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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
160/530

悪魔大翼 その③

魂は不滅だ


そう言った貴方の残像は


春風に吹かれて


跡形もなく消えてしまった


残された私は


喉の奥に残る熱を頼りに


墓場で貴方の面影を探す

3


「じゃあ、見せてあげるよ・・・」


架陰が漆黒の魔影刀を構える。


「僕の必殺技を・・・」


夢の中で、悪魔とあの男に教えて貰ったことだ。


【魔影・参式】は、弐式の時の二倍の量の魔影を発生させることが出来ると。


二倍の魔影を発生させるということはつまり、同時に、二種類の形態を発動させることが出来る。


先程までの架陰は、脚と刀に魔影を纏わせていた。


【魔影刀】+【魔影脚】だ。


圧倒的破壊力を保持したまま、圧倒的機動力で、夜行を圧倒する。


だが、その夜行も、架陰の動きに慣れてきたようだ。何度も、架陰の隙を突いた攻撃を仕掛けてくる。


もう、この小細工は、通用しないと悟った。


「ならば、必殺技で叩くのみ!!」


簡単なことだ。


力の全てを、攻撃に振るのだ。


「【魔影刀】!!!」


架陰の脚から離れた漆黒のオーラが、魔影刀に纒わり付く。全ての魔影を受けた名刀・赫夜は、巨大な大剣と化した。


「・・・っ!!」


夜行の背中を、ザワりとしたものが舐める。


鳥肌がたった。


(ちくしょう・・・、人間味がある真似してんじゃねぇよ)


夜行は自分にそう言い聞かせると、床を蹴って架陰から距離を取った。


(さしずめ、架陰は、あのバカでかい刀で、一撃で決めようとしてくるはずだ)


あの刀の衝撃波を喰らえば、流石の夜行も、生きている自信がなかった。


(だが、架陰。その形態には致命的な欠点があるぜ・・・)


架陰は、攻撃に全神経を集中させれば勝てると思っている。


逆だ。


攻撃に集中し過ぎれば、防御が散漫になる。


まず、架陰の、参式の魔影を全て纏わせたあの刃は、不完全の形だった。


(刀身がデカすぎて、鋒にまで神経が集中できてない・・・。刃先が揺らいでいるのがその証拠だ。あれじゃあ、例え命中しても、真の衝撃波は発生しない・・・)


架陰の魔影は、イメージが全てだ。


イメージ次第で、魔影の形は変わる。イメージ次第で、魔影の硬度も変わる。


架陰の刀に魔影を纏わせた時、何故魔影が刃の形に変形するのかと言えば、そこに、【刀】のイメージがあるからだ。【斬るもの】というイメージがあるからだ。


そのため、何も無い場所に魔影を固定して、刀の形にすることは至難の業。なぜなら、そこには【刃】も、【斬るもの】というイメージも存在しない。


【何も無い】というイメージが先行するのだ。


(そんなこと、100も承知・・・)


架陰は歯を食いしばり、ただひたすらに集中する。


架陰の集中の度合いを体現するかの如く、魔影刀の刀身が揺らいだり、硬化したりする。


「いま、僕がイメージするべきは、夜行を倒した時の光景と・・・、【飛ぶ斬撃】だ!!!」


架陰は一度、ある実験をしたことがある。


魔影が、どこまで飛ばすことが出来るのか。についてだ。


アクアの【水】の能力にも、半径10メートルという射程距離が存在する。


架陰の【魔影】の射程距離は、20メートルだった。それを超えれば、魔影は、消え失せる。


男は言っていた。


「イメージが足りないだけだ。イメージをもっと強く持てば、君の魔影は、どこまでも飛んでいく・・・!!」
















「行くぞ!!!」


今だ。今が、最高潮の集中の時。


「僕の!! 必殺技!!!」


上体を捻り、腰から背骨にかけての全関節に力を溜める。響也の【死踏】の応用だ。


それはまるで、目に見えぬエネルギーを前方に飛ばすように。


それはまるで、目の前の獲物を既に仕留めたように。


準備から実行。そして、結果に至るまでの動作を全て想像して、まるで線をなぞるかのように、関節を稼働させ、筋肉を収縮させる。


空中に、白い線のようなものが見え、それに沿って、架陰は刀を振った。










「【悪魔大翼(あくまたいよく)】!!!!!」











振り切った刀から、漆黒の斬撃が飛ばされた。


それはまるで、悪魔の翼のような形で、床を抉り、轟轟と音を立てて夜行に迫る。


「これはっ!?」


あまりにもの巨大な刃に、夜行は躱すことも、防御することも出来なかった。


黒い斬撃が、夜行の身体を飲み込む。


「ぐああああああああぁぁぁあああああぁああああああああああああぁぁぁあぁあああああぁああああああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああああぁぁぁ!!!!!!!」


地響きが轟く。


夜行の断末魔の叫びが響く。


斬撃が通った後には、まるで峡谷のような傷が残り、建物全体を揺らした。


そして、黒い斬撃が消えた時、そこに夜行の姿は無かった。


散り散りの肉片になるまで、消し飛ばされたのだ。


「はあ・・・、はあ・・・」


架陰は、腕をだらんと垂らす。


全力で放った一撃だ。もう、腕が動かない。


「どうだ・・・?」


夜行は死んだのか・・・。


これで殺りきれなかったら困る。


魔影参式の反動で、もう、戦う気力は、残っていないのだ。









その瞬間、前方に積み上げられた瓦礫が、ガタリと動いた。











第52話に続く

【悪魔大翼】・・・架陰の必殺技。魔影参式の力を全て刀に集中させ、振った時の勢いで、斬撃の形にして飛ばす。

刃を離れた魔影は形を崩しやすいので、かなりの集中力が必要。全神経を注ぐので、放った後はかなり体力を消耗する。弐式では、魔影の量が少ないので発動不可である。

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