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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
238/530

【第72話】結婚してください その①

結婚してください


愛し合うのはそれからです

1


「私は、あなたのことが好きなのです!!」


薔薇班・班長の【城之内花蓮】の、渾身の告白が聞こえた。


木陰に潜んでいた、薔薇班・副班長の【齋藤】は、腕を組み、涙を流した。


(お嬢様・・・、よくぞ言ってくれました・・・)










薔薇班は、UMAハンターの中でも特殊な部類に入る。


それは、【班長】という存在を、【副班長】、【三席】、【四席】で護る。という点にある。


城之内家の時期当主である【城之内花蓮】を班長の座に務めさせ、あとの、副班長と三席、四席の座には、城之内家に仕える【執事】達があてがわれる。


副班長【齋藤】


三席【桐谷】


四席【西原】


と言った具合に。










(成長されましたね・・・、お嬢様・・・)


齋藤は、涙が滲んだ目頭を押さえた。


幼い時から、【城之内家時期当主】として抜擢された。それまで薔薇班の班長を務めていた【西原】は、四席に移り、その座を城之内花蓮に譲った。


それから、執事達三人で、あのお嬢様を、立派なUMAハンターへと育てあげてきたのだ。


(そして、殿方も・・・)


齋藤の口が、若干ニヤけた。


(お嬢様のあの美貌を持ってすれば、桜班の小童など、イチコロでございます・・・、さあ、お嬢様・・・、もっと詰め寄ってくださいませ・・・)










「お願いします! どうか、私の気持ちを受け止めてください!!」


「え、ええ!?」


花蓮はグイグイと架陰に詰め寄る。


架陰は、困惑。目をぐるぐると回して後ずさった。


「・・・、え、? あ? はい?」


「私ではダメですか?」


「いや、どういうこと?」


「好きだと言うことです!!」


「いや、それは、わかったんですけど・・・」












いつまでのまごつく架陰を見て、齋藤は舌打ちをした。


(架陰様・・・、一体何を迷っているのですか! 我々のお嬢様に恥をかかせてはいけませんよ!!)










城之内花蓮の顔がゆでダコのように真っ赤に染まった。


「もう、鈍いお方ですね!!」


そのまま、架陰の肩をむんずと掴む。


「っ!?」


架陰は、抵抗することが出来ず、そのまま地面に背中を押さえつけられた。


(この娘、強い!!)


架陰の上に馬乗りになった城之内花蓮は、ずいっと顔を近づけた。


「私と結婚してください。と言っているのですよ!!」


「はっ?」











それを木陰から見ていた齋藤は、恋愛系の話に弱い女子のように、顔を両手で覆い、しゃがみこんでしまった。


(よくぞ言ってくれました!!! お嬢様!! さあ、あのように大胆に迫られては、架陰様も断ることはできないはずです!! これで、城之内家は安泰だ!!)


つうっと、齋藤の鼻から血が落ちた。


「おっと、興奮しすぎましたね・・・」


齋藤はタキシードの胸ポケットからハンカチを取り出し、血を拭った。


そして、ニヤつきながら架陰と城之内花蓮の方を見る。


(ふふふ・・・、これを断ることはできない。架陰様が『YES』と言った暁には、すぐにでも【薔薇班】への編入手続きを済ませましょう・・・)











「ごめんなさい・・・」











「あ?」


架陰の返答を聞いた瞬間、齋藤は思わず間抜けな声を出していた。


そして、首がねじ切れそうな勢いで架陰の方を振り返る。


(あの餓鬼、今、なんて言った?)











架陰は、はっきりと「ごめんなさい」と言った。


「あなたの気持ちはよく分かりました。ですけど・・・、急に迫られても、僕の気持ちが追いつきません・・・。とうか、この話は、また今度に・・・」


「あ、あ・・・」


城之内花蓮の顔が、みるみる青くなっていく。


力が抜けて、がくりと肩を落とした。


「ご、ごめんなさい。私は、架陰様の気持ちを、考えずに・・・」


「い、いえ。こちらこそ・・・」











その瞬間、木陰から齋藤が飛び出した。


「架陰様!!!」


「えっ!?」


齋藤は素早い動きで、城之内花蓮を架陰の上から攫った。


そして、一度木陰に座らせてから、再び架陰に襲いかかる。


「お嬢様に、よくも恥をかかせてくれたな!!」


「ええっ!?」


齋藤は、タキシードの内ポケットから、黒い筒を取り出した。


「貴方様の愚行!! 万死に値する!!!」


「ちょっ、ちょっ!!」


架陰は後ずさった。


着物の腰帯に手を伸ばしたが、そこに差していたはずの刀が無い。


(赫夜が、無い!?)


「この、薔薇班、齋藤が粛清してくれる!!」


何も出来ない架陰に目かけて、齋藤が腕を振り上げた。


その時、城之内花蓮が叫んだ。


「待って!!! 齋藤!!!」


「っ!!」


ピタッ!!


と、齋藤の動きが止まる。


城之内花蓮は、座り込んだまま齋藤に呼びかけた。


「齋藤!! 架陰様に手を出したら、この私が許しませんよ!!」


「ですが・・・、お嬢様、この男は、貴方様の告白を・・・」


「私が悪いのよ!! 架陰様の気持ちを推し量らずに、気持ちに任せたまま愛を伝えたのですから!」


城之内花蓮は、班長らしい強い口調で言うと、手をついて立ち上がり、架陰の方へと歩み寄った。


「失礼しました。架陰様」


「あ、はい・・・」


「直ぐにあなたと婚姻を結ぼうとは思いません・・・」


「あ、はい・・・」


「ですが、一つお願いがあります・・・」


城之内花蓮は、縋るような目で、架陰の手をとった。


「このハンターフェスが終わるまで、この、薔薇班班長の【城之内花蓮】を、貴方様に同行させて貰えないでしょうか?」











その②に続く




その②に続く

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