表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
245/530

名刀・葉桜 その②

獣とて


野に咲く花に足止める





2


「【野性的】って言葉があるだろ?」


突然、百合班・三席の三島梨花はそんなことを言い出した。


「この言葉は普通、蔑む言葉で使われるんだ。アタイたち花魁の世界ではね・・・。まあ、花魁とは名前ばかり、やっていることはただの風俗で酒作るだけの仕事だけどさ・・・」


ざっと右足を引いて、姿勢を低くする。


「アタイたちは、【清楚】でなければならない。女は、【美しく】なければならない。だけどさ、そんな言葉よりも、私にはこの【野性的】って言葉が最高の褒め言葉なんだよ・・・」


「褒め言葉?」


架陰の脳裏に、過去のことが過ぎった。


初めて、架陰が自分の精神の中に住み着く悪魔とジョセフに出会った時のこと。


架陰は彼の第一印象について、こんなことを言っていた。









「まるで、悪魔みたいな人ですね」









と。


そして、それを聞いた悪魔とジョゼフは、嬉しそうに笑ってこう言った。









「それ、最高の褒め言葉だよ」









と。


(同じなのか?)


架陰はじとっと頬から流れた汗を拭った。


(ありのままを、好む人・・・か)


三島梨花は続けた。


「まあ、そういうことさ。私は、【野性的】なんだ。敵がいれば、まるで血に飢えた獣のように襲いかからずにはいられない。私が荒野を駆ける狼なら、あんた達は、寂しくて寄り集まる【子うさぎ】ってわけさ・・・」


子うさぎと言われ、齋藤がムッとするのが分かった。


「そして、【野性的】な私には、見えている。野生の勘ってやつさ。あんたらが、獣に見るも無惨に食い殺される姿がさ・・・」


「ほう・・・」


齋藤が低く言った。


「ならば、そんなことをちまちまと言っていないで、さっさと試して見ましょうよ・・・」


「ソレには賛成だ。だが、そうできないわけがある」


その時、架陰はある異変に気がついた。


三島梨花が握っている、出刃包丁のような巨大な刀。


その赤い刀身が、光っているのだ。


(刀身が、赤く・・・!?)


「時は満ちた!!」


三人は、三島梨花が喋ることにより、時間を稼いでいた事に気がつく。


もう、時すでに遅し。


三島梨花は、刀を地面に突き立てた。


「さあ、暴れな・・・」


刀が、カッ!!と光った。









「名刀【葉桜はざくら】!!!!!」









その瞬間、地面から隆起する。


固くなった土を押上げ、無数の植物の根がまるで生き物のように首をもたげる。


「これはっ!?」


「動く、根っこ!?」


「これが、名刀・葉桜の能力【樹木操作】・・・。半径二十メートルの中にある植物を、まるで生き物ように操ることができる!!」


三島梨花はその場に立ったまま、自分の刀の能力で動き出した蔦や根に司令を与えた。


「さあ、お前たち!! ここにいるうさぎを殲滅しな!!」









三人は散り散りになった。


無数の植物の根は、三股に別れて三人を追う。


「くそっ!!」


架陰は名刀・赫夜を振って、襲いかかってきた根を切り裂く。


しかし、斬った傍から次の根が襲いかかってきた。


「だったら!!!」


架陰は能力を発動させた。


「魔影!! 弐式!!!」


黒い魔影が、赫夜にまとわりつき、漆黒の大剣と化す。


「魔影刀!!!!!」


魔影刀を横に一閃する。


斬撃が、四方八方から押し寄せた根を一刀両断にした。


しかし、断面からまた新しい根が生える。


「再生能力もあるのか!!」


キリがない。


射程距離から離れることも優先的だが、それだとあの女を倒せない。


「だったら!!」


架陰は魔影を足に移動させた。


「魔影脚!!!」


足の裏と地面を反発させて、一気に跳躍。


蔦と根を操っている本体を先に倒す算段を立てた。


「馬鹿か!!」


三島梨花はギラッとした目で笑った。


「そんな動き、簡単に読めるんだよ!!」


その瞬間、滑空する架陰の視線の下から、木の根が飛び出した。


(しまった!!)


架陰は慌てて身を捩る。


その無防備な脇腹を、根が掠めた。


「くっ!!」


そのまま地面に墜落。


顔を上げると、三島梨花が見下ろしていた。


「何見てんだよ!!」


顎を蹴りあげられる。


「がはっ!!」


視界に火花が散った。


架陰は直ぐに地面を蹴り、三島梨花から距離を取った。


根を躱す齋藤の横に着地。


「ダメです!! 近づいたら蜂の巣です!!」


「でしょうね・・・」


齋藤は冷静に頷いた。


そして、副班長らしく、指示を出す。


「架陰様、あなたは、お嬢様の援護をお願いします」


「え、あ、はい・・・」


「私は、あの女を仕留めます・・・」


「え、でも・・・」


近づけば、先程の架陰のように、蔦にやられてしまう。


架陰の心配を察したのか、齋藤は優しげに言った。


「大丈夫ですよ。私の【武器】は、近接では無いので・・・」











その③に続く

その③に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ