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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
240/530

結婚してください その③

違和感は音もなく


渓谷を滑り抜け


五臓六腑の


手の鳴る方へ

3


行動を共にすることになった、架陰、城之内花蓮と、その付き人である齋藤は、鬱蒼とした森の中を歩いていた。


「ふふ・・・、私は幸せ者です・・・」


先程から城之内花蓮は、顔を赤らめながら、架陰にくっついて歩く。


架陰はぎこちない笑みを浮かべていた。


想い人に着付き添う。という、お嬢様の大胆な様子を見た齋藤は、人知れず涙を流した。


(そうです! そのままでいいのです! お嬢様!! そのまま架陰様を押し倒してくださいませ! そして、時期跡取りを・・・)


齋藤の狂気の視線を感じた架陰は、人知れず顔をひきつらせた。


(やっぱり、この人たち怖い・・・)


だが、刀は返して貰った。


もし架陰の寝首をかこうとするものなら、こんなことはしない。


本当に、協力をしようしているということだ。


「そういえば、僕の身体の傷って・・・」


「ああ、もちろん、私が治しました!!」


城之内花蓮は、白と黒のフリルが施されたゴスロリのスカートの中に手を入れた。


そして、太ももに縛り付けていた小さなスプレー式の小瓶を取り出す。


「これは、薔薇班の回復薬【薔薇香水】!! これを振りかけると、傷はたちどころに癒えてしまいます!!」


「へえ、軟膏系の回復薬ですか・・・」


「架陰様が所属している桜班の回復薬はどんなものですか?」


「僕はこれですよ」


架陰は、着物の懐から、回復薬【桜餅】を取り出した。


「ああ、摂取系ですね。傷の治りは遅いですが、栄養も補える優れものです!」


「そうなんですよ」


各班には、このように名前にちなんだ回復薬が支給される。


桜班は【桜餅】


椿班は【椿油】


そして、薔薇班は【薔薇香水】


ちなみに、先程倒した藤班の東堂樹が所持していた回復薬は、【丸薬】だった。正式名称は【藤丸】というらしい。


(そういえば、僕、今までに出会った班の回復薬、全部被験済みなんだよなあ・・・)


城之内花蓮は、【薔薇香水】の瓶を、再び太もものホルダーに戻した。


「架陰様が怪我をされたら、この回復薬で治して差し上げますから!」


「いや、気にしないでくださいよ。僕は桜餅があるんだから・・・」


「まあ、なんてお優しい人・・・」


城之内花蓮は両手を頬にやって、ぽっと赤くなった。


架陰は身体中がむず痒くなった。


(やりにくいなあ・・・)


こういう、直球な好意を向けられたことは無い。


上司である響也も、クロナも、どこかツンケンとしている部分があるし、城之内カレンでさえも、何を考えているのか分からない。


強いて言うなら、いつも、「架陰! 架陰!」という鉄平だろう。


まあ、彼は男なのだが。


(それに、城之内花蓮って名前・・・)


架陰は、まだ彼女の正体を疑っていた。


(城之内花蓮と、城之内カレン、どう違うんだ?)


歩きながら、城之内花蓮の横顔を覗き込んだ。


髪の毛はコロネのようにカールして、顔は色白。唇に紅を差していた。


そして、「これぞお嬢様」って感じのゴスロリ服。


(顔以外は、全くカレンさんと似てないな・・・)


「どうされたんですか? 私の顔に、何か付いていますか?」


「え、いや・・・」


架陰は慌てて視線を逸らした。


「なんでもないです・・・」


「そうですか。気になることがあれば、なんでも聞いてくださいね!」


ニコッとはにかむ城之内花蓮。


心做しか、架陰は、「こっちの城之内花蓮の方が、人間っぽい」と思った。


(城之内花蓮と城之内カレン。絶対に何か、関係があるよな・・・)


だが、それを指摘するのは、はばかれた。


(なんか、嫌な予感もするし・・・)









しばらく歩いていると、架陰は、とある気配を感じて立ち止まった。


見れば、横を歩いていた花蓮。その後ろを歩いていた齋藤も立ち止まっている。


「あの・・・」


「架陰様も気づきましたか・・・、さすが、お嬢様の殿方・・・」


「いや、その話は一旦置いといて・・・」


架陰は首筋にむず痒いものを感じながら、辺りを見渡した。


「視線・・・、感じませんか?」


「そうですね・・・」


齋藤は恭しく頷くと、タキシードの内ポケットから、先程架陰を襲撃した時に握っていた【黒い筒】を取り出す。


「この気配は・・・、人間、ではない。ですね・・・」


「そうですね・・・」


架陰は腰の刀の柄に手をかけた。


視線を四方八方に向けるが、何かが動くような素振りは無い。


(気配はあるのに・・・、姿が見えない?)








次の瞬間、架陰の立つ地面が、もぞりと動いた。


その微弱な振動を感じ取った時、架陰の記憶が蘇る。


「花蓮さん!!」


「きゃあっ!!」


架陰は城之内花蓮の脇腹に手を回すと、地面を蹴って上空へと逃げた。


地面から、褐色の木の枝が飛び出す。










「こいつは、【吸血樹】!!!!」










第73話に続く

第73話に続く

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