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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
179/530

番外編【真子の奇妙な冒険】その⑥

簡単に言えばメリケン粉

6


「四の技!! 【死条京下】!!!」


男が、目にも止まらぬ速さで刀を振った。


琥珀色の光が、無数の刃となって空間を弧を描く。


その、背筋を凍りつかせるまでの凍てつく殺意をもって、私に迫った。


まずい。


殺られる!!


「くっ!!」


私が目を閉じた瞬間、緊迫を打ち破るような爆発音が響いた。


金属音が響く。


「ちっ!!」


男の舌打ちが聞こえたと思って目を開けると、男の刀が空中を舞っていた。


そのまま、私の傍に突き立つ。


「えっ!?」


って、間抜けな声を出している場合じゃない。


私は直ぐに男から距離をとった。


見れば、八坂さんのライフルの銃口から煙が上がっていた。


「さすがに、部下が殺されるのは見ていられないからな・・・」


八坂さんが、引き金を引いて、男の刀を弾いてくれたのだった。


八坂さん、初めて尊敬しましたよ。


「・・・・・・」


男の手からは、血がぼたぼたと流れ落ちていた。八坂さんの弾丸が掠ったのだ。


男はその血まみれの手で、地面に突立つ刀に手をかけた。


「お前ら・・・、なかなかやるんだな・・・」


「やりたくはないよ・・・」


八坂さんが銃口を男に向ける。


「僕達はUMAハンター。人間と戦う趣味なんて持ち合わせていない・・・」


「・・・・・・」


男は押し黙ってしまった。


こいつ、何者だろう・・・。


先程の攻撃を食らって理解した。彼は、ただの人間ではない。


UMAを両断する斬れ味を有する刀。


そして、UMAハンターとして訓練を積んでいる私たちを圧倒する体術。


更には、「【心響流】」という名の技。流派。


「・・・、何者なんスか? あんたは・・・」


「オレは・・・」


男は、学ランのポケットから包帯を取り出して、手に巻き付けながら言った。


「俺の名前は、【心響流】を受け継ぐ者・・・」


そして、とつけ加え、包帯で手のひらと一緒に巻き付けて固定した刀の鋒を向けた。


「この、【名刀・秋穂】の製作者を探している者だ・・・」


「名刀、あきほ?」


聞き覚えが無い刀だ。


だけど、あの斬れ味。


かなりの腕前を持つ【匠】が造ったに違いない・・・。


「おい、赤スーツ」


「椿班だ」


「お前たちは、【一代目・鉄火斎】という男を知らないか?」


「てっかさい?」


誰だ、そいつ・・・?


私たちがキョトンとしていると、男は大袈裟にため息をついた。


「もういい・・・」


刀を鞘に収めると、「チキッ」と、心地よい金属音が響いた。


「オレは、UMAを殺し続ける。この刀の製作者を探し続ける・・・」


そう言って、私と八坂さんに背を向けると、歩いて行こうとした。


「たとえ同じUMAを狩る者だろうと、邪魔をするならオレが斬り殺す・・・」


「待て!!」


八坂さんがライフルの銃口を向けた。


「それは了承できない!! UMAを狩る仕事は、我々UMAハンターの使命だ!!!」


遠ざかっていた男の足が止まる。


首だけで振り向いて、私たちを睨んだ。


「撃ってみろ、直ぐに斬り落とす」


「言ったな・・・」


八坂さんの舌打ちが聞こえた。


次の瞬間、八坂さんのライフルの銃口が火を吹いた。


男は振り向きざまに、刀を一閃する。









ギンッ!!!








火花か弾け、八坂さんの弾丸が真っ二つに切断された。


やっぱり、こいつの剣術、速すぎる・・・。


と、思った瞬間、男の喉の奥からうめき声が発せられた。


「うう・・・」


びちゃびちゃと、液体が滴る音が聞こえる。


「っ!!」


男の右手の包帯から、真っ赤な血液が滴っていた。


先程、八坂さんが負わせた傷からの出血だ!!


「ちっ・・・」


男は苦痛で表情を歪め、片膝を湿気た地面に付いた。


「真子!!!」


「は、はいっス!!!」


八坂さんの言葉に蹴り飛ばされたように、私は男に向かって走り出した。


このまま、男を抑え込む!!!


「舐めるな!!」


男が刀を横に薙ぐ。


それを、上に跳んで躱す。


「終わりッスよ!!!」


そのまま、男の上に覆いかぶさった。


「離せ!!」


「離さないッスよ!!」


遠距離攻撃専用武器の私だって、体術の基礎くらい齧ってるんだ!!


男の体に脚を絡め、背後に回り込むと、腕と肩を締め上げた。


これで、男は動けない!!


「どうッスか!!」


「くっ!!」


男の手から刀が落ちる。


よし、武器は手放した。


あとは、身動きを封じるだけ!!


「離せ!!!」


バタバタと池の鯉のように暴れる。


私は振り落とされまいと、男の背中にしがみついた。


絶対に離さない!!











むにぃ。











「え?」


男の胸部に回した私の手の中に、柔らかい感触が残った。


「えっ?」


今の感触って、もしかして・・・。











むにぃ、むにぃ、むにぃ、むにぃ。










やっぱりこの感触って・・・。


「・・・・・・」


男(?)は、肩をビクッと跳ねさせ、強ばったように固まった。


「・・・・・・」










むにぃむにぃむにぃむにぃむにぃむにぃ。










「いやー、スゴいッスね。これ、本物ですか?」


常日頃、八坂さんに「まな板」とバカにされている私には持っていないもの。


「私も欲しいッスよお」


むにぃむにぃむにぃむにぃ。


「・・・・・・・・・・・・」


男の顔が、みるみると赤くなる。


次の瞬間、男は劈くような悲鳴を上げて振り返った。


「キャアアアアア!!!!」


ぐへっ!!


私は頬をぶっ飛ばされて、男から離れた。


腰を思い切り幹にぶつける。


痛たた・・・。


顔をあげると、男、いや、もう女の子と呼んだ方がいいだろう。


女の子は顔を真っ赤にして、自分の胸を押さえていた。


「あんた、女の子だったんスね」


「う、うるさい・・・」


女の子は地面に落ちた刀を拾い上げた。


「も、もう、私は帰るから!! 絶対に追ってくるなよ!!!」


そう言い残し、全力で走って逃げて行ってしまった。


「おい、あいつ、何があった?」


八坂さんが私の横に立つ。


私は手に残った感触を確かめながら、静かに頷いた。


「簡単に言えば、メリケン粉が詰まってました・・・」


「あ?」
















その⑦に続く



その⑦に続くッスよ!!

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