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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第49話】死を見る その①

迫り来る


終焉の時


落ちゆく


月を背に


夜に咲く





1


時は遡る。


地上一階にて、クロナ&真子VS唐草の戦いが始まった頃。


架陰と夜行の戦いも佳境を迎えていた。


「おらあっ!!!」


夜行が床を蹴り、剣を振り回しながら架陰に接近する。









『架陰、来るよ!!』










「はい!」


架陰は名刀・赫夜を下段に構えた。


「魔影・・・、弐式・・・」


架陰の体表から黒いオーラが湧き出し、赫夜の白銀の刃にまとわりついた。


刃が黒で覆われ、一回り大きい刃と化す。


「魔影刀!!」


「ヒヒヒヒ、いいねぇ!!」


架陰が能力を発動させたのを見て、夜行も剣の能力を発動させた。


「【地を這い仰ぎ見る黒狼の脊椎】・・・、【獄炎】!!!」


剣の表面から漆黒の炎が吹き出す。


「またあの炎!!」


架陰は身構えた。


一度食らったため、あの力の恐怖は理解出来ていた。


能力、獄炎。ただの炎を放つのではない。炎は生き物のように動き、対象にまとわりついて肉を焼いてくるのだ。一度炎に捕まれば、脱出は困難・・・。


「喰らえ!! 【獄炎】!!!」


夜行は架陰から距離をとったまま剣を振った。


刃から黒い炎が放たれる。


「かき消す!!」


架陰は魔影刀を振った。










ドンッ!!!











魔影刀から放たれた衝撃波が炎を吹き飛ばす。


視界が開けた瞬間、目の前に夜行が迫っていた。


「っ!?」


「ヒヒヒヒ、炎は陽動だよ!!」










ギンッ!!!










架陰の名刀・赫夜と夜行の剣がぶつかり合った。


火花が弾け、架陰の足が数センチ後退する。


「くっ!!」


「ヒヒヒっ!!」


バランスを崩した架陰に、夜行が剣を切り上げる。


架陰は上体を逸らして紙一重で躱した。


「おせぇ!!」


夜行は身を捩り、架陰の腹に蹴りを入れる。


「がはっ!!」


架陰の身体はあっさりと吹き飛ばされた。


「くそ・・・!!!」


架陰は床に手をついて衝撃を緩和して、数十メートル滑って踏みとどまった。


その瞬間、腹の傷が痛み、血が吹き出した。


「っ!!」


思わず左手で抑える。


その隙を夜行は見逃さなかった。


「【獄炎】!!!!」


剣から黒い炎を放つ。


「くそっ!!」


咄嗟の回避も間に合わず、架陰の身体は獄炎に覆われた。


「ぐああああ!!!」


皮膚が痛む。


息ができない。


「【魔影】!!!」


直ぐに魔影刀を一閃して、獄炎をかき消した。


着物の袖が黒く焦げ、灰となって散る。


「くそ・・・」


架陰はノースリーブとなった着物のまま、赫夜を握り直した。


あの一瞬炎に当てられただけでも、皮膚が焼け爛れ、組織液が滲んでいた。手のひらの皮が剥けているせいで刀を持つのも激痛が走る。


獄炎の能力だけでも恐ろしいのに、夜行はまだ能力を持っていた。


「さあ、止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ」


「また来た!!」


架陰は慌てて耳を塞ぐ。だが、手遅れだった。


身体がビクンッと硬直して、動くことができない。










『架陰!! 彼の言葉を聞くな!!』











(もう聞いちゃいましたよ!!)


これが夜行自身の能力、【呪】だ。


やつの言葉を聞いたものは、その言葉通りのことをしてしまう。


いま、夜行は「止まれ」と架陰に呪いをかけた。


架陰はその呪いのまま、止まってしまったのだ。


「ヒヒヒヒ、動けないだろ?」


夜行はニヤニヤと笑いながら、呪いにかかった架陰に近づいてくる。


架陰は唯一動く目で夜行を睨みつけた。


「ヒヒヒヒ、気に入らねぇな」


夜行は架陰の頬をぺたぺたと触る。そして、一思いに殴りつけた。


ゴキッ!!と鈍い音がして、架陰の右頬の奥歯が折れる。激痛を宿した架陰の身体は、無防備に吹き飛ばされ、硬い床の上に倒れ込んだ。


「・・・、くそ!!」


呪いは、攻撃を受ければ消え去る。


だが、確実に攻撃は被弾する。


「おらぁ、逃げるな逃げるな逃げるな!!!」


「また!?」


背を向けて距離を取ろうとした架陰の背中に、夜行の声が降りかかった。


身体がピクっと止まる。


「ひゃはっ!!」


振り返ると、夜行が迫っていた。


「赫夜!!」









ギンッ!!!










「えっ!? 動いた!」


身体が動いた。防御することが出来た。


「そうか、夜行は、『逃げるな』と言ったから・・・」


架陰は呪いで逃げられなかっただけで、防御はすることができたのだ。


「それで防いだつもりかよ!!」


夜行が片足を上げ、架陰の顎を蹴りつける。


「ぐっ!?」


視界が揺れた。


(まずい、気絶する・・・!!)


「気絶するなするなするなするな!!!」


夜行のその言葉に、直ぐに架陰の視界が明瞭になった。


(これはっ!?)


夜行のひび割れた手が伸びて、架陰の頭を鷲掴みにした。


「この能力は、脳に直接働きかける!!」


ドンッ!!


強い力が加わり、架陰は頭から床に叩きつけられた。


床のタイルが粉砕して、岩盤の亀裂に架陰の頭がめり込む。


(くっそ!!)


架陰は脚に魔影を纏わせた。


(魔影脚!!)


顔をめり込ませたまま、架陰を拘束する夜行の腹に蹴りを入れる。










ドンッ!!!











衝撃波が夜行を吹き飛ばす。


「ヒヒヒヒ・・・」


空中で身をひねり、着地した夜行の腹には、架陰の足型がくっきりとついていた。


「やっぱり、簡単には死なねぇなぁ!!」











その②に続く





その②に続く

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