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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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名刀・ソメイヨシノ その②

薄汚れた机の上の


一輪の百合

2


「これで、私の武器の能力が発動できる!!」


そう言った瞬間、香久山は左手に持ち替えていた薙刀を、地面に突き立てた。


「能力・・・、発動!!!」


「・・・!?」


香久山の言葉を合図に、香久山の【名刀・ソメイヨシノ】の刃が淡く輝き始めた。


「名刀・ソメイヨシノ・・・、桜花吹雪!!」


刃から放たれる薄紅の光が地面を伝達する。


そして、刃を中心とする半径二十メートルの地面が、光に包まれた。


「・・・、これは!?」


カレンは困惑の色を浮かべて、光り輝く地面に視線を落とした。


香久山はニヤリと笑った。


「いい? この能力を使ったら最後、あなたは、私に手も足も出ないわよ・・・」


その瞬間、光り輝く地面から、雪のように光り輝く粒子が湧き上がった。


「っ!!」


光はまるで蛍のように、カレンの周囲を取り囲む。


「これは・・・」


カレンは長棒を振って、香久山の腕に巻きついた鎖を解くと、地面を蹴った。


(あの武器の射程距離から離れないと・・・)


だが、香久山は薙刀を振って、空中を飛び交う光を操作した。


何千、何万もの光がカレンを取り囲み、まるで吹雪にあったときのように視界を封じた。









ホワイトアウト。









「・・・!?」


カレンの目の前が真っ白になった。


「これは!?」


見えない。


何も見えない。


白い光が、カレンの周囲を飛び交い、何も見えない。


視界が、封じられた。


「これは、なんなの?」


カレンは目を凝らして、飛び交う光の正体を見定めようとした。


光るそれは、花びらだった。


しかも、紡錘形の先がふたつに割れた、【桜の花びら】・・・。


「この能力は、あなた達、桜班にピッタリの能力かもしれないわね・・・」


カレンの視界を封じた香久山は、余裕を持って、カレンに近づいていった。


カレンは、香久山が近づいていることに気づいていない。


「これが私の【名刀・ソメイヨシノ】の能力、【桜花吹雪】。地面に刀を突き立てると、特殊な電波が土を桜の花びらに変換する・・・」


血が滴る右手で薙刀を握り、バトンのように回転させる。


「桜の花びらは操縦可能。さらにいえば、薙刀の所有者は、桜花吹雪の影響を受けないために、こうやって、ホワイトアウトしている中でも、あなたの姿がよく見える・・・」


「くっ!!」


どこに香久山がいるのか分からないカレンは、無差別に長棒を振るった。


ジャラジャラと、鎖が蠢き、カレンの周りを取り囲んだ。


「鎖は、結界にだってなるのよ!!」


「そうね・・・」


香久山は顔色を変えない。


鎖が、怒り狂った龍のように、カレンの周囲を暴れ回った。


地面が削れ、桜花吹雪が吹き飛ばされる。


だが、吹き飛ばした傍から、新たな桜花吹雪がカレンに押し寄せる。


詰みだった。


「はあっ!! はあっ!! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!」


めちゃくちゃに叫んで、めちゃくちゃに鎖を振る。


「私は城之内家次期当主の城之内カレン!!」


「もう、いい」


その瞬間、香久山がカレンの横を通り過ぎた。


「焦りで、鎖の動きが単調になっているわ。おかげで、鎖の間を抜けるのは、簡単だったわね・・・」


名刀・ソメイヨシノを振る。


カレンの背中に赤い線が走り、血が吹き出した。


「がはっ!!」


カレンの視界で白い火花が弾けた。


まるで故障したアナログテレビのように、意識が途切れる。


カレンは赤黒い血を流しながら、地面にうつ伏せに倒れ込んだ。


そして、動かなくなった。


「はい、おしまい・・・」


香久山は、血が付いた薙刀を振ってそれを払った。


その瞬間、能力が解除され、辺りを舞っていた花びらが消え失せ、砂埃が残る。


「班長!!」


回復薬で傷を回復させた狂華が駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか!!」


「ええ、大丈夫。あなたこそ、足の傷は・・・?」


「回復薬を使ったんで・・・」


「そう、良かったわ」


香久山は先程の慈悲なき戦いとは対象的に、優しく微笑むと、狂華の頭をポンポンと撫でた。


「よく頑張ったわね。今度一緒に、餡蜜を食べに行きましょう」


「あ、はい・・・」


上司に褒められて、嫌な気はしない。狂華は頬を赤らめた。


「って、班長。右腕が・・・」


「ああ、これね・・・」


香久山は、鎖が巻き付かれた時の傷を見せた。


肉が削ぎ落とされかけて、血がどくどくと流れ落ちている。


「回復薬は温存するわ。これから、もっと大変な戦いがあるでしょうし・・・」


「そ、そうですか・・・」


「それに、誰かがこっちに近づいてきているし・・・」











その③に続く


その③に続く

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