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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第55話】架陰奪還編完結 その①

私は貴方になれないけれど


貴方の「心の拠り所」になりたい

1


目を覚ました時、悪魔は暗闇の中に立っていた。


直ぐに、精神の隅に追いやられたのだと気づき、舌打ちをする。


「オノレ、マタ連レ戻サレタ・・・」


恐竜のような金色の目を前方に向けると、周りの闇に溶け込むような漆黒のスーツを身にまとった男がたっていて、ニヤニヤとしながら悪魔を見ていた。


「残念だったね。悪魔。君の目論見は木っ端微塵のようだ」


「ウルサイ・・・」


先程まで架陰の身体を乗っ取り、暴れ回った悪魔だとは思えないくらい、悪魔の勢いは失速していた。


それもそのはず。せっかく、架陰の身体を乗っ取り、復活を果たしたかのように思えたのに、再び連れ戻されたのだ。


「また暗闇の中で二人きりだ」


ジョセフはニコッと笑う。


悪魔はその笑いが気に入らなかった。


「ジョセフ。貴様ハ平気ナノカ?」


「何が平気なんだい?」


「十年モ、魂ノママノ状態ノコトダ・・・」


「ああ・・・、まさか君がそれを気にしているとはね」


ジョセフは鼻で笑う。


悪魔はそれが気に入らなかった。


何度も説明しよう。悪魔は、十年前、このジョセフという男を依代として実体化した。その姿で、破壊の限りを尽くしたのだ。だが、アクアたちに討伐され、魂だけとなってしまった。


そして、十年前、架陰の身体に取り憑いたのだ。


「ワシハ、コノ時ヲ待ッテイタ。再ビ架陰ヲ依代トシテ、実体化スルトキヲ・・・」


やっと、ジョセフの抑制の力が弱まり、そのチャンスが来たのだ。それなのに、失敗に終わってしまった。


悪魔は牙が砕ける勢いで歯軋りをした。


「オノレ・・・」


ジョセフは腹が立つくらいの笑みを浮かべて、悪魔の爬虫類質の体表をぽんぽんと叩いた。


「まあ、いいじゃないか。今の君では、架陰の身体を完全に乗っ取る力が無かっただけの話さ」


「ワシニ(ちから)ガ無イト言ウノカ?」


聞き捨てならない言葉だ。


正直に言えば、ジョセフと架陰。


精神も武術も、ジョセフの方が遥か上を言っている。ジョセフの時の方が依代にするのが簡単だったというのに、架陰の時にしくじるなんて明らかにおかしい。


「まあまあまあまあ」


ジョセフはニコニコニコニコとした笑みを顔に貼り付けて、体を強ばらせる悪魔の肩を揉んだ。


「僕はね、君に戻ってきてくれて嬉しいんだよ」


「ウレシイダト?」


首の辺りがむず痒くなる言葉だ。悪魔は、この暗闇でジョセフと一緒に過ごすことなんて心底嫌だった。


「もう十年間も一緒にいるじゃないか。僕と悪魔。妻よりも子供よりも一緒にいるよ」


「ハッ!」


悪魔は鼻で笑った。


「ナンダ・・・、気持チ悪イ」


「キモくて結構。十年前、依代にされた僕は死んだんだ。それなのに未だに魂の状態で生きているってことは、僕にはまだ役目が残っているということさ」


そういうと、ジョセフは悪魔の体を握る手に力を込めた。


その瞬間、ジョセフの指先の指紋が悪魔の爬虫類質の体表に吸い付き、悪魔の力を吸い取り始めた。


「・・・!?」


力が抜ける。


精神の世界の中でさえ、身体が上手く動かなかった。


「悪魔。君はもう少し寝た方がいい」


ジョセフはそう言いながら、悪魔の体から力を吸収していく。


「貴様・・・」


悪魔の視界が、睡眠薬を盛られたときのように歪んだ。必死に抵抗をしようとするが、耐えきることかできない。


そのまま、悪魔は気を失い、暗闇の中で浮いた状態となってしまった。


「ふう、やっと大人しくなった」


ジョセフはいたずらっ子を相手するような目を悪魔に向けた。


「いいか? 架陰の体は君の体では無い。君が容易に乗っ取っていいものではないんだよ・・・」


もちろん、気を失っている悪魔には聞こえていない。


「悪魔に取り憑かれ、依代にされて操られるのは僕だけで十分だ。架陰の身体は、絶対に渡さない・・・」


十年前、身体を滅されて逃げ出した悪魔が、十年もの間、架陰の精神の中に潜んでいたのにはわけがある。


悪魔だって、本当は直ぐに架陰の身体を乗っ取り、復活を果たしたかった。


だが、一緒についてきた前の依代のジョセフが邪魔をしてくるのだ。


だから、十年前もの間、悪魔は本調子を発揮することが出来なかった。もちろん、今もだ。


悪魔の力がマイナスならば、ジョセフの力はプラスである。


この均衡が保たれているからこそ、架陰は今の今まで悪魔に身体を乗っ取られることが無かったのだ。


ジョセフは暗闇の中、架陰の視界を通して見る外の世界を眺めた。


アクア。味斗。鑑三。


この三人のおかげで、架陰の身体を悪魔から取り返すことが出来た。


「感謝するよ・・・」


ジョセフは穏やかに笑った。


「架陰。これから君は、もっと強いUMA達と戦わなければならない。そして、僕達の力が必要不可欠になってゆく」


気絶している悪魔の背中をぽんぽんと叩く。


「だけど、その時は喜んで力を貸そう。悪魔と、僕の力が合わされば、君は無限の力を発揮出来る。もちろん、悪魔が暴走しそうになったら、また僕が止めてみせるさ」















戦いが、今、終わった。











その②に続く

キャラ紹介


【ジョセフ】・・・アメリカのFBI捜査官だった男。とある事件をきっかけに、メン・イン・ブラックに加入して、悪魔討伐を目論んだ。しかし、逆に悪魔に取り憑かれ、依代とされてしまった。

悪魔討伐後は、悪魔の魂と共に架陰の身体に住み着いている。


【悪魔】・・・実体の無いUMA。実体化するためには他者に取りつかなければならない。十年前に実体化した時は、ジョセフを依代としている。討伐後は、魂だけとなり、架陰の身体に住み着いている。

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