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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
239/530

結婚してください その②

絶望を浴びて育った子は


希望には憧れず


幸福を妬む

2


「このハンターフェスが終わるまで、この、薔薇班班長の【城之内花蓮】を、貴方様に同行させて貰えないでしょうか?」


城之内花蓮は、架陰の手を取り、縋るような声でそう言った。


当然、架陰は、「えっ!?」と、驚嘆の声を洩らす。


「それ、本当に言っているんですか?」


「私はいつも本気です。架陰様に嘘はつきません!!」


「あ、はい・・・」


架陰は城之内花蓮の目を見た。


偽りのない、真っ直ぐな瞳。


(信用していいのか?)


そう思って、横を向くと、城之内花蓮の付き人であろう齋藤が、獣のような視線を架陰に送っていた。


目が、「お嬢様のお願いを断るな」と訴えている。


架陰は、「はい」と頷いた。


「じゃ、じゃあ、一緒に行動しますか?」


「本当ですか!! やった!!」


城之内花蓮は、喜びのあまり架陰に抱きつく。


そのまま押し倒してしまった。


ムニッと、女子特有の柔らかい感触が、架陰の胸板に押し付けられた。


(よく分からないけど、悪くないかも・・・)


齋藤が、すっと動き、架陰から城之内花蓮を引き剥がした。


「決まりですね。お嬢様。では、架陰様と一緒に行動しましょう」


「そうね! 」


「架陰様、どうぞこちらに」


一度架陰の手を取ると、木陰に連れて行った。


そこには、椅子やテーブルなど、上流階級の者たちが御用達していそうなティーセットが用意されていた。


「これは?」


「先程、お嬢様がお休みになられていたので・・・」


齋藤は、ティーセットは無視して、椅子に綺麗に畳んで置かれていた【タキシード】を手に取った。


「架陰様、どうぞ、こちらの【戦闘服】を身につけてください」


「これって・・・」


ピラッと広げると、それは、齋藤が着ているものと同じタキシードだった。


「それは、薔薇班の戦闘服です」


「いや、それはわかりますけど」


なぜ自分がこれを着なければならないのだ?


齋藤の執事らしい目がギラッと光った。


「架陰様。お嬢様と行動するということは、身も心も【薔薇班】の人間になりきるということですよ?」


「え、そうなんですか?」


嘘だ。


齋藤は嘘をついていた。


(こうやって、適当な話をつけて薔薇班の戦闘服を着させて、引っ込みがつかないようにした方が、【市原架陰薔薇班編入計画】も進むものだ・・・)


当然、架陰は戦闘服を齋藤に突き返した。


「いや、着れませんよ。僕は【桜班】の者なので・・・」


「いや、そう言わず」


齋藤も引き下がらない。


城之内花蓮が、頬を膨らませて齋藤を一喝した。


「齋藤!! 架陰様に迷惑をかけちゃダメでしょ!!」


「はい! すみません!!」


齋藤は直ぐに戦闘服を引っ込め、タキシードの内側にしまい込んだ。


一瞬で手のひらを返して架陰に謝罪する。


「架陰様、失礼しました・・・」


「いえ、こちらこそ・・・」



齋藤は、タキシードの内ポケットからトランシーバーを取り出すと、どこかへ連絡を取ろうとした。


しかし、マイクからは砂嵐の音が流れる。


「・・・、ちっ、繋がりませんね・・・」


「どこに連絡をしようと?」


「うちの班の、【三席】と【四席】です。それぞれ任務を遂行したら、こちらに戻ってくる。という手筈になっていましたが・・・、かなり時間がかかっていますし・・・、トランシーバーも繋がらなくなりましたね・・・」


「そういえば、僕のトランシーバーも使えないんですよ!」


架陰はそういうと、着物の袖から桜班専用のトランシーバーを取り出した。


試しに、クロナに連絡を入れてみるが、やはり、マイクからは砂嵐の音。


齋藤の目が興味の色に染まった。


「架陰様のトランシーバーも使えない? それは、いつから?」


「いや、このハンターフェスが始まってから直ぐです」


「直ぐか・・・」


齋藤は、シュッとした顎に手をやった。


(我々のトランシーバーは、つい先程までは使用可能だった・・・、しかし、架陰様のは最初から? ただの電波干渉だと思っていたが・・・、まさか、誰かに操られている?)


「まあ、いいでしょう・・・」


齋藤はトランシーバーをポケットにしまった。


「とにかく、我々【薔薇班】は、桜班の架陰様に全面的に協力をします。一緒に、UMAを狩って行きましょう・・・」


「あ、はい」


齋藤から差し出された手を、架陰は握り返した。


(まだ信用出来ないな・・・)


(絶対に薔薇班に引き込んで、架陰様を花蓮様と結婚させてみせる・・・)


二人は、そんなことを考えていた。


「早く行くわよ!」


謎のやり取りをしている二人に痺れを切らした城之内花蓮が急かした。


「あ、架陰さま!」


架陰に、背中に隠していた【名刀・赫夜】を返す。


「この刀、お返ししておきますね。齋藤が盗っていましたので・・・」


「あ、ありがとう・・・」


架陰は花蓮から刀を受け取る。


一応、鞘から抜いて、異常がないか確かめた。


(特に変なことはされてないな・・・)


架陰はちらっと齋藤の方を見た。


齋藤は舌打ちをする。


(ちっ、結婚を断ろうものなら、無理にでも婚姻を結ばせるつもりだったのだが・・・)


















その③に続く



その③に続く

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