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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
194/530

青鬼VS架陰&山田 その③

覚悟とは口に出す言葉ではない


自らの血肉を差し出して盟約するものだ

3


「刀に、神経性の毒を塗っている。今にもお前は、戦闘不能になるぞ?」


青鬼はニヤリと笑った。


炎で奴らの視界を封じて、変わり身の術で山田を引きつける。


そして、架陰の背後に回り込んで、この、毒がたっぷり塗られた刀を叩き込む。


作戦通りだった。


架陰は背中に傷を覆い、その傷口から、神経毒が体内へと入った。


この神経毒は、UMA用。死にはしないが、直ぐに視界が混濁して、意識は沼に呑み込まれるように消えていく。


詰みだ。


詰みなのだ。


「さあ、桜班の市原架陰は終わった。あとは椿班の副班長、お前だけだ」


青鬼は刀の鋒を山田に向けた。


山田は無表情のままだったが、頬からつうっと汗が伝う。


その様子を見て、また、ニヤリと笑った。


「分かるぞ。分かるぞ。お前は今。動揺している。自分が信じて、共闘を願い出た男か殺られ、動揺している・・・」


勝ちだ。


勝ちなのだ。


今の、一瞬の攻防でわかったことだ。


山田には武器がない。素手で戦ってくる。


対して、青鬼は武器を所持している。この短刀だけでは無い。手裏剣も、クナイも、火薬だって装備しているのだ。


「詰みだ。副班長よ。オレは、お前に勝っている。断言してやる。お前は負けている・・・」


「・・・、そうですか・・・」


山田は静かに頷いた。


「では、私も断言しましょう。貴方は、負けていると・・・」


「なんだと?」


青鬼は鼻で笑った。


主戦力の架陰がやられたというのに、よくもそんな軽口が叩けることだ。






次の瞬間。


ざわり、青鬼の背中に、刺すような殺気が浴びせられた。


「何!?」


青鬼は勘だけで短刀を振るった。










ギンッ!!










刀を握る手の中に、重い衝撃が加わった。


「くっ!! 仕留め損ねた!!」


「お前は!!!」


青鬼に背後から襲撃してきたのは、毒を仕込んだはずの架陰だったのだ。


「貴様っ!! なぜ毒を入れられて動ける!!」


青鬼は動揺に満ちた声をあげた。


あの神経毒は強力だ。先程倒した、木瓜班の人間だって、一撃を食らって、たった十秒で気絶に至っていた。


架陰に毒を入れて、どれだけ経った?


約一分。


一分だ。


それなのに、架陰はあの距離から、気配を消して、青鬼の首の裏にピンポイントで斬撃を当てようとしてきた。


「毒がきいていないのか!!」


「効いてるよ!!!!」


架陰は宙で身を捩ると、名刀赫夜を振った。










ギンッ!!










青鬼の名刀毒華が防ぐ。


「くっそ!!」


架陰は床に足を着くと、低い姿勢から斬り込む。










ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!ギンッ!!











二人は激しい剣戟を繰り広げた。


架陰は目を見開き、充血した眼球で青鬼を睨む。


歯を食いしばり、消えゆく意識に鞭を打って、刀を振った。


「舐めるな!!」


青鬼が下がる。


その瞬間、架陰はグラッとバランスを崩した。


「やはりきいているな!! 気合いで意識をつなぎ止めているだけか!!」


そんな根性論で負けてたまるか。


青鬼は懐から手裏剣を抜き取ると、素早く投擲した。


架陰はそれを刀で弾く。


そして、そのまま、自らの肩に刃を突き立てた。


「ぐっ!!」


赫夜の刃が、架陰の肉を突き破り、血を噴出させる。


架陰の切れかけていた意識が、つなぎ止められた。


「こいつ!! 自分で自分を攻撃して、目を覚ましただと!?」


「覚悟だ!! 僕には覚悟がある!!!」











青鬼は知らなかった。


架陰が、前回の【架陰奪還作戦】で、想像を絶する悪夢を見てきたということを。


架陰は一度死んでいる。


夜行に心臓を握りつぶされて死んでいる。


夜行に腹を刺され、腸をえぐり出された。


鼓膜を潰した。










こんな生半可な神経毒程度では、動じなくなっていたのだ。


「こんなもの!! 効いても効かない!!!」


意識が飛びそうになったからなんだ?


身体を傷つけて、目を覚ませばいい。


多少のダメージは、敵を倒すための代償と思え。


「僕は、お前みたいな!! 姑息なやり方でしか勝てないハンターじゃない!!!」


「くっそ!!」


青鬼はさらに後退した。


だが、架陰は緩急を入れることなく間を詰めてくる。


「だったら!!」


青鬼は懐から、紫色の手裏剣を取り出した。


奥の手だ。


象すらも、卒倒する超強力な神経毒を塗りたくった手裏剣。


これで、やつにトドメをさす。


「火炎!!」


まずは、炎を放って視界を奪う。


そして、完全なる死角から、この手裏剣を投げるのだ。


「勝った!!」


勝ちなのだ。


詰みなのだ。


過程が変わろうと、その結果は変わることは無い。


「死ねぇ!!」












ギンッ!!











煙幕に使った炎の奥で、金属が弾ける音がした。


「え?」


まさか、刀で防いだというのか?


そんな馬鹿な。










その瞬間、炎の奥から、今しがた自分が投げた手裏剣が飛んできた。


ドスッ!!


手裏剣の刃が、青鬼の肩に突き刺さる。


「がはっ!!!」


象をも卒倒させる毒。


青鬼は白目を剥いて倒れたのだった。
















第60話に続く











残り【77人】




第60話に続く

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