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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
202/530

鎖に閉ざされし鬼の逆襲 その③

桜前線進行中


花吹雪接近中


染井吉野乃花盛

3


「ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁあああっっ!!!!」


狂華の右足首に、焼け付くような激痛が走った。


巻きついた鎖が擦れ合い、狂華の足首の肉を削ぎ落としていく。


血が吹き出し、骨に刃がくい込んだ。


背筋にかけて、電流のようなものか駆け抜け、脳髄に到達した途端、まるで火花が弾けるかのように、視界が点滅した。










ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ!!!









鎖が唸りながらカレンの元へと返っていく。


狂華は苦痛に眼球を見開いて、喉の奥から引きつったような悲鳴をあげた。


ドサッと、背中から倒れ込む。


その様を見て、カレンは発情したように頬を紅潮させた。


「ふふふ、まずは足・・・」


まずは。ということは、攻撃は続くということだ。


狂華は「冗談じゃない」と思った。


足首のアキレス腱が切断され、血が噴水のように吹き出している。肉は、ミンチのように散り散りに切り刻まれ、白い骨が顔を覗かせていた。


「くそ、軸足をやられた・・・」


この程度の傷なら、回復薬を利用すれば治る。それか、能力【妲己】を発動させれば、完全に治癒する。


(だけど、まだ回復薬を使う訳には行かない・・・)


特に、後者の能力の発動は阻まれた。


狂華は、自分が悪魔の堕慧児であるということを、百合班のメンバーにはひたむきに隠している。


もちろん、ほかの班にもバレたくはない。


バレたら、即、討伐の対象になる可能性があったからだ。


例え、悪魔の堕慧児であろうと、この百合班の戦闘服を着ている間だけは、一人のUMAハンターでありたい。


それが、半分人間、半分UMAである、人間の方の狂華の感情だった。


「だけど、まずいわね・・・」


片足だけでも、幸い戦うことができる。軸足を左脚に変えればいいだけの話だ。


だが、戦闘能力は著しく落ちているのは確か。


特に、機動力がガタ落ちしていることだろう。


(これじゃあ、あのカレンの武器の攻撃はかわせない・・・)


カレンの【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】の射程距離は半径二十メートルほど。


その中に入れば、四方八方から、刃が付いた鎖が襲いかかってくる。弾くことはまず不可能。弾いたところで、直ぐに起動を曲げて、死角から一矢報いに来るのだ。


(あの攻撃、まるで蛇・・・、いや、もっと恐ろしいものね・・・)


狂華は腹筋を利用した反動で、上体を起こした。


その瞬間、カレンが再び【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】の長棒を振る。









ジャラジャラジャラジャラ!!!









鎖が生き物のように動き出し、狂華に迫った。


「くっそ!!」


「次は左足よお!!!」


狂華は刃下駄の刃を引っ込めて、踏み込みやすくすると、砂利を左脚で蹴って後退した。


だが、利き足ではない脚では上手く力が発揮出来ず、カレンの【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】の射程から逃れることは出来なかった。


ビシッと、鎖が狂華の左足首に巻きついた。


「くそ、終わった!!」


狂華は負けを理解した。


さっきと同じだ。


カレンは長棒を引く。


鎖が足首にくい込み、肉を削ぎ落とす。


(ダメだ!!)


狂華は目を強く閉じ、これからやってくる激痛に耐える準備をした。


その時だ。


「狂華!!!」


森の奥から、女の声が響いた。


次の瞬間、薄紅色の刃の薙刀が一直線に飛んできて、カレンの長棒にぶつかった。










ギンッ!!










「何っ!?」


カレンの力が緩む。


それに呼応して、狂華の左足首に巻きついた鎖が緩んだ。


「しめた!!」


狂華は直ぐに足を引いて、鎖の束縛から逃れる。


木々の影から、狂華の同じ、百合班の戦闘服を身にまとった女が飛び出した。


その姿を見た時、狂華の顔が朝日に照らされたかのように明るくなる。


「は、班長!!!!」


それは、狂華の上司にあたる者だった。


「待たせたわね!! 狂華!!!」


百合班班長、【香久山桜(かぐやまさくら)


突如、部下のピンチに駆けつけた、百合班の班長は、カツカツと下駄を踏み鳴らして、カレンに接近した。


まとめていない、長い長い黒髪が、翼を広げた鳥のようにバサバサとうねる。


地面に落ちた薙刀を、素早い動きで拾い上げた。


「よくも、私の部下をいたぶってくれたわね!」


「あら、あなたも死にに来たの?」


カレンは動揺することなく、逆に、切り刻める相手が増えたからか、余計に興奮したような笑みを浮かべた。


標的を、狂華から、百合班の班長へと切り替える。


「【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】!!!」


長棒を振って、二十メートルはある鎖を操った。


だが、初見だと言うのに、百合班の班長はうろたえない。


薙刀を中段に構え、流麗な動きで振った。









「喰らえ!! 名刀、【ソメイヨシノ】!!!」













第62話に続く

狂華「班長!! 来てくれたんですね!!」


香久山「ええ、あなたのピンチに駆けつけたわ」


狂華「すごく心強いです!! 一緒に戦いましょう!!」


香久山「あなたはここで見ていなさい。私の班長たる威厳を見せつけてあげるわ」


狂華「凄い自信!!」


香久山「よしよし。痛かったわね。もう大丈夫だからね」


狂華「次回、第62話【名刀・ソメイヨシノ】!!」


香久山「さあ、鬼狩の時間よ」

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