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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
162/530

魔影・陸式 その②

復讐は復讐を呼ぶ


囚われたのではない


魅入られたのだ


血の弾ける復讐に


2


(身体が、言うことを聞かない!?)


架陰の足が、架陰の命令を無視して前に出た。


架陰の手が、架陰の命令を無視して刀を拾い上げる。


架陰の目が、架陰の命令を無視して夜行の方を見た。


身体が、勝手に動いている。


(どういうことだ!?)


感覚は残っているようで、背筋にゾワゾワとしたものが走った。


悪魔の声が耳に響く。


「くくく、お前の身体は乗っ取らせて貰った。今お前の身体はワシが動かしているんだよ・・・」


どういう意味か?


説明よりも先に、動いた方が早かった。


悪魔に操られた架陰の身体は、夜行の首筋に名刀・赫夜の刃を当てた。


思い切り引くと、首が切断される。


夜行の生首は、一度床の上で跳ねてから転がって止まった。


恨みに満ちた目が、様子のおかしい架陰を見上げる。


「てめぇ、まさか・・・」


「ああ、そのまさかだよ」


架陰の声をした悪魔は、ニヤッと笑った。


その瞬間、架陰の身体に変化が訪れた。


「魔影・・・、陸式・・・」


体表だけでなく、地面から、空気中から、大量の魔影が溢れ出し、架陰の身体を覆う。


架陰は、黒い繭のような姿になった。


(これは・・・!?)


「こいつが、【魔影】の最終形態だ」


架陰の身体に纒わりついた魔影が姿を変えていく。


パキパキと皮膚表面が変化して、闇色の、爬虫類質の皮膚に変わる。


頭から、悪魔の角が生える。


肩甲骨辺りの皮膚を突き破り、コウモリの翼を模した悪魔の翼が生える。


まるで甲冑を身にまとったかのように、架陰の顔以外が、悪魔の身体へと変貌した。爪は鋭く、眼球は充血して、鱗のような皮膚が黒光りする。


「仮の姿だが、マシだな・・・」


悪魔は、架陰を依代として、実体化したのだった。


指の関節をパキパキと鳴らし、身体の調子を確認する。


指先に力を込めると、魔影が集まってきて、黒い塊を作った。


「魔影陸式になると、魔影は、ほぼ無限に作り出せる。ワシだからできることだな・・・」


そう言うと、その魔影の塊を夜行にぶつける。










ドンッ!!!!











衝撃波が夜行を穿ち、夜行の身体が粉々に吹き飛んだ。


残った生首を、悪魔の足で踏みつける。


頭蓋が生卵のように割れ、中からピンク色の脳みそが飛び散った。


「さあて、邪魔者は消えた・・・」


眼球を赤く染め上げ、人間の生気を失った架陰は、首を動かして、斜め上を見上げた。


あの観客席からこちらを見ている、包帯男と、侍姿の男。


あの二人を、とりあえず殺すとしよう。


すると、侍姿の男が包帯男に耳打ちしているのに気づいた。


そして、侍姿の男だけが走り出し、どこかへと消えていった。


(なんだ・・・?)


架陰の身体を操る悪魔は、ペロリと頬に飛び散った夜行の血液を舐めた。


(まあいい、とりあえず殺す)


そう思い、あの包帯男の所まで跳躍しようとした。


その時。


「架陰!!!」


戦場の奥の扉が勢いよく開いた。


二人分の足音が聞こえたかと思うと、架陰の前に、桜班総司令官のアクアと、椿班総司令官の味斗が入ってきた。


二人とも、この惨状を見て困惑の色を浮かべた。


「辺りのものが破壊されている・・・!?」


「まさか、架陰くんがやったのか?」


「そうだよ」


架陰の身体を通して、悪魔は言ってやった。


興味が、あの包帯男から、アクアと味斗へと移り変わる。


やっと会うことができた。


十年前、自分を倒したUMAハンターに。


首から下を悪魔へと変化させた架陰を見て、アクアと味斗は、一瞬で察した。


「あなた、架陰じゃないわね・・・」


「この気配・・・、まさか、十年前の!!」


察しがいい。


悪魔は、ニンマリと笑った。


「久しぶりだな。アクアに、味斗。今日は、ヒカルと風鬼はいないのか?」


「やっぱり、あなた、悪魔ね!!」


「ああ、十年ぶりに、復活したぞ・・・」


悪魔は、架陰の身体を操り、ゴキゴキと首の骨を鳴らした。


その音に、アクアと味斗が身構える。


悪魔は失笑した。


「さあて、続きと行こうじゃないか。十年前の、【目次録の再臨】の続きだ」


「っ!!」


アクアが奥歯を噛み締める。


「まさか、十年前に私たちが討伐した悪魔の魂が、架陰の魂に取り憑いていたなんて・・・」


「くくく、気づいていなかったのか・・・」


悪魔が手のひらに力を込めると、シャキッと爪が伸び、三十センチ程の刀剣のような形に変化した。


「どうする? このまま、架陰諸共ワシを殺すか? まあ、十年前、ヒカルと風鬼、平泉と、アクア、そして、味斗の五人でやっと殺せたワシだ。二人で、なにかできるとは思わんがな・・・」


その瞬間、アクアと味斗の背後で、扉が開く音がした。


何者かが飛び込んでくる。


「ふっ、オレもいるぞ・・・」


アクアと味斗の前に、助っ人としてやってきたのは、大柄の男だった。筋肉隆々で、獣のような目がぎらりと光る。


その姿を見て、アクアと味斗の顔が見るからに明るくなった。


「鑑三さん!!!」








かつて【最強】の称号を得たUMAハンターが、かつて【世界を救った】UMAハンターたちの前に、現れたのだった。













その③に続く

その③に続く

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