表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
189/530

架陰と山田 その②

天井の隙間に蠢くは


闇に縫い付けられた蜘蛛


手を伸ばせば牙を向け


うねる腹より糸を吐く

2


突然背中を叩かれた架陰が振り返ってみると、そこには、椿班副班長、山田豪鬼が立っていた。


「お久しぶりですね、架陰殿」


「あ、お久しぶりです・・・」


架陰はぺこりと頭を下げる。


二メートルはある体躯が、架陰を見下ろした。


丸メガネが、白く輝く。


(ちょっと苦手・・・)


これだけ威厳のある姿をしているというのに、山田は架陰に対して下に出る。もちろん、班長である鉄平にもだ。


「そう固くならないでください。架陰殿。私はあなたに会えて少し安心しているのです」


「安心?」


架陰はぱっと顔をあげた。


山田はメガネを押し上げる。


「あの門をくぐった瞬間、ここに飛ばされましてね。鉄平さんも、真子も八坂も居ない状況で、困り果てていたのですよ。ですが、顔見知りであるあなたを見つけて、一安心です」


「あ、ああ」


実を言うと、架陰も少し安心していた。


「本題に入りましょう」


山田は、防砂林を抜けた先に佇む、校舎を指さした。


「見てください、あの古びた校舎を・・・」


「あれが、どうしたんですか?」


レプリカとは言え、かなりリアルに造られている。外装の汚れ具合とか、割れた窓ガラスとか。


あと、校庭の雑草とか。


「先程、一匹のUMAが校舎内に侵入したのです・・・」


「え」


架陰は首をグルンと回して、山田を見た。


なぜ、そんなことを教えてくれるのか。


「どんな姿でした?」


「ゴートマンです」


「ゴートマン?」


架陰の記憶が蘇った。


蛇山での、白蛇討伐任務の時に、桜班一行に奇襲をかけてきた人型UMAだ。


「ゴートマンは、Aランク。倒せば、三ポイント入りますよね・・・」


「もしかして、協力してくれって言ってます?」


「いいえ。私が協力するのです」


「へ?」


「ここは、ギブアンドテイクと行きましょう。さすがに、ゴートマンを一人で倒すのは難しいです。そのため、私が架陰殿に手を貸します。その代わりに、次に遭遇したUMAの討伐権を私にください・・・」


ギブアンドテイク。


つまり、架陰がUMAを倒すのを手伝う代わりに、次に遭遇したUMAの討伐を、架陰が手助けするということだ。


「無理なら構いません。私はCランクを探してちまちまと狩ります・・・」


「やりましょう」


架陰は力強く頷いた。


山田は少々面を食らったようだった。


「いいのですか?」


「はい。もちろん、僕も山田さんを援護しますから、二人の方が、狩るスピードも早くなりますよね?」


確実に三ポイントが手に入るのだ。


この交渉、乗らない手はない。


「そうですか」


山田は架陰に向かって、深深と頭を下げた。


「感謝致します」


「あ、はい・・・」


やはり、ここまでの巨体の男に感謝されるのは、不思議な感覚だった。


「とにかく、乗り込みましょう!!」


「はい。私が援護します」


同盟を結んだ架陰と山田は、校舎へと乗り込んで行った。






律儀にも正門を潜り、玄関から中に入る。


扉のガラスは粉々に破壊されていて、踏み込んだ瞬間、足元でパキリと破片が砕けた。


心做しか、空気の温度が三度下がった気がした。


「とりあえず、私が目撃したゴートマンを探しましょう・・・」


「そうですね・・・」


架陰は落ち着きなく辺りを見渡した。


手持ち無沙汰なのが落ち着かず、腰の刀の柄を握りしめる。


その校舎は、上空から見れば、『H』の形をしていた。


今、彼らがいるのは、『H』の真ん中の線の部分だ。


「まずは、右に行きましょう!!」


架陰は勘を働かせて、右へと進路を変更した。


山田はコクりと頷いて着いてくる。


二人は一階を一通り見て回ったが、ゴートマンも、UMAの気配も感じ取ることは出来なかった。


「どこにもいませんね・・・」


「そうですね」


山田はメガネを押し上げた。


「では、二階を見て回りましょう・・・」


ちょうど目の前に、二階への階段が立ち塞がっていたのだ。


ところどころ、天井が崩れていて、瓦礫が散乱している。


砂埃は積もっているものの、足跡を見つけることは出来なかった。


二人で並んで、階段を上る。


その時だった。


架陰の懐に入れたトランシーバーが、震える。


山田の赤スーツの内ポケットに入れたトランシーバーが震える。


「・・・、なんでしょう・・・」


二人で同時にトランシーバーを取り出した。


液晶に、【残り78人】と表示されている。


「残り、78人?」


まさか、もう二人が脱落したというのか?


「参加班は合計で二十班です。つまり、八十人の参加。二人、戦闘不能になったようですね・・・」


山田は無機質な声で言った。


「出来れば、真子や八坂でないことを祈りますが・・・」


「僕も、響也さんとか、クロナさん、カレンさんじゃないことを祈ります・・・」











「残念、オレたちが殺ったのは、【木瓜班(ぼけはん)】の三席と四席だ・・・」











「っ!?」


「何っ!?」


頭上から、しわがれた男の声が降ってきた。


咄嗟に顔をあげる。


天井から、忍者の黒装束の着物を身にまとった男がぶら下がっていた。


その手には、顔を真っ青にした、二人の男が掴まれて、ブランコのようにぶらぶらと揺れている。


「お前はっ!?」


「こんにちは」


忍者の姿をした男が、ぱっと手を離す。


戦闘不能になった男が、二人、床の上に落ちた。


「俺の名前は、【藤班】副班長の、東堂樹(とうどういつき)。コードネームは、青鬼とでも名乗っておこうか・・・」












その③に続く









残り【78】人


ハンターフェスルール追加


・CランクのUMAは【1】ポイント。BランクのUMAは【2】ポイント。AランクのUMAは【3】ポイント。


そして、人間は【10】ポイントである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ