表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
167/530

【第54話】精神の激闘 その①

「天使が舞い降りて来るみたいだね」


と君が言うから


「そうだね」


と言って


その小さな頭を撫でたんだ

1


「あれ?」


架陰は目を覚ました。


ふわふわとする浮遊感の中、おもむろに上体を起こす。


辺りを見渡すと、そこは闇の中だった。


「あれ、ここは・・・」


架陰はこめかみに手を当て、記憶を辿った。


確か自分は、夜行との激闘に打ち勝ち、夜行を戦闘不能に陥れた。


だが、次の瞬間に、架陰の精神の中に住み着く悪魔に、身体と意識を乗っ取られたのだ。









そうして、今に至る。


「やられたなぁ」


架陰は腕を組み胡座をかき、頭を抱えた。


ふと、顔を上げると、目の前に、架陰と同様の格好をした、スーツの男が座っていた。


悪魔同様に、架陰の精神の中に住み着く男。確か名前は、【ジョセフ】と言ったはずだ。


「あの、ジョセフさん?」


「やられたな」


ジョセフの不機嫌な目が架陰を見た。


「まさか、悪魔があのタイミングで外に飛び出すとは思わなかった・・・」











もう一度説明するが、【悪魔】という名のUMAはには、実体がない。そのため、悪魔が実体化しようとした場合、【依代】が必要なのだ。


現在、現実世界でアクア、味斗、鑑三と激戦を繰り広げている悪魔は、つまり、架陰を依代として実体化したもの。


ちなみに、目の前のジョセフは、十年前の悪魔の暴走で依代にされた人間だ。悪魔が討伐された後、悪魔と精神が融合してしまったらしい。


ジョセフはぺこりと謝った。


「済まない架陰。完全に油断していた・・・」


「どういうことですか?」


自分には、悪魔に精神を乗っ取られる意味が分からない。


ジョセフは人差し指を唇に押し当て、声を押し殺して説明した。


「いいかい。簡単に説明すれば、君の体には、二人分の魂が宿っていると言っていい。僕、【ジョセフ】と、【悪魔】。悪魔は、常に実体化を試みて、君の精神の中で暴れる。僕は、君を護るために悪魔の力を封じ込めている。これで、君の中の均衡が保たれているんだよ」


「じゃあ、悪魔が僕の意識を奪ったのは、その均衡が破れたから?」


「そうだね。【魔影】の能力は、僕の【影】の能力と、悪魔の【悪魔】の能力が融合したものだ。つまり、発動すると、悪魔の力も一時的に解放されることになるんだよ。その力は、壱式、弍式、参式と数を追うごとに増加する。つまり、悪魔は自由になるんだ・・・」


だんだんと理解できてきた。


つまり、架陰が【魔影・参式】を発動させ、一時的に悪魔の力を解放したから、悪魔が架陰の意識を奪うまでに力を増強させたのか。


「元に戻る方法は?」


架陰は身を乗り出して尋ねる。


ジョセフは、苦虫を噛み潰したような顔をした。


「なかなか言い難いけど、分からない・・・」


「分からない?」


「うん、悪魔の支配から逃れた人を見たことがない。前例がない。僕だって、十年前に悪魔の支配を逃れることは出来なかったんだ・・・」


じゃあ、一生このままなのか?


絶望に足元が竦んだ。まあ、闇の中だから足元は無いのだが。


「これは僕の憶測だけど・・・」


そう言って、ジョセフは元に戻る方法を考察し始めた。


「悪魔は、自分の力が強くなった瞬間を見計らって、架陰の意識を乗っ取った。つまり、僕達も同じことができるんじゃないか?」


「そんなことできるんですか?」


「架陰には力がない。基本的には、悪魔には及ばないだろうから、無理だろうね」


「そんなぁ・・・」


「だけど、周りに協力者が居れば話は別だよ」


「協力者?」


「うん。つまり、悪魔化した君を止めようとする者たちだ」


そういうと、ジョセフは目を閉じ、耳を済ますような格好をした。


「感じる。十年前、悪魔に依代にされた僕を助けてくれた恩人たちの気配が・・・」


ジョセフの脳裏に浮かぶのは、十年前、悪魔の目を通して見た五人のUMAハンターの姿。


その内の二人が、すぐ近くにいる。恐らく、悪魔化した架陰と戦っている。


アクア。


そして、味斗。


「ヒカルと風鬼、平泉は来ていないようだけど・・・、十分対抗できる。あと、鑑三もか・・・」


ジョセフは胡座をかいた膝をパンっと叩いた。


「あの三人なら、必ず悪魔を弱体化させてくれる。その隙に、君は奪われた意識を取り戻せ! 」












そして、現実世界。


「終わりだ!!」


鑑三の放った蹴りが、悪魔の顔面に直撃した。


ゴリッと鈍い音がして、悪魔の顔、正確には架陰の顔が歪んだ。歯の二、三本が砕ける。


「おらあっ!!」


そのまま地面へと叩きつける。


床に蜘蛛の巣状の亀裂が入り、悪魔の身体がめり込む。勢いのあまり、辺りの岩が隆起した。


(どうだ?)


鑑三は祈る。もう起き上がってくるな。と。


だが、悪魔は手をついて立ち上がった。


「おのれ!!!」


直ぐに折れた骨や抉れた肉が再生する。


切り返して反撃しようとした瞬間、悪魔の身体を大量の水が包み込んだ。


「いい加減!! 架陰を手放しなさいよ!!!」


アクアの【水】の能力だった。


悪魔は諦めない。悪魔は執着が深い。


右手で手刀を作ると、そこに魔影を纏わせた。


「【魔影刀】!!!」


魔影を纏った手刀を一閃し、アクアの水の束縛を斬り飛ばす。


「絶対に・・・、ワシは死なん・・・。もう二度と、貴様らには負けはしない!!!」


激闘は続く。












その②に続く

その②に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ