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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
244/530

【第74話】名刀・葉桜 その①

未完であることが美しい


まだ寒い春の日


風に揺れる葉桜

1


「これは、蔦?」


架陰の足首に、三センチほどの太さの、青々しい蔦が絡みついている。


「くっ!!」


架陰は反射的に刀を抜いて、足に絡まるそれを細切れに切り刻んだ。


そして、蔦が生えている場所から離れる。


花蓮も、齋藤も、異変を感じ取って下がった。


「架陰様、また吸血樹でしょうか?」


「わ、分からない!」


架陰は身体中に冷や汗をかきながら地面を見つめる。


(なんだ? 今のは・・・!?)


蔦。


植物の蔦。


吸血樹の触手とは少し違うような気がする。


架陰の足首に巻きついたということは、自ら動くことができるということ。


(吸血樹なのか? それとも・・・、他のUMA・・・!?)









その瞬間、森の奥の木陰から、「ヒャンッ!!」と、ムチのようなものが空を切る音がした。


目を向けた時、三人目掛けて、蔦が飛んでくる。


「っ!!」


架陰は生き物のように襲いかかってきた蔦を斬った。


切り落とされた蔦は地面に落ちて、コトリと動かなくなる。









女の声がした。


「へえ、なかなかやるね・・・」


「っ!!」


ざっと、木陰から女が出てきた。


花魁のような豪華絢爛な赤い着物を見にまとい、纏めた髪には、黄金の簪か刺している。


まるで猫のような鋭い瞳が、架陰達を見据えた。


「やあ、こんにちは・・・」


「誰だ!?」


架陰の疑問に、齋藤が代わりに答えた。


「あれは、【百合班】の人間ですね・・・」


「百合班?」


「はい。さっき説明していた【優勝候補】の班ですよ・・・」


それを聞いた百合班の女は、白い歯を見せてニヤリと笑った。


「へえ、アタイたちの情報って、そんなふうに伝わっているのかい?」


「そうです。つまり、尊敬しているということですよ」


「嬉しいねぇ・・・」


百合班の女の右手には、まるで出刃包丁のような、太い刃の刀が握られている。表面は鮮血のような赤色に塗装され、うっすらと、緑の葉の紋様が刻まれている。


その刀を、地面に突き立てた。


「さあ、さっきの種明かしだ・・・」


刃が、赤く光る。


架陰と花蓮、そして、齋藤は身構えた。


「何をするつもりだ?」


「見れば分かる・・・!!」


地面がボコボコと隆起する。


そして、三本の蔦が飛び出した。


「っ!!」


まるで生き物のようにうねり、三人に襲いかかる。


花蓮が半歩前に出た。


「下がって!!」


そして、腰の名刀・絹道を抜くと、神速の斬撃を放つ。









「第一航路・鴎!!!」








絹道の刃と、その柄に付けられた堅牢なリボンが、迫り来る三本の蔦をバラバラに切り刻んだ。


それを見た百合班の女は「へえ、なかなか・・・」と笑った。


「やっぱり、班長はすごいね・・・」


地面に突き立てていた刀を抜き、肩に掛けた。


「じゃ、挨拶はここまでだ。アタイの名前は、百合班・三席・【三島梨花みしまりんか】・・・。よろしくな・・・」


「三席?」


架陰は刀を握る力を強めた。


「百合班の三席が、何の用だ!?」


「わかってんだろ?」


三島梨花は高圧的に言った。


「人間は【10】ポイントだってことを・・・」


「っ!!」


奥歯を噛み締める。


やはり、この女も、人間を倒したことにより、加算されるポイントを目当てに襲いかかってきたようだ。


齋藤が冷たい口調で言った。


「ですが、三島様・・・、この状況をお分かりですか?」


「わかってるさ。私は、一人。そして、どういう訳か、薔薇班と桜班がつるんでいる。戦力は一対三・・・」


「ですよね。ここはお引きください。分かりますよね? あなたには勝ち目がありません・・・」


「はっ!」


三島梨花は鼻で笑った。


「勝ち目が無いなら、最初から襲いかかっていないよ。分かるだろ? 私は【勝算】があるから、奇襲したんだ・・・」


そういうと、三島梨花は、肩に掛けていた大剣を三人に向けた。


「さあ、アタイと戦いなよ。三人同時にね・・・、まとめて相手にしてやるから・・・」


「どうします?」


架陰は齋藤に聞いていた。


齋藤も、困ったように顎に手をやる。


「ここは戦いましょう。恐らく、この三人なら、百合班の三席ごとき、簡単に倒せるでしょうね。ポイントは取っておいた方がいいですから・・・」


「分かりました・・・」


架陰は頷くと、刀を構えた。


齋藤も、タキシードのポケットから黒い筒を取り出す。


城之内花蓮も、名刀・絹道を握った。










突如襲いかかってきた、百合班・三席【三島梨花】・・・。


対するは、薔薇班・班長【城之内花蓮】と、薔薇班・副班長【齋藤】。桜班下っ端【市原架陰】連合。











「さあ、アタイの血肉になりな!!」










戦いが始まった。









その②に続く

その②に続く

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