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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第66話】死神の宴

蛞蝓は蛙の腹の中に


蛙は蛇の腹の中に


蛇は雉の腹の中に


雉は人間の腹の中に


人間は・・・

1


「大丈夫っスか!! クロナ姐さん!!」


藤班の四席に襲われ、ピンチに陥っていたクロナを救ったのは、椿班四席の矢島真子だった。


赤スーツを身にまとった彼女は、小柄な身体を揺らしながら近づいてきた。


「危なかったッスね!! でも、私の狙撃でバッチリ倒しておいたっスから!!」


そう言って、左手に握った、【名弓・天照】を翳す真子。


クロナは、呼吸を整えながら地面に手を着いて立ち上がると、横目で、藤班四席の【黄鬼】の様子を確認した。


不意に、真子の炎の矢の雨を喰らったおかげで、身体中を焦がし、白目を剥いていたわ








藤班四席【黄鬼】・・・脱落。









「案外呆気なかったわね・・・」


どちらにせよ、助かった。


刀を鞘に収めていると、真子が小さく飛び跳ねた。


「あっ!! ポイント入っているッス!!」


嬉々とした声を上げて、クロナにトランシーバーの液晶を見せつける。


そこには、【10】という数字が表示されていた。


(UMAハンターを倒すと【10】ポイントっていう話は本当のようね・・・)


あそこに倒れている、藤班四席を倒したのは、真子。つまり、真子にポイントが入るのだ。


真子はトランシーバーを胸元のポケットにしまうと、思い出したように声をあげた。


「そうだ、クロナ姐さん。うちの班長を見てないっスか?」


「班長って・・・、堂島鉄平のこと?」


「はいっス!! 鉄平さんのことッス!!」


班長の名前を覚えられていた真子は少し嬉しそうだった。


クロナは首を横に振った。


「さあ、さっきまで一人だったから・・・」


「そうっスか・・・、少し残念っス!!」


「だいたい、桜班の私が、椿班の動向なんて気にするわけないじゃない・・・」


無駄に期待されていたクロナは、深いため息をついた。


「架陰でさえ見つかっていないんだから・・・」


「あ、架陰くんも見つかっていないんですか?」


「ええ。というか、響也さんとも合流出来ていないわ・・・」


ちなみに、市原架陰はこの頃、椿班副班長の山田と行動を共にしている。


それを聞いた真子は、クリっとした目を輝かせた。


グイッとクロナに詰め寄る。


「だったら、架陰くんが見つかるまで、同行させてくれないっスか?」


「同行?」


つまり、クロナと真子が一緒に戦うということだった。


「別にいいけど・・・」


真子とは、【市原架陰奪還作戦】で行動を共にした仲だ。抵抗は無い。


「真子ちゃん、班長を探さなくていいの?」


「いや、鉄平さんって、多分、私たちよりも真っ先に架陰くんを探しに行くでしょ?」


「あ、確かに・・・ 」


バンイップを巡る、桜班と椿班の抗争があった日から、鉄平は市原架陰に熱をあげているのだった。


「だから、架陰くんを見つけたら、多分コバンザメみたいに鉄平さんがくっついて来ると思ったんスよ!!」


「ああ、そう・・・」


市原架陰にとって、鉄平はコバンザメのような存在だった。


クロナと真子が行動を共にするということが決まると、二人は直ぐに走り始めた。


「早くこの森を抜けて、架陰を探しに行くわよ!!」


「了解っス!!」


その瞬間、頭上から声が降ってきた。


「待て待て待てーえええい!!」


駆け抜ける二人に並行するように、薔薇班のタキシード型の戦闘服を身にまとった桐谷が並ぶ。


「おい、桜班!! オレとの勝負がまだ終わってねぇぞ!!」


「あ、薔薇班・・・」


そういえば忘れていた。


走りながら、桐谷はレイピアの鋒をクロナに向けた。


「さあ、オレと戦え!!」


「って言っているけど、藤班は?」


「もちろん倒した!!」


おお、凄い。


真子はじとっとした視線を桐谷に向けた。


「あんた、誰っスか?」


「オレか? オレは薔薇班の三席【桐谷啓太】だよ!」


「私は、椿班の四席【矢島真子】っスよ!! よろしくっス!!」


「おう、よろしく!!」


背が低い者同士のシンパシーなのか、二人は直ぐに意気投合して、握手を交わした。


こいつ、やっぱり馬鹿なのかもしれない。


クロナは白々しくなって前を向いた。


桐谷も、もう攻撃してくる様子はなく、レイピアを腰に収める。


「それより、お前たちはどこに行くんだ!?」


「市原架陰くんのところっス!!」


真子はあっさりと答えた。


それを聞いた桐谷の顔がニヤリと歪んだ。


「そうかそうか!! 彼氏のところに行くのか!」


「え、彼氏?」


真子は驚いた表情で、クロナの横顔を見た。


そういえば、自分と架陰は付き合っている。という嘘をついていたのを思い出す。


「まあ、そんなものよ・・・」


「だったら、オレも行くぜ!! でもって、市原架陰を拉致して、お嬢様の所に持っていく!!」


「何言ってんスか?」


三人は、俊敏な動きで、森の中を駆け回る。


クロナは市原架陰に会いたくて。


真子は、市原架陰に引っ付いているであろう鉄平に会いたくて。


桐谷は市原架陰を拉致したくて。


市原架陰という共通の目的を持った三人は、無言のうちに結託した。











桜班・椿班・薔薇班連合。











完成。












その②に続く



その②に続く

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