番外編【真子の奇妙な冒険】その②
これは【ハンターフェス編】の前日譚ッスよ!!
私と八坂さんが向かった任務地で、とある事件が発生するっす!!!
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「おい!! さっさと起きろ!!」
八坂さんが私から布団を剥ぎ取る。
「なんでお前はアラームが止まった後も寝るんだよ!!」
うーん。
まだ眠い。
いや、眠くはないな。
とにかく、布団の外に出たくない・・・。
「八坂さん、返してください。人の布団を奪うのは犯罪っスよ」
「自分が職場放棄していることを知らんのか?」
八坂さんは、私のパジャマの首根っこを掴んで、強引にベッドから引きずり下ろした。
ゴツン。
痛い。お尻を打った。
「おら、早く戦闘服に着替えろ」
「もう、仕方ないっすね」
私は観念して起き上がった。
クローゼットを開けて、椿班指定の戦闘服である赤スーツを取り出す。
八坂さんはじっと私を見ていた。
「なんすか? 女の子の着替えを見るのは変態ッスよ?」
「いや、お前絶対に三度寝するだろ?」
「しませんよ!!」
いや、する気だった。
八坂さんが出ていったら直ぐに布団に潜り込むつもりだった。
「しないんで出ていってください!!」
私は八坂さんをゲジゲジと蹴って部屋の外に追い出そうとした。
八坂さんは諦めた顔をして、「分かった分かった!!」と扉の外に出ていく。
さあて、邪魔者は消えた。
「三度寝しよー」
ベッドに戻ろうとすると、直ぐに扉が開き、山田さんが入ってきた。
「げげっ!!」
「真子、いい加減にしなさい」
山田さんが、太い腕を振り上げる。
バキッ!!
山田さんが振り下ろした拳が、私の安眠の場所であるベッドを砕いてしまった。
「あああああああああああぁぁぁ!!!」
私のベッドが!!
私の、パートナーが!!
ニトリで買った安いベッドが!!
「さあ、早く着替えて任務に向かいなさい・・・」
山田さんは、手のひらのホコリを払うと、部屋を出ていってしまった。
仕方ないっすね。
私はようやく赤スーツに着替えた。
「終わりましたよー」
部屋の外に出ると、同じく赤スーツに着替えて待ち構えていた八坂さんが私を見た。
「よし、これを食ってさっさと行くぞ」
そう言って投げてきたのは、サランラップに包まれた爆弾おにぎり。
私はラップを解いて、海苔が巻かれたそれにかぶりついた。
おかか。ツナマヨ。あと明太子か・・・。
「梅干しはないんすか?」
「撃ち殺されたいのか?」
腹ごしらえを完了した私と八坂さんは、任務へと向かった。
※
椿班本拠地の寮を飛び出した私と八坂さんは、跳躍して民家の屋根の上に立つと、目的地まで走り出す。
屋根の上を走り、電柱を蹴り、野山を金抜ける猿のように駆けた。
「で、今日の任務はなんですか?」
本来のUMAハントなら、鉄平さんと山田さんを加えた四人で向かう。
だけど、今回は二人のみ。
あまり重要な任務ではない印象だった。
八坂さんは深いため息をついた。
「お前、玄関の連絡掲示板に書いてあっただろ?」
「見てないんで」
「当たり前のように言うな」
そう言ったあと、八坂さんは今回の任務について説明を始めた。
「今回は、とある人物を探す任務だ」
「人物? UMAじゃなくて?」
「ああ・・・」
八坂さんは気難しい顔をした。
「最近な、UMAの死骸がよく見つかるという報告があるんだ・・・」
「UMAの、死骸?」
「ああ。UMAの死骸だ。自然死じゃない。どのUMAの死骸にも、【刀傷】のようなものを残されて殺されている・・・」
「刀っスか・・・」
私は跳躍しながら、刀を装備するUMAハンターのことを思い出した。
「桜班の架陰くんと、クロナ姐さんが、刀を装備してますよ?」
確か、名刀・赫夜と、名刀・黒鴉だった気がする。
「もちろん、あいつらにも確認をとったさ。だが、二人とも『知らない』と言っていたし、それに、そのUMAの死骸が見つかった時は、僕達は【架陰奪還作戦】の途中だっただろ?」
架陰奪還作戦。
あれは本当に大変だった。
鉄平さんの不覚で架陰くんを誘拐されたのに、椿班まで巻き込んで任務に向かわされたんだよね。
まあ、クロナ姐さんと共闘できたのは楽しかったけど。
「僕達は、【UMAハンターでは無い誰か】がUMAを殺して回っているのだと踏んだ・・・」
「つまり、今回の作戦は、その誰かを暴くってことっすね!!」
「そうだ・・・」
八坂さんはポケットからスマートフォンを取り出すと、地図のアプリを起動させた。
「ここから先にある森で、UMAの目撃情報があった。巨大な蛙・・・、さしずめ【鬼蛙】だろうな・・・」
「雑魚じゃないすか」
「雑魚だからこそ、餌として活用しやすい・・・。鬼蛙を餌にして、その【UMAハンターでは無い誰か】をおびき出そうじゃないか・・・」
八坂さんは背中に掛けたライフルケースのベルトを握りしめ、ニヤリと笑った。
私も、肩に掛けた弓矢を握りしめる。
「さあて、行こうじゃないか!!」
「了解ッスよ!!!」
まさかこの任務で、あんな奴と遭遇することになるなんて・・・、この時の私と八坂さんは思ってもいなかった。
その②に続く
その③に続くッスよ!!




