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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
178/530

番外編【真子の奇妙な冒険】その⑤

一条


二条


三条


死条京下

5


「直ぐに斬り殺すタイプだ!!」


男はそう叫ぶと、さらに強く踏み込んだ。


刃をライフルで受け止めていた八坂さんの足が、数センチ下がる。


「八坂さん!!」


私は援護をするため、弓に矢を掛けた。


引き絞って放とうとした瞬間、殺気を感じ取った男がその場から飛び退く。


男は私と八坂さんから二十メートル程の距離を保つと、握っていた刀を中段に構え、いつどんな時、どんな方向からの攻撃にも対応できるように身構えた。


「まあ落ち着け」


八坂さんが宥める。


「僕達は戦いに来たわけじゃない。君に話を聞きに来ただけだ・・・」


「話すことなんて何も無いぞ・・・」


男は獣のように低く唸った。


だけど、なんだろう・・・。この違和感。


私は思わず、引き絞った弓の力を弱めた。


「オレはこの化け物を狩り尽くす・・・、ただそれだけだ!!」


あの男の子の声・・・。


少し、違和感を感じる。


すごく漠然としているけど、「男らしくない」声だった。


口調も、語尾の強め方も、男特有の、乱雑なものだ。


だけど、声色というか・・・、声の高さが、想像の何倍も高い。


まるで、変声期前の男の子。


ハッキリ言ってしまえば、女の子みたいな声・・・。


「邪魔するやつは、斬り殺す!!」


またも、やや高く透き通るような声でそう叫んだ男は、ぬらぬらと八坂さんに襲撃する。


「くそ!」


八坂さんがライフルのスコープを覗き込んだ。


「だったら、眠ってもらうしかない!!」


そう言って、引き金を引く。










ドンッ!!!











ライフルの銃口から麻酔弾が放たれた。


掠っただけで、対象を眠りへと誘う弾丸。


眠らせて一気に勝負をかけるつもりだった。


だが。


「遅い!!」


男が稲色の刀を振ったかと思えば、ギンッ!!!と金属音が弾け、弾丸が真っ二つになった。


「っ!?」


「弾丸など、直ぐに斬り捨ててやる!!」


そう言って、八坂さんの間合いの内側に入ると、振り上げた刀を振り上げた。


「八坂さん!!」


私は矢を放った。


鏃に付いた薬品が、空気との摩擦熱で発火して、矢が炎を纏う。


「俸禄火矢!!」


「っ!!」


炎の矢が、男が振り上げていた魔影の刃に直撃した。


炎と矢の勢いには勝てず、男の刀が手から吹き飛ばされた。


「チャンス!!」


私は背中の弓矢ケースから予備の矢を取り出すと、立て続けに引き絞った。


「喰らえッス!! 【爆煙火矢】!!!」


炎を纏った矢が男に迫る。


「ちっ!!」


男は先程と同様に、地面を蹴って後退した。


矢は背後の木の幹に刺さる。


くそ、躱された。


男は地面に突立った刀の柄を掴んで抜く。


せっかく武器を落としたのに・・・。


「もう一発!!」


私は背中のケースから新しい矢を抜く。


「待て!! 真子!!!」


八坂さんが止める。


「やつは人間だ! 下手に傷つけるな!!」


「でも、こいつ、私たちに敵意むき出しッスよ!!」


「僕の【麻酔弾】で抑え込む!!」


八坂さんは、麻酔弾が装填された【NIGHT・BREAKER】の引き金を引いた。











ドンッ!!!











「甘い!!」


男は刀を振って、正確に弾丸を弾く。


「オレの特技は、【精神統一】!! お前らの殺気がこもった攻撃なんぞ、簡単に見極めれるんだよ!!」


「精神統一?」


なんじゃそりゃ。


と、考えている間に、男が地面を踏み込んで接近する。


攻撃対象は、私だった。


「まずはとろそうなお前からだ!!」


「とろくないッスよ!!」


私は弦に掛けた矢を引く。


「待て!! 真子!!!」


この後に及んで、八坂さんが矢を射ることを止めてくる。


「くっ!!」


私は土壇場で躊躇って、後退した。


だが、男はさらに強く踏み込んで、私との間合いを詰めてくる。


「行くぜ、【心響流】・・・」


刀を右手に、鞘を左手に握り、地面と平行に構えた。


ズズッと、殺気が地面を這って私に迫った。


なにか、仕掛けてくる!!


「一の技・・・」


「くっ!!」


私は我慢出来ず、火矢を射った。


「【一条】!!」


男が刀を一閃する。


暗闇に琥珀色の光が走り、炎の矢を鏃から両断した。


「私の矢が!!!」


「まだだぜ・・・」


矢を斬り落としただけでは男は止まらない。


「【心響流】・・・」


さらに姿勢が低くなった。


「【二の技】・・・」


「にのわざ!?」


私は慌てて矢を抜こうとするが、テンパっているせいで、上手く掴めない。


その間にも、男は低い姿勢から地面を蹴り上げ、私に迫る。


「【二条】!!!!」











ギンッ!!!









「あっぶな!!」


切り上げられた刃を、何とか【名弓天照】の木の部分で受け止める。


ミシッと音がして、刃が弓にめり込んだ。


うう、ごめん、天照。


「まだだ!!」


えっ!! まだあるの!?


「【三の技】!!!」


男は刀を引き、空中で身体を捻る。


捻りの動作で勢いを付け、一閃した。


「【三条】!!!!」











ギンッ!!!











「きゃあっ!!!」


受けきれない。


吹き飛ばされて、地面を転がる。


受け身を取れ!!


「くっ!!」


何とか体勢を整えて、地面に手をつく。


ズサササと、足と手を使って失速した。


「よし!!」


「まだだ!!」


「えっ!?」


顔をあげる。


目の前に、刀を構えた男が迫っていた。


嘘でしょ!?


もうあの間合いを詰めてきたの!?


まずい、もう防ぐことも出来ないし、躱すことも出来ない。


殺られる!!!


「【四の技】!!!」


男が、目にも止まらぬ速さで刀を振った。


「【死状京下(しじようみやこくだり)】!!」











その⑥に続く

その⑥に続く

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