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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
183/530

ハンターフェス編開幕 その③

その煌めく瞳の奥に


どす黒い瘴気を

3


マイクロバスは、山道を長時間走り続けた。


一時間、二時間、三時間は過ぎた。


その退屈な時間の間も、ひたすら、マイクロバスは進み続ける。


その揺れが心地よくなり、架陰はいつの間にか眠っていた。


直前のツチノコ討伐任務の疲労が後押しをして、かなり深い所まで意識を失う。












気がつくと、暗闇の中に立っていた。


「やあ、久しぶり!!」


架陰が精神世界の中にやってきたことに気がついたジョセフは、片手を上げて軽い挨拶をした。


その横には、ぶすっと不機嫌な悪魔も立っている。


架陰はもう驚かない。


「お久しぶりです。ジョセフさん、悪魔」


二人にぺこりと頭を下げた。


ここは、架陰の精神の世界。魂が構築した空間。


ここに、10年前から、ジョセフと悪魔が住み着いているのだ。


「一ヶ月も姿を見せてくれませんでしたが、どうしたんですか?」


「ああ、こいつが目覚めるのを待っていたんだよ」


ジョセフは胡座をかいている悪魔を指さした。


「この一ヶ月の間、悪魔は僕が眠らせておいた。その時間を使って弱体化させたんだよ」


「弱体化?」


「ああ。前みたいに、悪魔が君の精神を乗っ取って、暴走してもいけないだろ? だから、力を少し抑制した」


そう言うと、悪魔が大袈裟に舌打ちをした。


「クソ・・・、(ちから)ガデナイ・・・」


その様子を見たジョセフは、イタヅラをしたあとの子供のようににまっと笑うと、悪魔の爬虫類の鱗のように硬い肩を叩いた。


「というわけで、架陰。君は今まで通り、【魔影】の能力を使えるようになったから」


「は、はい。ありがとうございます」


「基本的に、【弐式】を使っていけ。ピンチになれば、【参式】を使用してもいい。だけど、そうなると、悪魔の力を抑制する僕にも負担がかかるから、考えて発動しておくれ」


「はい、分かりました・・・」


一通りのことを聞くと、架陰は目を覚ますために、暗闇の中を歩き始めた。


「ああ、そうそう!」


ジョセフが思い出したように架陰を呼び止めた。


「なんでしょう?」


「今から、ハンターフェスに行くんだろ?」


真剣な眼差し。


「はい。行きますよ」


「ハンターフェスというイベントは、僕がまだ生きていた頃は開催されていない。だから、得体が知れないんだ」


「そうですか?」


ジョセフの顔は少し強ばっていた。額をつうっと汗が伝う。


架陰には、なぜ彼がそんなに、何かを警戒しているのかが分からない。


「僕は悪魔と一緒に十年間暮らしてきたからね、ある程度の、人の【悪意】ってやつが読めるんだよ」


ジョセフの声のトーンが下がった。


人差し指を唇に当て、まるで機密情報を言うかのように押し殺した声で話す。


「今、マイクロバスを運転している女・・・」


「ああ、村瀬さんですか?」


「あの女から、悪意を感じた」


「え?」


確かにミステリアスな雰囲気ではあったが、そんな感じはしなかった。


架陰とて、殺気くらいは感じ取れるのだ。


「正確に言えば、彼女からの悪意では無い。彼女を通して、何か、陰謀のようなものが渦巻いている・・・」


「そ、そうなんですか?」


「気をつけろ。架陰。おそらく、今回の戦いも、かなり過酷なものになると思う・・・」


ジョセフがあまりにも真剣な口調で、諭すように言ってくるものだから、架陰は身を固くした。


ゴクリと唾を飲み込む。


ジョセフはふっと息を吐いた。


「大丈夫だ。僕達がついている。君がピンチになったら、【魔影】として、君を助ける。君は、今まで通り、戦ってくれればいい」


「はい・・・」


架陰はこくっと頷いた。















「着きました」


村瀬の声で、架陰は目を覚ました。


「もう、アイマスクを外しても構いません」


そう言われたので、恐る恐るアイマスクを外す。


暗闇に目が慣れていたせいで、差し込んできた光に思わず怯む。


「こ、ここは・・・」


架陰は目を細めながら、窓の外を見た。


そこには、巨大な壁が聳えていた。


「大きいな・・・」


首を擡げても、はるか高い壁。


首を回しても、途切れることなく続いている壁。


「ここが、ハンターフェスの会場です」


村瀬が壁の傍まで、マイクロバスを寄せて、ブレーキを踏んだ。


既に、何台かのマイクロバスが駐車されていた。


「この壁の奥には、スフィンクスグリドール様の所有する広大な敷地が存在します。そこには、レプリカの町や、山。川など、現実世界と遜色の無い世界が広がっております」


プシュッと音がして、マイクロバスの扉が開いた。


「どうぞ、降りてください」


村瀬に促され、五人はゾロゾロと下車した。


改めて、壁を見る。


「デカイな・・・」


響也が目を細めながら言った。


この壁の奥に、ハンターフェスの会場があると言われても、どこから入ればいいのだろう。


壁には、扉や入口といった類のものが見当たらない。


「こちらでございます」


村瀬が五人に手招きをした。


何も無い壁の前に立った村瀬は、黒い革の手袋をはめ、コツコツと壁をノックした。


すると、壁に長方形状の亀裂が入る。


ズズズズと、石と石が擦れるような音がしたと思うと、壁の一部が下がり、奥へと続く扉が姿を現した。


「では、こちらへ。こちらが、ハンターフェスの会場となります」











第57話に続く



第57話に続く

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