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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
210/530

薔薇班襲撃 その③

貫くは意思


3


桜班・三席の雨宮クロナは、一人で走っていた。


「んもー、響也さんと、カレンさん、あと架陰もどこに行っちゃったのよ・・・」


薄暗い森の中を、時々聞こえるUMAの鳴き声に身構えながら駆け抜ける。


近くに沼があるようで、辺りにはひんやりと湿気た空気が漂っていた。


この重苦しい空気は嫌いだ。肺にまとわりつくようで、動きだって鈍くなる。


「はやく、みんなと合流しないと・・・」


その時だ。


クロナの着物の懐に入れたトランシーバーが震えた。


確認する。


送られてきたメッセージを見た瞬間、クロナは声を裏返して驚いた。


「あ、【城之内カレン、脱落】!?」


それは、仲間が戦闘不能になったことを告げるメッセージだった。


「う、嘘でしょ・・・」


クロナは目を見開いて、液晶に表示されたメッセージを読んだ。何度も読んだ。上からや下からも読んでみた。


だが、カレンが敗北したということは、明白な事実であった。


「か、カレンさんが・・・、負けた?」


足元から崩れ落ちるような不安がクロナを襲う。










その時だ。


「っ!!」


クロナは突然、森の奥から殺気が迫るのを感じ取り、その場から飛び退いていた。









ドンッ!!!










見えない衝撃波が、クロナが立っていた地面を、円柱状に削り取る。


「何っ!!」


ガサガサっと音がして、草むらから、タキシードを着た少年が飛び出した。


「へへっ! 覚悟!!」


そう叫ぶや否や、右手に握った、中世ヨーロッパ風のデザインである、レイピアを空中のクロナに向かって突く。










ギンッ!!!










「っ!!」


クロナは、咄嗟に、腰の【名刀・黒鴉】を抜いてその一撃を防いだ。


針のような鋭い刃が、クロナの黒い刀身を穿つ。


火花が弾け、二人は同時に地面に着地した。


「ちょっと!! いきなりなによ!!」


「はは!! 女だ!! お嬢様以外の女だ!! いやあ、久しぶりに見たなあ。お嬢様以外の女!!」


タキシードを身にまとった少年は、目を輝かせてクロナの足元から胸元までを見上げる。


「なに、こいつ・・・」


クロナは目をじとっとさせて半歩下がった。


少年はニカッと笑うと、右手のレイピアを流麗な動きで振り回した。


「初にお目にかかります。オレの名前は、【薔薇班・三席・桐谷啓太(きりやけいた)】! 齋藤さんの命令により、あんたの命を頂戴しに来た!!」


「私の、命を?」


その言葉を聞いた途端、クロナの筋肉が硬直した。


「どういうことよ・・・、これはハンターフェスよ。人間を攻撃していいはずが・・・」


「はあ、ゼロから説明しなきゃいけないもんですかね」


薔薇班三席の桐谷は、大袈裟にため息をついた。


「これだから、初参戦の班は・・・」


「な、なによ・・・」


「時間が無い。いや、時間稼ぎをしなきゃならんから、時間がかかるのは結構だ。だが、時間を稼がないといけないにせよ、オレは簡潔的に話をする。このハンターフェスで、人間を襲うことは公式認定されている・・・」


「はあ?」


クロナは眉間にシワを寄せた。それでも、握った刀の鋒を桐谷に向ける。


桐谷は歯を見せて笑った。


「もう一度言うぜ。オレは今から、あんたを始末する。」


「あんた、気が狂ってるの?」


「気は狂ってないさ。ただ、毎日毎日、お嬢様の面倒と、齋藤さんにこき使われて、気が滅入っているだけさ・・・」


桐谷のレイピアが、カチャリと金属音を発した。


「久しぶりに、お嬢様以外の女を見た。オレは少し興奮している。もちろん、性的な意味じゃない。まあ、性的な意味じゃないと言えば嘘になるが、そんな邪な気持ちは抱いていない。男子高校の学生が、試合で他校の女子マネージャーに話しかけるようなものさ・・・」


「・・・・・・」


「あれ、なんて言おうと思ってたんだっけ? いや、何をしようと思っていたんだっけ?」


桐谷は頭に指を当ててとぼけた。


「くそ、忘れちまったよ・・・」


この男、そこまで頭がいい方では無いらしい。


「まあ、いいや」


そういうと、桐谷はレイピアの鋒を上げて、クロナの胸元を指した。


「さあ、オレと戦って貰うぜ。お前が勝ったら、オレの10点をやろう」


「・・・、あんたが勝ったら?」


「もちろん、市原架陰を夫に貰う!!」


「あ?」


クロナは眉間のシワを深めて、首を傾げた。


「イカれてるの?」


「イカれてねぇよ。そのままの意味だ。オレが勝てば、市原架陰を、お嬢様の夫として頂く。って、あれ? これ、言ってよかったんだっけ?」


桐谷はまた頭に手をやって考え込んでしまった。


ちなみに、【薔薇班の市原架陰強奪計画】は内密に、という司令が出ている。


「まあいいや!!」


桐谷は腰を低くして、レイピアを構えた。


「どちらにせよ、オレとあんたは戦う。そして、オレが勝つ!! その結果だけは変わらないんだぜ!!」











第64話に続く

第64話に続く

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