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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
188/530

【第58話】架陰と山田 その①

君の針が


私の胸を貫いて


万象を溶解する


毒を吐いたとして


その血反吐を啜る私は


孤高の砂漠に潜む蠍である




1


「さあさあさあさあ、どうしよう・・・」


架陰は一人、砂漠の中を走っていた。


まさか、あの門をくぐったら、別の場所に転移されるとは思わなかった。


「ドラえもんのどこでもドアって、既に発明されていたんだなぁ・・・」


そして、自分はそのどこでもドアをくぐって、この砂漠地帯に移動させられた。


状況はかなり最悪だが、どこか満たされたような感覚が架陰の胸に宿っていた。


UMAハントは、チームで行わなければならない。一人になるということは、致命的なのだ。


「早く皆さんと合流しないと・・・」


そう思って、トランシーバーを取り出したのだが、響也、カレン、クロナ。誰にも繋がらない。


ひたすらに、砂嵐のようなノイズが走っている。


「電波を妨害されているのか? それとも、みんなが一斉にトランシーバーを使っているから、干渉されている?」


いずれにせよ、今は連絡をとる事が出来ないと分かった。


「とりあえず、CランクのUMAを狩るか・・・」


そう思っていた矢先、架陰は足元が揺れるような気配を感じ取った。


反射で飛び退く。










ドンッ!!!










砂柱が上がり、地中から、黒色体表を持つ巨大な蠍が飛び出した。


「サソリ!?」


かなり大きい。


体長は約三メートル程。黒くつややかな外骨格を有し、毒の滴る尾を振り上げる。










ーーーーーーーーーーーーーー

UMA【鬼蠍(おにさそり)


ランクC


体長三メートル

体重八十六キロ


蠍が突然変異で巨大化した姿。毒を有するが、巨大化したことにより弱毒している。

素早さや、生殖能力は、同じCランクの【鬼蜘蛛】の方が上である。


ーーーーーーーーーーーーー









巨大な蠍は、鋭く光る尾をしならせて、架陰に攻撃を仕掛けた。


「はっ!!」


架陰は飛び退く。


砂煙が上がった。


「さっさと倒させて貰うよ!!」


架陰は腰の刀を抜いた。


「【魔影】!!!」


早速能力を発動させる。


架陰の腕から漆黒のオーラが発現して、名刀赫夜の白銀の刃にまとわりついた。


漆黒の大剣と化す。


蠍のもう一撃を、身を捩って躱すと、一気にカウンターを仕掛けた。


「喰らえ!! 【魔影刀】!!!」










ザンッ!!!










黒き刃が、蠍の毒を有する尾を切り裂いた。


蠍はたまらず悲鳴をあげる。


断面から、黄ばんだ液体が吹き出す。


それを被らないように、蠍の肢をくぐって、胴体の下に潜り込んだ。


「はあっ!!!」


刀を切り上げる。










ザンッ!!!










蠍の腹に、黒い雷光が走り、その巨体を一瞬で真っ二つにしてしまった。


「よし!!」


崩れた蠍の身体が、架陰に降り注ぐ。


架陰はすぐさま魔影を脚に移動させ、柔らかい砂を蹴った。


「魔影脚!!」


ドンッ!!


と砂を巻き上げながら跳躍して、脱出する。


抜け出した瞬間、両断された鬼蠍は、乾いた砂の地面の上に倒れ込み、動かなくなった。


「よし、倒したぞ・・・」


架陰は魔影を解除して、刀を鞘に戻した。


懐に入れたトランシーバが震える。


「ん?」


取り出して見てみれば、液晶の部分に、【1】という数字が表示されていた。


「これって、CランクのUMAを倒したから、一ポイント入ったのか?」


『その通りです!!!』


「うわっ!!」


思わず、トランシーバーを落とすところだった。


上空を飛行するヘリコプターから発せられたアナウンスであった。


『UMAを倒した時点で、トランシーバーに、ポイントが加算されます!! ちなみに、現在、桜班の市原架陰選手が、鬼蠍を倒したために、桜班に一ポイントが入りました!!』


戦場全体に、架陰が鬼蠍を倒したということが知れ渡る。


「なんで言うの?」


架陰は目をじとっとさせた。


なんか、気恥しい。


「まあいいや」


架陰はトランシーバーを懐に戻した。


鬼蠍の死体に背中を向けて、次のUMAを狩りに向かった。


やはり、人口の砂漠ということもあって、全く暑くなかった。強いて言うなら、吹き付けた風が砂を巻き上げ、視界が奪われやすいということだった。


「ここじゃ戦いにくい。さっさと抜けよう・・・」


しばらく、柔らかい地面の上を走り続け、ようやく、砂漠地帯を抜け出した。


申し訳程度に生えた防砂林を駆け抜ける。


「ん?」


木々の間を抜けた瞬間、架陰の目の前にあるものが立ちはだかった。


その場違いな光景に、思わず立ち止まる。


「へえ、人口物も再現しているのか・・・」


架陰の目の前に現れたそれ。


学校の校舎であった。


「学校?」


架陰はゆっくりと校舎に近づく。


明らかに、UMAが潜んでいそうな匂いがした。


「怪しいな・・・」


「どうも」


「うわああああ!!!!」


突然肩を叩かれ、架陰は飛び上がった。


振り返ると、そこには見慣れた姿。


坊主頭に、丸メガネ。そして、二メートルはある体躯。


椿班の副班長、山田豪鬼だった。


「や、山田さん?」


「お久しぶりですね、架陰殿」












その②に続く

その②に続く

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