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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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番外編【市原架陰外伝】その④

どれだけ世界を憎もうと


どれだけ世界に憎まれようと


「死にたい」とは思わなかった


ああ


僕が「身勝手な人間」第一号なのだろう

その日は、鉄平くんの誕生日だった。


僕が育った月の子児童施設では、誕生日の人は全員で祝うというのが決まりだった。だけど、僕はやはり、光と、人の暖かな心が苦手で、あの暗くてジメジメとした倉庫から出ることが出来なかった。


鉄平くんは、「それでもいい」と言ってくれた。


「それでもいい。オレはあいつらに祝われるよりも、お前に祝われた方が、百倍嬉しいんだぜ!!」


鉄平くんも、僕と同じで、他のみんなが苦手な人だった。


なんでも、クリスマスツリーの靴下に入れられたプレゼントをめちゃくちゃにした犯人にされたのだという。


鉄平くんは、人間不信だった。でも、僕のことは信じてくれた。


「架陰、オレは明日、誕生日会が終わったらお前のところに行く。お前は、オレの誕生日を精一杯祝え!!」


僕もそのつもりだった。


僕と心を分かちあった人の、生誕祭を、心の底から祝ってあげたいと思ったんだ。


だからその日も、倉庫で待っていた。彼が来るのを。


気だるげなハッピーバースデーの歌声が聞こえた。とても微かな声だったけれど、今、鉄平くんがどんな顔をして祝われているのか、想像は容易かった。


もう少し、もう少しで鉄平くんが来る。


そう思っていた矢先、僕の隠れた倉庫には、鉄平くんでは無い者が入ってきた。


それは、人間ですらなかった。


人の形を成していない。黒い煙のようなものが、倉庫の壁をすり抜け、うねうねとしながら、僕に近づいてきた。


「アア、ヤットミツケタ、ワシノ依代ニナル少年ヲ・・・」


そいつは、ボロボロになった悪魔だった。


今から10年前。つまり、僕が、死にかけた悪魔に出会った日、アメリカのエリア51という場所で、とある事件が起こったのだという。










その悪魔は、「目次録の獣」という姿に変貌して、アメリカのエリア51の上空に姿を現した。そして、辺り一帯を獄炎で焼き尽くした。


それを止めにやってきたのが、日野光、宝来風鬼、火村味斗、アクア・サブリネ、平泉良の五人。後に、「世界を救った子供」と呼ばれるUMAハンターだった。


死闘の末、目次録の獣(悪魔)は、討伐された。


消滅したかに思われた悪魔は、何億もの微粒子に分裂して、世界中に蔓延した。


これが、【DVLウイルス】。つまり、【デビルウイルス】だ。


このウイルスは、生物に感染すると、突然変異を促す。世界中にUMAが大量発生したのはこのウイルスのせいだ。


時としてこのウイルスは、人間にも危害を加える。人間の突然変異を促し、半分人間、半分UMAとなる、【悪魔の堕慧児】を生み出した。










だが、DVLウイルスは、目次録の獣のほんの一部分に過ぎない。


簡単に言えば、悪魔は三つに別れたのだ。


【DVLウイルス】


【精神】


そして、【肉体】の三つに。


クロナさんや響也さん、カレンさんと言った現役UMAハンターには、【DVLウイルス】が感染して、能力者としての素質を奪う。対して、笹倉や、唐草、狂華、女郎に感染したDVLウイルスは、突然変異を促し、悪魔の堕慧児に変貌させた。


そして、【精神】に取り憑かれたのが、この僕。市原架陰だった。










「ヤットミツケタ。ワシノ、アラタナカラダ・・・」


ボロボロの悪魔は、暗闇の中で壊れた僕の心の中に侵入してきた。


たちまち、僕は心を奪われた。


フラフラと立ち上がり、倉庫から出た。蛍光灯の光が差し込み僕の目を焼いた。でも、力を込め、カッと見開く。


僕は生まれて初めて色を見た赤子のように、その場に立ち尽くした。


僕の中に入り込んで来た悪魔は、直ぐに僕の魂と混じり合い、よく馴染んだ。


僕は、悪魔とひとつになったんだ。











悪魔の目的はこうだった。


僕に取り憑き、時が来るまで、僕の中で力を元に戻す。そして、自らを殺したUMAハンター達に復讐をするのだ。


僕の記憶がプツンと、消えた。親に虐待されたことも、鉄平くんと心を通わせたことも。


まるで溶け込むようにして、施設の子供たちに紛れ込み、里親が見つかるまで、じっと息を潜めた。鉄平くんはきっと、あの中にいたのだろうけど、倉庫の中、暗闇の中、互いの顔を知らない僕達は、交わることは無かった。


そして、里親が見つかると、外の世界へと飛び出した。












十年後、僕はUMAに出会った。


鬼蜘蛛は、オニグモにDVLウイルスが感染して巨大化した姿だった。鬼蜘蛛の細胞は、僕の中に宿った悪魔の能力を目覚めさせた。


それが、【魔影】だったのだ。


皮肉なことに、運命は必然を装い、偶然として僕をUMAハンターになるように仕向けた。そして、仇であるアクアさんに出会った。











僕のこの人生は、全て悪魔の手のひらの上。













魔影は、負の力だ。絶望が深ければ深いほど、威力を発揮する。


僕は、今、新たな力を手にした。


目の前に立ち塞がる、夜行を殺すため、凶刃を振るう。











【魔影】・【参式】だ。



第50話に続く

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