表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
155/530

【第50話】魔影・参式 その①

進化をせぬ者は滅びる


大地の神はそう言った


湖畔で冷えた風が私の頬を撫で


土の香が鼻を掠める


祈るのだ


祈り合うのだ


我々の魂は不変であると


祈るのだ


祈り合うのだ


例え姿が変わろうと


心の臓はこの胸の中にあるのだと

1


「これが、君の過去の全てだ・・・」


架陰の精神の中で、スーツを着た男は架陰の過去の説明を終えた。


「いえ、まだ分からないところがあります・・・」


架陰は首を横に振った。


架陰は、このスーツ姿の男から全てを聞いた。


自分に取り憑いたのは、十年前の【目次録の再臨】という事件で討伐された、【悪魔】の精神だと。そして、この【魔影】の能力は、悪魔によるものだと。


悪魔の細胞は、【DVLウイルス】となって拡散して、無能力者と、【悪魔の堕慧児】を作り上げたと。








だが、納得行かない部分が山ほどあった。


まず、架陰の目の前に立ち、架陰の過去を語った男は、「人間の姿」をしているということだ。外国人特有の金色の瞳に、外国人特有の高身長。外国人特有の彫りの深い顔立ちに、外国人特有の髪色。


悪魔の要素が、ひとつも無い。


そして、この男の背後に控える、「まるで悪魔のような怪物」だ。体表は赤っぽい緑で、爬虫類質の皮膚が堅牢に蠢く。頭はティラノサウルスのように平たく、裂けた口から鋭い牙が顔を覗かせている。


架陰は、スーツ姿の男に言った。


「あなたは一体、誰なんですか?」


普通に考えて、悪魔は、このスーツ姿の男の背後の怪物と見るべきだ。では、架陰の精神の中に住み着き、架陰の味方をしようとするこの男は、一体何者なのか。


スーツ姿の男は、ふっとため息をついた。


「まず、大前提となるのが、【悪魔は実体が無い】ということだよ・・・」


「実体が、無い?」


「ああ、つまり、存在しないんだ」


「存在しない?」


「存在しないとは語弊があるね。悪魔は、肉体を持たない。つまり、【精神上のUMA】なんだよ」


精神上?


つまり、現実世界に存在するのではなく、人々の心の中に生息するということか?


「悪魔は、心の中に生息する。そして、周りの者を破壊する時は、【取り憑いた相手を操る】必要があるんだ・・・」


「・・・、操る?」


スーツ姿の男が、架陰に顔を寄せた。


声を潜めるようにして語る。


「先程、僕は【目次録の再臨】のことについて話したね。十年前、アメリカのエリア51上空で、【目次録の獣】が暴れたという事件だ・・・。不思議だとは思わないか?」


「悪魔は、精神上のUMAなのに・・・」


「ああ、普通に考えて、悪魔が実体化するのはありえない。なぜなら、奴らには身体が存在しないからだ」


スーツ姿の謎の男の話は、いよいよ核心に迫り始めていた。


「僕はね、十年前、悪魔に取り憑かれた人間なんだよ・・・」


「に、人間・・・」


「ああ。悪魔が君に取り憑く以前、奴は僕にとり憑いていた。そして、僕の身体を【依代】として、実体化した。つまり、僕の身体が【目次録の獣】へと変貌したんだ・・・。そして、十年前、僕はUMAハンター達に討伐された。それから悪魔は再び精神上の存在となって彷徨うことになったけど、そこに僕の精神までもがくっついてしまってね・・・。僕と悪魔は、精神同士で融合してしまったんだ・・・」


架陰の心の中には、一人と一匹が住み着いていた。


一人は、悪魔の依代となり、悪魔諸共討伐されてしまった男の魂。


もう一匹は、男を依代として、世界を滅ぼそうとした悪魔の魂。


二つの魂が、十年間、架陰の心の中に、住み着いていた。


「君が使っている【魔影】の能力だけど、あれもまた、【悪魔】の能力と、僕自身の能力、【影】が合わさってできたものだ・・・。あの能力のおかげで、僕は悪魔の力を抑制していたんだ・・・」


「・・・・・・」


架陰は口を一文字に結び、男の話を聞いていた。


やっと、わかった気がした。自分の生まれてきた理由が。自分の生きていく理由が。


「オイ、ハナシハオワッタカ?」


男の後ろで両腕を組んでいた悪魔が口を開いた。


「オマエガ戦ウ気ガナイナラ、ワシガオマエノ精神ヲノットッテ、戦ッテモイインダゾ?」


「悪魔、悪いけど、架陰の身体は渡さない。君は僕と架陰に協力するんだ・・・」


「ククク、ジョセフ・・・、オマエモ、ナカナカ丸クナッタヨナア・・・」


悪魔がゆっくりと暗闇を歩いて、ジョセフと呼ばれた男に近づいた。そして、三本の鋭い爪を持ち合わせた手を、ジョセフに翳す。


「シクジレバ、スグニ殺ス」


ジョセフもまた、人間の手のひらを悪魔に翳した。


二人は、手を合わせる。


「架陰、頼む。夜行を倒してくれ・・・」


「夜行ハ、アワレナ男ダ・・・、十年前モヤツラニ殺サレテオキナガラ・・・」


悪魔と人間。二人の魂が融合して、架陰の能力となる。


架陰の胸に、二人の力が流れ込んできた。冷たくも暖かい。暖かいけど、冷たい。悲しみとか喜びとかが同時にやってきて、自分がどんな顔をしているのか、どんな感情になっているのか、分からなくなった。


「頼んだよ。架陰。君は、必ず強くなれる。その力を、必ず使いこなすんだ・・・」
















「【魔影】・・・、【参式】を!!」










その②に続く

その②に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ