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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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お嬢様 Part2 その②

お嬢様は我儘

2


兵蔵が架陰へと、全力の鉄拳を放つ。


架陰も、魔影を纏わせた、漆黒の腕を兵蔵に向かって放つ。


能力【加速】によって強化された兵蔵の一撃。


能力【魔影】によって強化された架陰の一撃。







その二つの一撃が衝突した瞬間、辺りに強烈な衝撃波が飛散した。


爆風が巻き起こり、木々を揺らし、地面の砂が巻き上がり、枝に小鳥か飛び立つ。


「うぉぉおおおおぉぉおおおおおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


拳と拳を合わせている最中、兵蔵は更に地面を一蹴りした。


ズンッ!!と、兵蔵が架陰を押す力が増す。


「くっ!!」


架陰の足が数センチ下がった。


「終わりじゃあっ!!」


「くっ、おおおおおおおおおおおお!!!」


架陰は歯を食いばって、その攻撃に耐える。


(もっと、もっとだ!! もっともっともっともっともっともっと!!!)


まだ足りない。


まだ、この兵蔵を倒す一撃が出せていない。


もっと出力を上げろ。


兵蔵がいくら加速して、エネルギーをあげてこようと、それすら超えている力を。


(パワーを!!!)


架陰は、ダンッ!!と地面を踏み込んだ。


右腕に、全神経を集中させ、魔影の出力を限界まで引き上げる。


「はあっ!!!」


押し返す。


兵蔵の顔に、困惑の色が浮かんだ。


押し返そうと、更に地面を蹴る。


そのタイミングに合わせて、架陰もまた、魔影の衝撃波を放った。


二人の力が、拮抗する。


「おおおおおおおおおおおお!!!」


「おおおおおおおおおおおお!!!!」


その瞬間、兵蔵の足元の地面が、ガラッと、崩れた。


それを皮切りに、兵蔵の体勢がぐらりと崩れる。


架陰は、それを見逃さなかった。


右足を踏み込み、最後の力を、魔影へと注ぎ込む。


「はあっ!!!!」


架陰の腕から放たれた衝撃波が、兵蔵の岩のように強靭な腹を穿った。


兵蔵の口から「がはっ!!」と、呻き声が漏れる。


「でえりゃあぁぁぁぁあ!!!!!」


架陰は腕を振り切った。


兵蔵の身体が吹き飛ばされる。


兵蔵は白目を剥き、口からダラっと唾液を流しながら、青い空へと打ち上がった。


架陰は確信した。


「勝った!!!」


打ち上がった兵蔵の体は、架陰から少し離れた場所に墜落した。


ドシンッ!!と、砂煙が舞い上がる。


兵蔵は、もう立ち上がって、襲いかかってくることはなかった。









この勝負、架陰の勝利であった。










「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」


架陰は魔影を解除した。


限界を超えた一撃。


それは、架陰の気力も体力も根こそぎ奪い去った。


架陰は膝をついた。


今度こそ、もう動けない。


「はあ、はあ、はあ・・・」


クラクラと目眩がする。


もう一度、兵蔵の方を見た。


やはり、兵蔵は動かない。


「くそ、長引き、過ぎた・・・」


架陰は腰の刀を抜くと、杖代わりにして立ち上がった。


満身創痍の状態で、フラフラと歩いていく。


「早く、山田さんのところに、戻らないと・・・」


同行していた山田から、かなり離れてしまった。大体、五百メートルと言ったところだろう。


魔影の使いすぎで、亀の足以下になってしまった架陰の移動速度では、離れてしまった距離を縮めることは不可能に近かった。


「はあ、はあ、はあ・・・」


架陰の目の下に、真っ黒な隈が浮かんだ。


喉の乾きと、筋肉の弛緩。頭痛。


「はあ、はあ、はあ・・・」


次の瞬間、架陰の足に、地面に剥き出した木の根っこが引っかかった。


「うわ!」


踏ん張ることも出来ず、そのまま転倒。


激しく、顔面を地面に激突させた。


「く、そ・・・」


架陰は、泥だらけの顔を上げる。


傍らに落ちた赫夜の柄を握った。


何とか立ち上がろうとしたが、もう、身体が動こうとしない。


全身が痺れ、感覚を打ち消していった。


「もう、動けない・・・」


力尽きた架陰は、がくりと視線を落とした。


(どうなる・・・、このまま動かないと・・・)


もし、この状態で、別のUMAに襲われたらどうなるのだろう。


もし、この状態で、別のハンターに襲われたら・・・。


それとも、「動かなくなった」時点で、本部は【市原架陰戦闘不能】という判断を下すのだろうか。


「どちらにせよ・・・、もう、戦えない・・・」


そのまま、意識が、冷たい地面の土の底に吸い込まれていく。


目の前が薄暗くなっていって、架陰の意識が、途切れようとする。










その時だった。










突如、架陰の傍に誰かが立った。


気配から察するに、二人。


兵蔵では無い。また別の、UMAハンター達。


(誰だ・・・?)


顔を上げる気力すら無い。


UMAハンターの一人が、ボソリと言った。


「お嬢様、どうしますか?」


「そうねぇ、連れて帰りましょう」


(え?)











その③に続く


その③に続く

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