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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
156/530

魔影・参式 その②

囁きには騙されず


月光の照らす輪郭を


この目で見据える時までは

2


「つまんねぇの」


架陰の心臓を握りつぶした夜行は、一言、そう言った。


架陰から手を引き抜いた瞬間、架陰はぐらっとバランスを崩し、仰向けに倒れ込む。


胸の穴から大量の血液が流れ落ち、喉の奥からはかすれるようなうめき声が漏れた。


(ああ、こいつ、もうすぐ死ぬな・・・)


なかなか手応えのある戦いではあった。自分の【不死】の特性と、剣の【獄炎】の能力、そして、【呪】の能力を目の当たりにして、なかなか粘った。


だが、自分を倒すには至らなかった。


まるで最初は面白かった小説が、納得の行かないラストを迎えたような気分になった。


二人の戦いを観客席で見ていた鬼丸が声を荒らげた。


「お前!! 殺すなと言ったはずだぞ!!」


「ああ、すんません」


夜行はヘラッと謝る。もちろん、誠意など一ミリもこもっていなかった。


(こんな雑魚に、「殺すな」って言う方が難しいぜ・・・)


夜行は、奴らの仲間ではない。奴らに死体を回収され、勝手に蘇らされたのだ。そのため、彼ら悪魔の堕慧児の計画が狂ったところで、夜行には痛くも痒くもなかった。


「だが、楽しかったぜ」


しばしの愉悦感を味わったのは事実だ。


血肉が粉砕し、飛び散る戦いは、十年ぶりだった。最も、夜行が生きてきた百年間に比べたら短い年月であった。


「さあて、次はどうするかな・・・」


夜行は手に着いた架陰の血液をべろべろと舐めた。


外に出て、暴れ回るのもいい。あの気に入らない包帯男を殺すのもいい。いや、ここにいる悪魔の堕慧児全員を虐殺するのもいい。


なんたって、自分は不死身だ。身体は一つでも、兵力は何万何億とあった。


そう考えついて、自分を見ている奴らに身体を向けた、その時だ。









「あ?」


夜行は、足元に転がる架陰の死体の気配が変わったことに気がついた。


まるで逆再生のように、流れ出た血液が架陰の身体の中に戻っていく。そして、架陰の胸の穴が、ザワザワと塞がった。


「・・・!?」


再生した。


心臓諸共、再生した。


(回復薬の効果がまだ続いていたのか?)


ありえない話ではない。回復薬には夜行の細胞が利用されているからだ。


だが、絶命したというのに、身体が再生するのはどういうことだ。


(まさか、悪魔たちが、架陰に手助けをしている?)


これもまた、ありえない話ではなかった。


架陰の精神の中に取り憑くのは、十年前、アメリカのエリア51で大暴れした、【悪魔】と、悪魔の依代となった人間、【ジョセフ】という名のメン・イン・ブラック捜査官。


悪魔の能力と、男の能力があれば、均衡を保ちつつ、架陰の身体を悪魔並みの再生能力に引き上げることもできる。


この二人が、架陰に手を貸している。


それが結論だ。


「なるほどね・・・」


夜行は笑った。


身体中の関節が震える。武者震いだった。


今から、死なない夜行は、死を見る戦いをする。これこそが、夜行が望んだことだった。


架陰は、フラフラと立ち上がった。


そして、虚ろな目をしたまま、自分の胸に触れる。


「・・・、凄いな・・・、完全に塞がっている・・・」


「超速再生・・・。どっちが化け物か分からねぇよな。ひひひひひ・・・」


挑発のつもりだったが、架陰は気にすることなく、夜行を見据えた。


傍らに落ちていた名刀・赫夜を拾い上げる。


「・・・、行こう。赫夜・・・」


血が飛び散ってぬめった柄を着物の袖で拭い、手のひらの指紋にくい込ませるように握る。


「耐えてくれよ・・・」


「耐えろだ?」


夜行はまた架陰を挑発した。


「まさかお前、さっきの魔影よりも強い力を出すつもりか? ひひひひひ。自分の刀が、能力の勢いで折れることを想像してんのか・・・。ひひひひひ」


「その通りだよ」


架陰は夜行を見つめたまま頷く。


「最も、この名刀・赫夜が折れるとは思わないけどね・・・」


「そうか・・・」


夜行は調子が狂わされた。


まるで別人だった。


死ぬ前と、死んだ後。目にやどった、恐怖だとか、同情だとかが消え失せ、ただ純粋の殺意だけが自分の身体を刺す。


油断は出来なかった。


「まあいい。また殺すだけさ」


夜行もまた、【地を這い仰ぎ見る黒狼の脊椎】の柄を握りしめ、切っ先を架陰に向ける。


架陰は切れた頬を伝う血液をぺろりと舐めた。


「さあ、決着をつけようか!!」


能力を発動させる。


「【魔影】・・・」


架陰の能力は、力の調整をすることが出来る。


壱式は、動体視力の向上。


弐式は、動体視力に攻撃力の上昇。


ならば、【参】はどうなのか。


「【参式】!!!」


次の瞬間、架陰の体表から、漆黒のオーラが湧き出した。


夜行はその様子を見て、「なんだ、弐式と変わらねぇじゃん」と思った。


違った。


「っ!?」


違う。


確かに、架陰の身体から湧き出した魔影は、弐式と同じだ。だが、量が、明らかに違った。


弐の、二倍は、あるであろう魔影が、湧き出したのだ。












「魔影・参式は、弐式の二倍量の魔影を発生させる!!!」












その③に続く




その③に続く

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