、後退した。
そこを、齋藤が狙う。
(刀を地面に突き立てないと、【樹木操作】の能力は発動しない!!)
両手に八本のナイフを構えると、素早く投擲した。
「【バトラーのテーブルセット】!!!」
ヒャンヒャンと空気を切り、八本のナイフが三島梨花に接近した。
「アンタら、アタイのこと舐めてるだろ!!」
三島梨花は、刀を握っていない方の左腕を横に振った。
齋藤が目を見開く。
「何っ!!」
生身の腕が、八本のナイフを弾いた。
当然傷がつき、血が吹き出す。
「アタイは【野性的】って言っただろ!! この程度のちっこいナイフ投げられたくらいで、ひるむと思ってんのか!!」
「架陰様!!」
「はい!!」
直ぐに架陰が追撃した。
だが、先程の攻撃で、架陰は魔影を発動し直す時間が無かった。
何も纏わせていない、【名刀・赫夜】で切り込む。
「はあっ!!」
「甘いんだよ!!!」
ギンッッ!!!!
架陰の名刀・赫夜と、三島梨花の名刀・葉桜が衝突した瞬間、鈍い金属音が響く。
力負けしたのは、架陰の方だった。
「くっ!!」
「馬鹿だね!!アンタの刀とアタイの刀、重量が大きいのはどっちかな!!」
架陰は宙で体勢を整えて着地。
その隙に、三島梨花は再び地面に刀を突き立てた。
「樹木操作!! 再展開!!!」
刀から放たれた特殊電波が、地中の根に司令を与える。
ボコボコと地面が盛り上がり、再び無数の根が首を擡げた。
「いきな!! アタイの下僕たち!!!」
齋藤は歯ぎしりをした。
「 振り出しか!!」
「まだです!!」
架陰は諦めない。
畳み掛ける。
「魔影!! 【参式】!!!」
「させるか!!」
架陰の能力を警戒した三島梨花は、直ぐ様対処に掛かる。
架陰が踏み込んだ地面から、ボコッ!! と、根が飛び出す。
「くっ!!」
架陰は体勢を崩した。
(まるで、あの時の吸血樹のように!!)
無理な体勢から、刀を振った。
「【悪魔大翼】!!!」
刃から黒い斬撃が放たれる。
辺りの木々や根を吹き飛ばしながら飛んでいった。
しかし、三島梨花には命中しない。
彼女の横を通り過ぎていった。
「気が逸ったね!!」
「いや!! これでいい!! これがいい!!」
その時、三島梨花はある異変に気がついた。
架陰が放った斬撃が、地面を抉りとり、地中に埋まった根を木っ端微塵に砕いていたということに。
(こいつ、まさか・・・、わざと斬撃を外したのか?)
「葉桜!!」
能力を発動させるが、根の部分が魔影にやられたおかげで、動きが鈍る。
「くそ!!」
「花蓮さん!!」
「はい!!」
花蓮が直ぐに斬りこんだ。
「名刀・絹道!! 第一陸路!!」
大剣の形をした刀を乱雑に振る梨花の攻撃をぬるりと躱し、白銀の刃を振った。
「蜥蜴!!!」
トンッ!!
と、梨花の首筋に衝撃が走った。
「がっ!!」
峰打ち。
三島梨花は白目を剥いて、そのまま倒れ込んだ。
その②に続く
その②に続く




