表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
243/530

名刀・絹道 その②

鴎の導くままに


嵐の中へ


蜥蜴の尾を追いて


断崖の向こうへ



2


地上に姿を現した吸血樹に向かって、城之内花蓮は一人で切り込んでいった。


架陰は肝を冷やして叫ぶ。


「ダメです!! 花蓮さん!!!」


架陰は知っていた。吸血樹の恐ろしさを。


吸血樹が【A】ランクとして恐れられるのには、わけがある。


まず、圧倒的手数。


吸血樹は身体の至る所から、木の枝の形をした鋭い触手を生やすことができる。いくら切っても、簡単に再生する。


その再生スピードは、あの響也でさえも反応に遅れたのだ。


「花蓮さん!!」


「大丈夫です!!」


花蓮が、刀を中段に構えて、上半身を捻った。


その瞬間、吸血樹が放った触手が、四方八方から城之内花蓮を襲った。


齋藤の絶望する声が響いた。


「お嬢様!!」


だが、今に命を奪われんとするお嬢様は、余裕の笑みを浮かべていた。


握った刀が、白銀に輝く。


「名刀・・・【絹道シルクロード】」


城之内花蓮は、迫ってくる全ての触手の動きをその目で予測すると、ぬるりぬるりと動いて、躱していった。


その動き、まるでバレリーナ。


常人では関節が外れてしまうくらいに身体を仰け反らせ、曲げ、ぐにゃりぐにゃりと、まるで、針の穴に糸を通すが如く、触手を躱す。


「なんだ、あの動き・・・」


架陰は、花蓮の華麗な動きに目を奪われていた。


寸分の無駄がない、繊細な動き。


まるで、そこに【何も】無かったかのように、触手が空を切っていった。


「名刀・絹道・第一航路・・・」


吸血樹の腹の下に潜り込んだ瞬間、目にも止まらぬ速さで刀を振った。










「【かもめ】!!!!」









花蓮の白い刃が、吸血樹本体から生えた触手全てを、バラバラに切り刻んだ。


血を噴出させながら、ボトボトと、切り刻まれた触手の破片が落ちる。


「・・・!!!」


「素晴らしい!! お嬢様!!!」


齋藤が感動の涙を禁じ得ず手を叩いた。


架陰はハッとして、触手を失った吸血樹に切り込んだ。


「【魔影刀】!!!」


魔影を纏わせた刀を一閃して、吸血樹本体を一刀両断にする。


吸血樹「カチチチチチチ!!」と、硬化した顎を噛み鳴らしてから息絶えた。




架陰と、花蓮、齋藤の連携による勝利であった。


「架陰様!!」


城之内花蓮が架陰に抱きつく。


「素晴らしいです!! 私が、絹道で吸血樹の攻撃手段を封じた瞬間、直ぐに私の意図を察してトドメを刺してくれるなんて・・・!!!」


架陰はやんわりと、花蓮を引き剥がす。


「花蓮さんこそ、なんですか、あの動き・・・!!」


「花蓮様は天才なので・・・」


花蓮のあの異常な動きについては、齋藤が説明をした。


「女子特有の関節の柔らかさを活かし、柔軟な戦い方を覚えたのです。そして、私と西原さんによって教えこんだ剣術。恐らく、今のお嬢様は、班長の名に恥じぬほどの実力をお持ちです・・・」


「関節の、柔らかさ?」


確かに、あの動きは凄いを通り越して異常だった。


股関節が、180度を超えて広がり、ゴスロリスカートの中は丸見えだったわけだが。


「にしても、あの動きの後の、高速の斬撃ですよ。どうやってあれだけの触手を切り刻んだんですか?」


吸血樹の触手をバラバラに切り刻んだ時の手の動き。


早くて、架陰の目には捉えきれなかった。


「それはですね」


花蓮が説明をする。


「この、【名刀・絹道】です」


「ああ、これ・・・」


架陰は、花蓮が差し出してきた刀をしげしげと眺めた。


白銀の刃。包帯が巻かれたような模様の柄。そこから、白いリボンが垂れている。


「この布・・・」


架陰は恐る恐るリボンの布に触れた。


ツルツルとしている。


一見はただの布に見えるが、触り心地は、初めてで、例えるものが見つからなかった。


「この布は、SANA特性の【特殊繊維】で織られています。とにかく強靭に編まれているので、鉄と変わらない切れ味を発揮するんです・・・」


「これが、鉄?」


とてもそうは思えなかった。


だが、花蓮は当たり前のように頷いた。


「はい。先程あの触手を切り刻んだだのは、この刃とリボンを使いました」


すると、花蓮は架陰から少し離れて、刀を振り回した。


すると、その柄のリボンが、まるで生き物のようにヌルヌルと動き始め、空中に白い弧を描いた。


「変幻自在に蠢くリボンで敵を狩る。これが、【名刀・絹道・第一航路・鴎】です!!」


その証拠。


とでも言いたげに、花蓮は傍にあった手頃な木の幹にリボンを巻き付けた。


ぐっと引いた瞬間、リボンが締まり、木の幹をまるで豆腐のように切り落としてしまった。


「凄い・・・」


架陰は単に、そう言うことしか出来なかった。


(近接だけじゃなくて、中距離の相手にも対応できるのか・・・)


「これで分かって頂けましたか? 私の実力が!! 班長である強さが!」


「はい、花蓮さん凄いです!!」


架陰に尊敬の眼差しを向けられた花蓮は、真っ赤になった。


「ととと、とにかく! これで、私と結婚してくれますよね!!」


「まあ、それはまたの話で・・・」


「え?」












その③に続く

その③に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ