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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第62話】名刀・ソメイヨシノ その①

終着してはならない


進み続けることが理想なのだ


完成してはならない


進化を続けることが終着なのだ

1


森の中に響くのは、愛しき部下の悲鳴。


その声を聞いた瞬間、百合班班長の香久山桜は、迷うことなく地面を蹴った。


下駄が土埃を上げ、カツンッと渇いた音を立てる。


右手に薙刀を握りしめ、声のした方へと一心不乱に駆け抜けた。


木々の間を抜け、襲いかかってくるUMAの数々をすれ違いざまに切り捨てる。


血を浴びようと、しがみつかれようと、全ては愛しき部下のために。


「狂華!!!」


香久山は、槍投げの選手のように、腕をしならせ、思い切り薙刀を放った。


薙刀の薄紅色の刃が、空気を裂きながら、狂華を襲っている桜班の副班長に迫る。


「っ!!」


副班長のカレンは、身の危険を感じ取り、咄嗟に鎖を操縦していた長棒で弾いた。


仕留め損ねた。


だが、これでいい。


これがいい。


これで、狂華の足首に巻きついた鎖を解くことが出来た。


「よくも、私の部下をいたぶってくれたわね・・・」


香久山は凛とした声でそういうと、一直線にカレンへと迫った。


「あら、あなたも死にに来たの?」


カレンの狂気にまみれた顔がこちらを向く。


背筋がすっと寒くなるのを堪え、地面に落ちていた薙刀を拾い上げた。










「【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】!!」










カレンが長棒を振るった瞬間、その先に付いた、約二十メートル程の鎖が、ジャラジャラと生き物のように動き出す。


(これは・・・!!)


不規則な機動。


狂華のアキレス腱を断裂させるほどの切れ味。


(かなりまずいわね・・・)


だが、こんな所でうろたえる香久山では無い。


自分は、百合班の班長。


一番強く、一番尊敬されるべき者なのだ。


つまり、こんな所で、表情を強ばらせるわけには行かない。


常に冷静に。


常に強く。


常に、気品よく。


「喰らえ!!【名刀・ソメイヨシノ】!!!」


鎖の間を抜けた香久山は、握りしめた薙刀を振り下ろした。









ブワッ!!









カレンから突風が放たれる。


「っ!!」


香久山の身体が、一瞬で宙へと吹き飛ばされていた。


(あの鎖の武器だけじゃないのか!!)


カレンは左手に、扇子のような武器を持っていた。それを振った瞬間、女の身体を吹き飛ばすほどの突風を起こしたのだ。


「桜さん!!!」


狂華の悲痛な叫び声。


ダメだ。うろたえるな。


自分は、百合班の班長だ。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!」


カレンは興奮したように声を荒らげると、空中の香久山に向かって、連続で長棒を振るった。


鎖が、四方八方から押し寄せる。


「はあっ!!」


香久山は身を捩ると、自分の身を斬ろうと襲いかかってくる鎖を弾いていく。


だが、弾けば弾くほど、鎖の軌道が変わり、余計に軌道の予測が難しくなる。


(この武器、かなり強い!!)


香久山は、川の上に着地した。


パシャンッ!!と水がはね、香久山の身に纏う、花魁のような着物の裾を濡らす。




ジャラジャラと、地を這うようにして鎖が迫る。




「足首を狙っているのか!!」


香久山は足元に、薙刀の柄を突き立てた。


それを支えにして、ふわっと浮かび上がり、地面から足を離す。


柄に、鎖が巻きついた。


「捕まえた!!」


「それはこっちのセリフよ!!」


香久山は地面に足を着くと、ぐっと、鎖が巻きついた薙刀を手前に引いた。



ビンッ!と、鎖が綱引きの綱のように張り詰める。


「武器は封じたわよ!!」


少なくとも、鎖さえ封じてしまえば、香久山にも勝機はあった。


「ふっ!!」


カレンはニヤッと笑う。


地面を蹴って、香久山の方へと接近する。


おかげで、鎖の締め付けが緩まった。


「ちっ!!」


「【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】!!」


再び、長棒を振り回して、鎖を操り始めるカレン。


香久山は薙刀の刃で弾きつつ、カレンの射程距離から離れようと後退した。


だが、この武器を使い慣れているカレンは、敵との間合いを完璧に測っている。


香久山が足を引き、バックステップを踏む度に、自身も踏み込んで、強制的に【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】の射程距離に引き込んでくる。


「くっ!!」


香久山は奥歯を噛み締めた。


その後で、「いけないいけない」と自戒する。


自分は、百合班班長。


苦戦する姿を、後輩に見せてはいけない!!


「だったら!! こうしてやるわ!!」


襲いかかってくる鎖に向かって、自身の右腕を差し出した。


それをカレンは見逃さない。


「ひゃは!!」


鎖を操り、その無防備な右腕に巻き付けた。


「桜さん!!」


「大丈夫!!」


慌てる狂華を、香久山は苦痛に歪んだ顔でなだめた。


大丈夫。まだ肉は削がれていない。


刃が少しくい込んで、出血しているだけだ。


「これで、鎖は封じたわよ」


そう言って、グイッて鎖を引く。


香久山の腕に鎖の刃がくい込み、さらに血が吹き出した。



「これでいい。これで、私の武器の能力を、発動させることができる!!」










ドスッ!!










香久山は、左手に持ち替えていた薙刀を、地面に突き立てていた。



「行くわよ。私の武器、【名刀・ソメイヨシノ】の能力を・・・!!」








その②に続く

その②に続く

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