開幕式 その②
幸福を追い求めてはいけない
不幸を追い求めてはいけない
私は平穏を求め続ける
呼吸することを求む
食事をすることを求む
生きていることを求む
それ以外は何もいらない
傲慢な探求者である
2
「あれが、四天王の、【スフィンクスグリドール】!?」
以前、アクアから説明を受けたことがある。
未確認生物研究機関SANAより派遣されるUMAハンターには、最強の称号がある。と。
それが、【四天王】だ。
各地域に分けて派遣されたUMAハンター達が、四人ひと班として活動するように、四天王も四人で活動する。
つまり、四天王とは、桜班や椿班と同様、最強の称号を持つ者達で集められた【班】なのだ。
「その中の一人が、この大会を主催した?」
「そのようね・・・」
クロナが、天井から吊り下げられた足場に立つ、四天王の一人、多聞天の称号を持つ男を見上げて頷いた。
スポットライトの逆光で、スフィンクスグリドールの顔は判別出来ない。
しかし、白衣のような戦闘服を身に纏い、白と金色が混じった髪の毛を持つ男だとは分かる。
シルエットからして、かなりの長身。名前から判断するに、外国人であるということは確かだ。
その瞬間、天井のくす玉が破裂して、ホログラムが入った紙吹雪が舞いちった。
スフィンクスグリドールの声が響き渡る。
「UMAハンターの皆さん!! ようこそ起こしくださいました!! 私は!! このハンターフェスの主催者である、四天王の、スフィンクスグリドールです!!」
元気よく、ひょうきんな声を出す。
しかし、下から見上げるUMAハンター達からなんの歓声も上がることはなかった。
シーンとした空気が舞い降りる。
「おいおい、みんなぁ、もっと乗っておくれよ。僕、この日のために沢山スピーチの練習をしてきたんだよ?」
スフィンクスグリドールは苦笑した。
だが、誰も何も喋る様子はない。
それもそのはずだ。
彼は、UMAハンター最強の称号を持つ一人。我々にとっては雲のまたその上の人だ。
「まあ、いいや」
スフィンクス・グリドールはごほんと咳払いをした。
「じゃあ、今回のこのイベントのルールを説明するよ!」
パチンと指を鳴らす。
その瞬間、天井から、投影機が降りてきて、眩い光を放った。
スフィンクスグリドールの後ろの壁に、映像が照射される。
一同の視線が、その映像に集まった。
『我々UMAハンターは、日々、国民の命を守るため、人類の進化の軌跡を解き明かすため、UMAと戦っている!!』
スフィンクス・グリドールのナレーションで、UMAハンターが戦っている映像が流された。
『だが、時が経つにつれ、UMA達も凶暴化!! UMAハンターも負傷してしまったり、最悪の場合、死んでしまうこともあるのだ!!』
その瞬間、クロナが「はっ!」と息を飲んだ。
口を抑えると、俯いて、ガタガタと震え出す。
その肩に、架陰がそっと手を触れた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫・・・」
クロナはこくっと頷いた。
「なんで、あの写真が?」
映し出されたのは、クロナの兄である、【雨宮黒真】の遺影だったのだ。
クロナは奥歯を噛み締め、天井の足場でニコニコと笑っているスフィンクス・グリドールを見上げる。
心做しか、彼もクロナの方を見ている気がした。
(四天王、スフィンクス・グリドール・・・)
黒い噂をよく聞くが、初っ端から、かなりのどす黒さを見せつけられた気分だった。
映像は続く。
『そこで、私スフィンクス・グリドールは!! UMAハンターたちの力を底上げする大会を開くことにした!!!』
ドドンッ!!
という効果音が流れたあと、壁に、【ハンターフェス】という文字が投影された。
『これは、UMAハンターたちの力を底上げするための大会であり!! UMAハンター達との交流会でもあります!!!!』
パチンと指を鳴らすスフィンクス・グリドール。
それを合図に、架陰達が立つ床が小刻みに揺れ始めた。
ザワつく一同。
「な、何が起こっている?」
地震だろうか。
いや、違う。この建物が稼働している音だ。
『前方にご注目!!!』
前方の壁が、ゆっくりと動き出す。
縦に亀裂が入り、その隙間から白い光が洩れだした。
そのまま、観音開きのように壁が開く。
眩い光が差し込み、思わず目を覆う。
「あ、あれは・・・!?」
壁が開かれ、肌寒い風が吹き付けた。
そこに広がっていたのは、鬱蒼とした木々か生い茂る森であった。
「森?」
『この先が、この【ハンターフェス】の試合会場となっております!!』
これが、村瀬の言っていたものだろう。
スフィンクス・グリドール自身が保有する広大な土地。
そこには、山や川。森に、海といった、極めて自然に近いフィールドが形成され、大量のUMAが放たれている。
『皆さんには、これより、この中に入っていただき、UMA等と戦っていただきます!!』
その言葉に、集められたUMAハンター達がざわついた。
耳を済ませてみれば、かなり困惑した声が聞こえる。
「まさか、UMAを放し飼いにしているのか?」「こんな場所を作ってまでして、ハンターフェスを開催したかったの?」「一体、どんなランクのUMAが!?」
といった具合に。
『さあ、これより、ルールの説明を開始します・・・』
スフィンクス・グリドールはニヤリと笑った。
その③に続く
その③に続く




