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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
163/530

魔影・陸式 その③

蛞は蛙の子


膾の孫ではありません


それの何より証拠には


軈て手が出る足も出る

3


扉が勢いよく蹴破られ、奥の廊下から、筋肉隆々の男が飛び込んできた。マントを纏い、頭は刈り上げられ、鷹のような眼光が、前方に佇む悪魔を睨む。


かつて、【最強】の称号を得た、鑑三という名のUMAハンターだった。


「鑑三さん!!!」


鑑三の登場に、アクアと味斗が顔を明るくした。


鑑三もまた、アクアと味斗を見て、ニヤリと笑って見せた。


「久しぶりだな、アクア、味斗!!!」


三人の集結を見て、悪魔は舌打ちをした。


「まさか、鑑三まで来るとはな・・・。これでは十年前と同じじゃないか・・・」


架陰の身体を乗っ取った悪魔は、架陰の目を通して、三人の邪魔者を見た。


桜班総司令官、【アクア】。かつて、アメリカに出現した目次録の獣を討伐したUMAハンターの一人。


椿班総司令官【味斗】。彼もまた、アメリカに出現した目次録の獣を討伐したUMAハンターの一人。


そして、【鑑三】。


彼の再登場が想定外だった。


「貴様・・・、腕は治ったのか?」


悪魔が挑発するように言う。


鑑三はマントを翻し、ツギハギだらけの腕を見せた。


「このとおりだ」


「クククク・・・、十年前、ワシが綺麗に切断してやったと言うのに・・・」


「その頃から、オレは夜行の肉を使って、【回復薬】を作ることを研究していたからな・・・。その技術を応用すれば、貴様に切り落とされた腕など簡単に治った・・・。いまでは、【能力】も使える」


鑑三は、元は、先程悪魔が肉片にしてやった夜行と同じ班のUMAハンターだった。


だが、奈良でモケーレムベンベと呼ばれるUMAの出現により、夜行が謀反を起こし、その責任をとってUMAハンターを辞めた。


隠居して、研究を続けているのかと思えば、まさかこんな所までやってくるとは・・・。


「クククク、長話はもういい」


悪魔は、鋭い爪をバキッと鳴らした。


「ワシの目的はただ一つ。十年前、ワシを殺した貴様らに復讐することだ・・・」


「へえ、復讐ね」


それを聞いた味斗が一歩前に出て、ニヤリと笑った。


「悪魔も随分と肝が小さい奴になっちゃったね。十年前は散々、『世界を闇に沈める』なんてことを言ってたのに・・・」


「口の利き方に気をつけろよ。味斗。ジョセフに簡単に敗れた貴様が、ジョセフを依代にしたワシに勝てると思っているのか?」


「思ってないよ」


あっさりと頷く。


「一つ言わせてもらえれば、君は、十年前より弱くなっているよね?」


「クククク、そうだ」


「そりゃそうだ。十年前は、復讐に囚われたのジョセフを依代にした。でも今回は、復讐に囚われない、心優しき架陰くんを利用している。力が出ないのは歴然としているよ」


「本当にそうか?」


悪魔は黒い手のひらを味斗に翳した。


味斗が身構える。


手のひらの先に、魔影がより集まり、黒い塊と化した。先程、夜行を吹き飛ばしたものと同じものだ。


「ワシが本気を出せば、貴様らを殺すくらいの力はあるんだぞ?」


「参ったね、どうも・・・」


味斗は額に冷や汗を浮かべたまま後頭部を掻いた。


アクア、そして鑑三が味斗の横に立つ。


「味斗、ここは連携といきましょう・・・」


「大丈夫だ。力を合わせれば、悪魔を止められる・・・」


アクア、味斗、そして鑑三は、十年前に悪魔を討伐するために協力した者たちだ。十年経った今でも、その連携の技術の高さは色あせていない。


三人は即興で、陣形を組んだ。


前列に備えるのが、近距離型の能力を持つ【鑑三】。


中列が、中距離型の能力の【アクア】。


そして、後列が、遠距離型の能力を備える【味斗】だった。


その陣形を見て、悪魔は「懐かしいな」と呟いた。


「思い出す。十年前。ワシを殺した陣形だ。最も、あの時は前列にヒカルと風鬼も立っていたがな・・・」


「ああ」


鑑三が身体に力を込める。バキバキの筋肉が隆起して、鑑三の体格が一回り大きくなった。


「お前を倒せる陣形だ・・・」


その言葉を合図に、三人の【市原架陰奪還作戦】及び【悪魔討伐作戦】が開始された。











先陣を切るのは鑑三。


床が砕けんばかりの力で踏み込み、悪魔へと変貌した架陰に近づく。


「消えろ」


悪魔が魔影の塊を放つ。


触れれば、爆弾に匹敵する衝撃波が発生する魔影だ。まともには受けられない。


「能力【蓄積】発動・・・」


鑑三は走りながら能力を発動させた。


飛んでくる魔影の塊に拳を放つ。











ドンッ!!!!











と、衝撃波が放たれるはずだった。


だが、魔影は炸裂することなく、空気に溶け込むようにして消えた。


「何?」


悪魔の声に動揺が混じる。


(ワシの魔影を、相殺した? いや、違うな・・・)


考えている隙に、鑑三が悪魔の懐に潜り込んでいた。


「貰ったぜ。お前の【衝撃】・・・」


その瞬間、先程魔影と接触したはずの右拳を、悪魔の黒光りする筋肉質の腹にねじ込む。


「【衝撃波】!!!!」










ドンッ!!!!











鑑三の大きな掌から放たれた衝撃波が、悪魔を吹き飛ばした。


「っ!?」


「オレの能力は、【蓄積】。空間上に発生する運動能力を、任意の量、別の物質に蓄積することができるんだ。ちなみに、今、貴様の衝撃波は、オレの筋肉に蓄積しておいた・・・」










第53話に続く

【火村味斗】・・・椿班総司令官の男。アクアとは同期であり、共に世界を救った一員である。このことについては、いずれ【UMAハンターヒカル】の方で書く予定。


能力は【味】の実態化である。例えば、フリスクのような辛いものを舌に当てると、舌がそれを「熱」として認識し、炎に変換する。つまり、火炎を吐くことが可能。

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