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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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番外編【市原架陰外伝】第二章 その①

僕の記憶を返すと言われても


「ふーん」程度の感想しか抱かなかった


僕は幸せなんだよ


このぬるま湯のような人生が・・・

僕の中に住み着く男が言うには、僕は幼い頃の記憶を失っているらしい。


まあ、記憶を失っているからと言って、「返せよ!!」だとか、「僕の過去は、何なんだっ!?」なんて言って取り乱したりはしない。


だってそうだろう?


記憶が無いんだ。その記憶が、どれだけ「いい記憶」だろうが、「悪い記憶」だろうが、忘れている以上、惜しいともなんとも思わない。


だから、僕はこの十七年間、何の違和感もなく、生きてくることが出来たんだ。










正直、あの男が「今から君の記憶を返す」と言っても、「ああ、そうなのか・・・」くらいの感想しか抱かなかった。


思い出したい気持ちがゼロでは無い。少しは気になる。僕がどんな親から生まれたのか、どんな人生を送ってきたのか。だけど、全て「今更」なのだ。


今更、過去のことを思い出しても・・・。


僕は十分幸せなんだ。僕の周りには、クロナさんがいて、響也さんがいて、カレンさん、アクアさん、あと、鉄平くんが居る。


みんな、僕の大切な仲間だ。僕が、UMAと戦う中で手に入れた、大切な記憶の一部だ。


それに、僕が忘れてしまった過去を入れて、どうなるだろうか?


本能的にわかっているんだ。きっと、凄い化学反応が起きると。この10年で作り上げた僕は僕という人格に、亀裂が入るような感覚がして、怖いんだ。


だけど、男は言う。


「この境地を脱するには、君の記憶を思い出す必要がある」と。


だから、僕は男の話を受け入れる。


分からないんだ。僕の記憶を思い出すのと、思い出さないの。そのどちらも、僕にとっていいことに転ぶのか悪いことに転ぶのか。


分からない。


だから、僕が信頼する、あなたの声を聞くんだ。

















僕は、薄暗い部屋で目を開けた。


そこには、母さんがいた。赤子ながらに、みすぼらしい格好をしているな、と思った。


髪の毛はボサボサに乱れ、眼球は光を失っていどこを見ているのか分からない。


鼻を突くような嫌な臭いが漂い、先程飲んだミルクが喉から込み上げるような気がした。僕は赤子だからな、ミルクなんか吐いたら、窒息して死んでしまう。


母さんは、ボソボソと何かを口にしていた。


「もう、無理よ・・・、もう無理。もう無理・・・」


そして、僕に、手を伸ばしてきた。


伸びきった爪は、僕の喉元に深く食いこんだ。かりんとうみたいに薄汚れ、固くなった指が、僕の息の根を止めようと締め付けてくる。


「あんたなんか・・・、産むんじゃなかった・・・」


母さんはそう言った。


はい、頂きました。「あんたなんか産むんじゃなかった」。この一言で、僕は「不必要なのだ」と実感した。


だから、思い出したくなかったんだよ。


これでいいだろう? 僕は愛されていなかった。必要とされていなかった。あの一言で、僕が失ってしまった記憶の全て、説明がつくんだよ。


だから、もう、やめておくれよ。










そう懇願するのに、男は、僕に過去の映像を見せ続けた。












僕が死ぬ寸前、母さんはハッとして手を離した。


そして、洗濯物やら、カップラーメンのゴミが散乱する部屋を見渡し、そして、僕を見た。


「・・・、ごめん・・・」


そう言って謝られた。


これには僕も拍子抜けだ。育てる覚悟もないのに子供を産んで、殺す覚悟もないのに首を絞める。


育てる覚悟も殺す覚悟も中途半端に持ち合わせているから、結局中途半端に僕に手を上げるんだ。


僕の身にもなってくれ。何度も殺される苦痛と恐怖を感じる僕を。


まあ、母さんが恐怖を感じていなかったとは思っていないよ。多分、母さんも、僕と同じ、僕以上に怖がっていたんだ。


それから、父さんが帰ってきた。


母さんは、「お仕事お疲れ様」なんて言うはずもなく、「金は、どうしたの?」と、怪訝な目を父さんに向けた。


父さんは、「ああ?」と言って、買ってきた一升瓶を床に置いた。


「全部スったよ」


「あんた、それで仕事を探してくるって言ったじゃない・・・」


母さんは泣きそうだった。


父さんは猪口に注いだ酒を、母さんに引っ掛けた。


「うるせぇ。あの馬が悪いんだ。雨に弱いんだよ。ああクソ、腹が立つ・・・」


母さんは、目を抑えて泣いていた。苦しみと悲しみ、恐怖。そして、酒が間に入った時の激痛に耐えて、泣いていた。


まだ立ち上がることも出来ない僕は、爆発したように泣き出した。ギャンギャンと、今の自分でも耳を塞ぎたくなるくらいに泣いた。


「うるせぇぞ!!!!」


父さんが一升瓶を床にドンッと置いた。下の階に響かないのかな?


「ああ腹立つ!! そのガキを黙らせろ!!!」


母さんはバスタオルの上に寝転んだ僕を抱き抱えた。


「お願い・・・、泣き止んで・・・。お願い・・・」


当時の僕にそんなこと通用するはずもなく、僕は一層声を荒らげた。


父さんも負けじと声を荒らげる。


「うるせぇうるせぇ!!!!! ったく、誰が産めって言ったんだよ!!!!」










もう、十分だよ。もう、わかったよ。


僕は、疎まれていた。


なのに、僕の走馬灯とも言うべき記憶は、僕の目の前で、カタカタと音を立てながら、続いていった。









その②に続く

その③に続く

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