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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
150/530

死を見る その③

悪魔は太陽を見ていた


身が焦がれようと


あの光の下へ行こうと

3


架陰は一瞬、何が起こったのか分からなかった。


落ち着け、冷静に今の状況を判断せよ。


夜行の右腕が、自分の左胸から突き出ている。その手は真っ赤に染まり、何かを掴んでいる。


血みたいに真っ赤で、ぶよぶよしていて、表面に赤紫の筋のようなものが走っている。


そして、架陰は理解した。


(あ、これ、僕の心臓だ)


夜行は、架陰の心臓を掴み出していたのだ。


そして、次の瞬間には心臓を握りつぶす。


心臓はいとも簡単に潰れ、指の隙間から血液が飛び散った。


「あ・・・」


夜行が腕を引き抜く。


架陰は力が抜け、仰向けに倒れ込んだ。


「あ、あああ、あ、あ、ああああ」


身体が痙攣を始める。


全身に酸素が行き渡らない。


息ができない。


視界が歪む。


火花みたいなものが弾け、平衡感覚を失う。


「あ、あああ、あ、あああ」


今になって、自分は危機的状況なのだと理解した。


いや、危機は既に通り越していた。


「ああ、あ、・・・、あああ、・・・、あ、あ」


架陰の死は、不可避だった。


「あ、あ、あ あああ、あああ」


倒れた架陰を夜行が見下ろしている。


何を言っているのか、分からない。どうせ、「落胆した」だの、「もっと楽しませてくれると思ってた」の類なのだろう。


「あ、あ、・・・、あ」


声すら出なくなる。










『架陰!!! しっかりしろ!!!!』










謎の男の声だけが、はっきりと聞こえた。


『君は死なない!! 頼む!! 死ぬな!!』


「いや、もう、無理でしょ・・・」


心臓を握りつぶされた。あと十秒で、自分は死ぬ。


『死なない!!』


その瞬間、既に死体となりかけている架陰の身体から、魔影が浮き出した。


黒いオーラは、架陰の左胸の傷を塞ぎ、出血を抑える。細かに分裂して、架陰の体内へと入っていく。


(ああ、止血をしてる。血管にも、魔影が纏ってる)


魔影が架陰の血管にまとわりつき、無理やり動かすことで、血液を循環させていた。


薄れかけていた架陰の意識が少し明瞭になる。


でも、無駄なことだ。


架陰の心臓が戻る訳では無い。この応急処置は、苦痛の時間をただ長らえるだけのものだ。


架陰が死ぬことには、変わりが無い。


『死なない死なない!! 君は死なない!!』


男はそう言って、架陰の血液を循環させる。能力酸素が回ることで、また視界がはっきりとする。


『頼む、死ぬな!!!』


死ぬ。


自分は死ぬ。


架陰は目を閉じた。


眠気だ。


眠気がやってきた。


眠気がやってきたということは、死ぬということだ。


『死なない!!』


男は何度も架陰に呼びかけている。


少し、いらだちさえ覚えた。


初めてこの男に出会った時からだ。この男は、いつも架陰に戦うことを強要してきた。架陰に、【魔影】の操作方法を教えた。


「・・・・・・」


『死なないシナナイ!!!』


「・・・・・・」


『架陰カイン!! 』


その時、男の声に異変が起きた。


『死なない死なないシナナイシナナイ!!』


「・・・?」


声が、おかしい。ノイズが入っているような、まるで、二人が話しているような、そんな声になった。


男の声が、動揺した。


『ま、マ、まずい、マズイ!! 二人のフタリノ結びつきが、ムスヒツキガ!!』











その瞬間、架陰は意識を失った。


いや、正確には、命を落とした。









「ここは?」


架陰は暗闇の中に立っていた。覚えのある場所だ。


鬼蜘蛛と戦った時、あの謎の男と出会った場所。あの謎の男が、度々呼び出してくる空間。


架陰の目の前に、一人の男と、一匹の生物が立っていた。


一人は漆黒のスーツに身をまとい、外国人特有の高い鼻。目は金色で、赤みのかかった茶髪をくしくしと掻きむしった。


「ああ、くそ。分離してしまった・・・」


もう一匹の方は、人外の姿をしている。


人型ということに変わりは無いが、体表が爬虫類のような硬質の皮で覆われ、竜のような頭が乗っかっていた。


耳と言うよりも角まで裂けた顎からは、赤黒い舌がチロチロと覗いていた。


背中にはコウモリのような翼が生え、筋肉質の腕には三本の鋭い爪。


細い尻尾が一つの生き物のように蠢いている。


まるで、悪魔のような姿だった。


「クククク・・・、ヤットダ、ヤット、貴様カラ解放サレタ・・・」


架陰は怯えた目で、黒スーツの男と、悪魔のような化け物を交互に見た。


「あ、あなた達は、誰ですか?」


「ごめん、架陰・・・。少し厄介なことになったよ・・・」


黒スーツの男は、架陰に近づき、膝を折って架陰と視線を合わせた。


その後ろで、悪魔のような化け物が鼻を鳴らした。


「厄介ナモノカ、ワシニトッテハ好都合ナンダヨ・・・」


男は首だけで振り向いた。


「そんなことを言うな、悪魔よ。このまま架陰が死ねば、君も死ぬんだぞ・・・」


「死ヌモノカ、ワシハアノ包帯男ニ回収サレル。死ヌノハ貴様ダケダ・・・」


化け物の言葉に、黒スーツ男は呆れたようなため息をついた。


そして、架陰の方を見る。


「この境地を脱するには、君の力をもう一段階上げる必要があるね・・・」


そして、ある提案をした。


「今から、僕が消した君の記憶を返す」


「え?」


「そして、使いこなすんだ。魔影、【参式】を」













番外編【市原架陰外伝】に続く

架陰の能力【魔影】の解説


魔影・壱式・・・身体能力と反射神経が上がる。発動時には、眼球が赤く染まる。架陰はこれを魔影眼と呼んでいる。


魔影・弍式・・・血を触媒として、漆黒のオーラを発生させる。オーラは、物体に触れると衝撃波を発生させる。このオーラの名が魔影である。弍式発動時には、壱式も同時に発動している。


弍式・魔影刀・・・魔影を刃に纏わせたもの。黒い大剣となり、一振で強力な衝撃波を発生させて敵を両断する。


弍式・魔影脚・・・魔影を脚に纏わせたもの。足裏で衝撃波を発生させ、機動力を上げる。強烈な蹴りに応用可能。


弍式・魔影双拳・・・魔影を腕に纏わせたもの。拳で衝撃波を発生させ、強力なパンチを放つことが出来る。だが、バンイップ戦で使用した時は、力加減が上手くいかず、腕の骨粉砕骨折を起こしている。

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