【第53話】伝説の力 その①
岩に突立つ聖剣を
湖畔の縁に腰をかけて見ていた
あれを引き抜く者を待ちながら
僕は豆だらけの手で柄を握り
ちょっとだけ力を込めてみる
1
「衝撃波!!!」
悪魔の懐に潜り込んだ鑑三が、大きな手のひらを突き出した瞬間、そこから波紋のような衝撃波が放たれ、悪魔の身体を吹き飛ばした。
「っ!?」
パキパキパキパキと、渇いた音がして、悪魔の肋が砕ける。
(なんだと・・・!?)
床に爪を突き立て、勢いを殺す。
直ぐに骨に精神を集中させ、砕けた骨を修復した。
「貴様・・・、今、何をした・・・」
充血した目で、鑑三を睨む。
鑑三の能力が【蓄積】だということは知っていた。だが、エネルギーの蓄積が行えるのは、自らの筋肉のみだ。
表情には出さないが、困惑している悪魔を見て、鑑三は鼻で笑った。
「まさかお前、人は進化しないと思っていないか?」
「進化だと・・・?」
「ああ、オレは進化する」
そう言って、鑑三は足元の破片を拾い上げる。手の中で破片を転がした後、左指で破片を摘んで、右指で破片を叩く。
「十年前よりも、オレの能力は進化しているぞ」
コンコン、コンコンと、鑑三の指が破片をノックしていく。
ある程度叩いたところで、鑑三はその破片を悪魔に向かって投げた。
「・・・!?」
悪魔は床を蹴って、大きく躱した。
ただの小石だ。
だが、されど小石である。
この緊迫した状況で、ただの小石を投げるとは思えなかったのだ。
つまり、鑑三は、この破片に何かを仕掛けている。
「解放・・・」
悪魔の読みは的中した。
破片が床に落ちた瞬間、パアンッ!!! という音を立てて爆発する。
「これは・・・!?」
「これがワシの能力だよ」
鑑三が一瞬で悪魔との間を詰めた。
低い姿勢から、鉤爪のような形にした手を振り上げる。
「っ!!!」
悪魔は上体を仰け反らせて躱した。
だが、鑑三の指先が悪魔の胸を掠める。
「触れたぞ」
「っ!!」
鑑三の指が触れた部分が、カッと熱くなった。
「ワシの能力は、物質にエネルギーを蓄積する。十年前は、ワシの筋肉のみだったが、今は、どんな物質にも蓄積できるようにした!!」
鑑三は身を捩り、ラグビー選手のような太い足を悪魔の腹にめり込ませた。
「ぐっ!!」
「吹き飛べ!!」
踏みとどまれず、吹き飛ばされる。
悪魔は床の上を低く滑空し、何度か地面に激突して跳ねた。
「くそ!!」
背中に生えた悪魔の翼を羽ばたかせ、軌道を修正する。
空中に逃げた瞬間、中列で待機していたアクアが動いた。
「能力、発動!!」
アクアが指を鳴らす。
その瞬間、彼女を中心とした半径二十メートル圏内の床から水に満たされた。
「私の能力は、【水】を自在に操る!!」
空間に水を満たした状態で、胸の前で印を結ぶ。
アクアの周りを満たしていた水がザワザワと蠢き始め、まるで一匹の龍のようにアクアの周りを旋回し始めた。
「ほう・・・」
その様子を見て、悪魔は息を吐いた。
「アクア、貴様も進化しているか・・・」
「するに決まっているでしょ!!」
アクア声を荒らげ、右手の人差し指と中指を絡ませた。
その手を、悪魔に向ける。
「【水龍】!!!」
アクアの周りを旋回していた水が、ズブズブと形を変え、一匹の龍の形となった。
「キイイイイイ!!」と唸り声を上げ、水龍が悪魔へと襲いかかる。
「近づくな鬱陶しい!!」
悪魔が拳に魔影を纏わせた。
「【魔影拳】!!!」
放った拳が、水龍の顎に直撃する寸前で、アクアが印の形を変えた。
「【水龍】・【離散変幻】」
術が溶けたように、水龍の形が崩れる。
「っ!?」
水が、悪魔の拳を避けるようにして動き、悪魔の周りを取り囲んだ。
アクアは拳を握りしめた。
「【水神の抱擁】!!」
次の瞬間、悪魔は水の中にいた。あの水龍が形を変え、悪魔を閉じ込めたのだ。
「ちっ!!」
水中で悪魔は泡を吐く。
(射程範囲が広がっている・・・)
水圧で、身動きが取れない。
悪魔を捉えた状態のまま、アクアが後方の味斗に指示を出した。
「味斗、やっちゃって!!!」
「了解」
味斗は、赤スーツの内ポケットに手を入れた。
取り出したのは、ミントタブレットが入ったケースだ。
「水には、雷だよね」
そう言って、ケースから黄色のタブレットを取り出す。
「【ライジングミント】。まるで雷に打たれたような辛味・・・」
黄色のタブレットを、口に放り込んだ。
「僕の能力は、【味の実体化】。僕の舌は、辛味を感じると、その辛味を、炎、氷、雷の三種類の味に分けられて実体化する・・・」
肺が破裂せんばかりの勢いで息を吸い込む味斗。
そして、思い切り息を吐く。
「【雷息】!!!!」
口から、落雷を思わせる雷撃が、悪魔を捉えた水に向かって放たれた。
バリバリバリッ!!と、金色の光が空中をきしる。
「っ!!」
直撃した。
その②に続く
その②に続く




