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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第61話】鎖に閉ざされし鬼の逆襲 その①

逃げ出した逃げ出した


鬼が逃げ出した


皆の者鍬を持て


逃げ出した逃げ出した


鎖に繋がれし鬼が逃げ出した


皆の者鎌を持て


逃げ出した逃げ出した


闇に閉ざされし鬼が逃げ出した


女子供をペロリと食ろうて


家畜畜生引き裂き回る


逃げ出した逃げ出した


鬼が逃げ出した


止められぬ止められぬ


せめて余興に踊り狂おう

1


「さあて、あなたの化けの皮が剥がれる時よ!!」


「くっ!!」


カレンは翼々風魔扇を振り、突風を発生させた。


狂華は吹き飛ばされ、いや、わざと吹き飛び、カレンから距離をとった。


刃が付いた下駄が砂利の上を踏みしめた瞬間、ギャリッ!!と、不快な音を立てた。


「これでおあいこね」


狂華の肩から、血が滲む。


カレンの脇腹から、血が滲む。


「・・・、私は城之内カレン・・・」


カレンはただひたすらに、その言葉を呪文のように並べ立てた。


翼々風魔扇を構える。


その虚ろに混濁した瞳には、純粋な、清々しいほどの殺意が宿っていた。人間を相手にして、同情も躊躇も挟み込む余地のない、漆黒までの殺意を、抱いていた。


「【風神之槍】・・・」


翼々風魔扇を振る。


発生した竜巻が、槍のように放たれた。


「ふっ!」


狂華は地面を蹴って後退する。


下がりながら、髪の毛に刺さった簪を抜くと、ダーツのような動作で投げた。


「串刺簪!!!」


極細の簪が竜巻の間を切り裂き、カレンの肩に突き刺さった。


「ぐっ!!」


カレンは苦痛に顔を歪めて、ガクッと腕を下ろした。


竜巻の起動が逸れ、後方の木々に命中する。


バキバキッ!と、幹が粉砕された。


「ふふ、もっと楽しみましょう!!」


狂華は余裕の笑みを浮かべると、刃下駄で地面を踏みしめながら、カレンに接近した。


カレンは翼々風魔扇を振るうが、焦りが加担して、風は明後日の方向へと吹き付けた。


「はあっ!!」


狂華が、刃下駄を履いた足で、カレンに蹴りを入れた。


間髪で躱す。


狂華は立て続けに蹴りを放った。









ザンッ!!









放った蹴りの一発が、カレンの頬を掠めた。


カレンの頬に赤い線が走り、血が吹き出す。


「もらった!!」


カレンが怯んだのを見て、勝機を感じた狂華は、下半身を捻った。


勢いそのまま、回し蹴りを食らわせる。









ギンッ!!









しかし、カレンの翼々風魔扇の柄によって受け止められた。


「ちっ!!」


カレンは蹴り飛ばされる直前に、地面を蹴って勢いを後方に流した。


ふわっと飛び上がり、身を捻りながら着地する。


「・・・・・・」


カレンはうつむき加減のまま、狂華を睨んだ。


狂華は余裕の表情のまま、頬に浮かんだ汗を拭う。


「・・・、私は、城之内カレン・・・」


また同じ言葉。


(一体、何が起こっているの・・・?)


狂華も少し分からなくなってきた。


狂華が、城之内家についてカレンに語った瞬間、カレンは豹変した。まるで気にでも触れたように、「私は城之内カレン」と繰り返す。


いや、実際に気に触れているようだ。


ゆらゆらと奇妙な構え。


翼々風魔扇の風の扱いも乱雑。


目は、まるで別人が宿っているかのようだった。


「・・・、私は、城之内カレン・・・」


そう言った瞬間、カレンはガクッと肩を落とした。


ゆっくりと、顔をあげる。


「っ!?」


その表情を見た時、狂華は思わず後ずさった。


そこに立っていたのは、カレンだ。カレンだと言うのに、どこか違う。


にんまりと笑い、目は好奇心旺盛の子供のように輝く。


歯の隙間から、「ふふふ」と、笑い声が洩れた。


「私は、城之内カレン」


「そんなことはわかっているわ・・・」


「私は、城之内カレン」


「・・・、あなた、一体どうしたの?」


「私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン私は城之内カレン・・・」


ヘラヘラと笑い続けるカレンから、漆黒の殺意が放たれた。


この感覚、覚えがある。


(悪魔の堕慧児と、同じ気配・・・!?)


そんな馬鹿な。


だが、この背中を這うような殺意は、悪魔の堕慧児と同じだ。


世界に裏切られ、絶望して、自らを偽った、悲しき生き物の気配。


カレンは、着物の袖からトランシーバーを取り出した。


「支給品を、要求するわ・・・」


そう機械に語りかけると、トランシーバーから、無機質な女性の声が返ってきた。


『どれになさいますか?』


「そうね。武器ね」


『どの武器にされますか?』


「私の武器よ。私の、本当の武器・・・」


『分かりました。空間転移装置でそちらに転送しました』


通話が切れた瞬間、カレンの目の前に、青い光が発生した。


空間が裂け、中から武器が現れた。


「城之内カレンの、武器・・・!?」


城之内カレンの武器は、【翼々風魔扇】のはずだった。


いや、翼々風魔扇は、ローペンの素材を使って作られたもの。つまり、かなり最近になって使用を始めた武器だということ。


ならば、翼々風魔扇を使う前は、どのような武器を使っていたのか・・・。












「出ておいで・・・」


カレンはにんまりと笑って、転送されてきた武器を掴んだ。














「『鎖に閉ざされし鬼の逆襲』」














その②に続く





その②に続く

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