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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
209/530

薔薇班襲撃 その②

我々の生きていく意味など


薔薇の水やりで充分だ

2


UMAハンターは、任務の時にスマートフォンを持つことは基本的にない。


激しい戦闘や移動時に重く、邪魔になってしまうからだ。


そのため、連絡手段は、支給されたトランシーバーで行う。


そのトランシーバーとは名ばかりで、音声の受信だけでなく、簡易連絡の受信など、機能は一昔前の携帯と大差は無い。






「・・・・・・」


薔薇班・副班長の齋藤は、持ち込んだスマートフォンの画面をじっと眺めていた。


地図上で、赤い点がゆっくりとこちらに近づいてくる。


「桐谷・・・」


「なんですか?」


薔薇班の三席である、桐谷は不機嫌な目を齋藤に向けた。


齋藤はスマホの画面を桐谷に見せる。


「敵が近づいてくる・・・」


「敵?」


桐谷は目を細めて画面を見た。


「赤い点・・・、これ、桜班の三席じゃないですか・・・、お嬢様が欲しがっている市原架陰の上司ですよ?」


薔薇班のメンバーは、このハンターフェスが始まる前に、桜班のメンバーに、バレないように発信機を取り付けていたのだ。


そして、赤い点は、桜班の三席である、【雨宮クロナ】を指している。


「あの女、この近くに飛ばされたようですね・・・」


「ああ・・・」


齋藤は眉間にシワを寄せて頷いた。


「少し、まずいな・・・」


薔薇班の目的は、ハンターフェスの優勝と言うよりも、【市原架陰を手に入れる】と言うことだった。


(お嬢様が、市原架陰殿に一目惚れしてしまった・・・。どうにかして、彼を薔薇班に引き入れ・・・、ゆくゆくは城之内家の時期当主として・・・)


市原架陰を手に入れ、お嬢様と婚姻をあげるには、その他の桜班のメンバーは邪魔な存在だった。


「桐谷、上司命令だ」


「なんですか?」


「この発信機の赤い点、雨宮クロナを始末しろ」


「あ?」


桐谷は肩を竦めた。


「冗談じゃないですよ。確かに、ハンターフェスの裏ルールで、人間は【10点】になってますけど・・・、さすがに、これからお嬢様の夫となる男の上司ですよ?」


「分かるだろう? 我々が市原架陰を奪おうとすれば、確実に桜班の他のメンバーは阻止に入る・・・。不安要素は摘むべきだ・・・」


「そうですけど・・・」


「いいからいけ。私はお嬢様の護衛をしなければならない・・・」


「はいはい、行けばいいんでしょ?」


桐谷は、幸せが逃げていくような深いため息をつくと、重い腰をあげた。


パタパタと砂埃を払い、地面に突き立てていた、ハードレイピアを握る。


「じゃあ、さっさと始末してきますよ。オレのこの、【名剣・甲突剣(ハードレイピア)】で・・・」


「自惚れるな。お前はまだ三席だ。そして、桜班の雨宮クロナは三席だ・・・。舐めてかかれば返り討ちに遭うぞ?」


「そんなこと言うなら、齋藤さんが行ってくださいよ・・・」


「私はお嬢様の護衛だ。いつどんな時でも、戦力はお嬢様に裂く」


齋藤がそう言った瞬間、背後に、その【お嬢様】が立った。


「もう!! 齋藤!!」


艶のある茶髪が上品に後ろでまとめられ、お嬢様らしいゴスロリの黒いドレス。白い頬を紅潮させ、二人の執事を睨みつける。


「何回も言っているでしょう? 私はもう十八歳なの! 自分の身くらい自分で護れるわ! あなたたちは、架陰様を探して来なさい!」


彼女の名前は、【城之内華蓮】。


薔薇班の班長である。


「ですがお嬢様・・・、さすがに、貴方様を一人にするわけにはいきません・・・。それに、西原殿からもきつく言われていますので・・・」


そう言ったあと、齋藤はスマホの画面を横目で見た。


マップ上の、黄色い点が消えている。


(そういえば、西原殿は、「この黄色の点だけは絶対に追うな」と言っていたな・・・。消去法で言えば、副班長を指し示すことになるが・・・)


「ですので、桐谷が市原架陰殿を捕らえて来るまでは、私から離れてはいけません・・・」


「もう、わかったわよ・・・」


華蓮お嬢様は、頬を真っ赤にして、そっぽを向いた。


さしずめ、市原架陰に会えることを想像してあるのだろう。


ゴスロリのドレスを着た我が身を抱きしめ、くねくねと身体を揺らす。


「ああ、早く会いたい。私の架陰様・・・」


「そうですね・・・」


齋藤は横目で桐谷に合図をした。


今のうちに、雨宮クロナを倒してこい。と命令したのだ。


桐谷はこくりと頷くと、地面を蹴って行ってしまった。


「お嬢様。市原架陰殿の写真を見ますか?」


「もちろんよ!」


お嬢様は齋藤からスマホを受け取り、アルバムを開いて、そこに保存された架陰の写真を眺め始めた。


欠伸をする架陰。


戦う架陰。


戦闘服に着替えようとする架陰。


歩いている架陰。


寝起きの架陰。


すべて、齋藤の暗躍によって撮られたものだ。


(結構大変だったんだよな・・・)


お嬢様の要望により、架陰以外の者の写真は入れることが出来なかった。


そのため、架陰が一人になる時を狙って撮影をしたのだ。


「ああ、早く会いたい。早く会いたい・・・。そして、この方を、私の殿方に・・・」


顔を真っ赤にしてそう言うお嬢様を見て、齋藤は真顔で頷いた。


(このひと、結構狂ってるよな・・・)











その③に続く




その③に続く

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