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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
146/530

暴走 その②

死ぬことは怖くないさ


怖いのは


貴方が天国に行って


私が地獄に堕ちること




2


八坂は一瞬で悟った。


(ああ、死んだな・・・)


あの鬼丸という男は、唐草よりも、笹倉よりも、狂華よりも強い。


分かるのだ。佇まいが、空気が、声帯より発せられるその声が、「私は誰よりも強い」と、八坂の危機回避本能に語りかけている。


だが、自分はこの男に銃口を向けてしまった。


人間は本当に愚かな生き物だと思った。危機回避能力があるのなら、素直にしたがって逃げていれば良かった。だが、響也の首が斬られそうになる様子を見た時、身体が反応してしまったのだ。


衝動と衝動がぶつかり合い、勝ってしまった。「あの人を助けないと」って。


その結末がこれだ。


鬼丸は、遠く離れた場所から刀を振った。それは、NIGHTBREAKERのスコープから見ていたから分かること。


刀から、強力な斬撃が放たれ、反応する暇もなく、自分の肩に直撃した。


あまりにもの斬れ味に、痛みはほとんど感じなかった。斬り落とされた腕は、まるで端からそこにあったかのように、床の上で血を噴出させていた。


こんな中でも、八坂は、「回復薬使って繋げたら、再生するかな?」と思った。


よく、「強者は気配を消すことが出来る」なんて聞くけど、あれは嘘だ。


強ければ強いほど、その場に満ちる威圧感が大きくなって、視覚ではなく本能で認識する。現に、この暗闇の中、刀を構えてこちらに走ってくる鬼丸の気配を、八坂ははっきりと感じていた。


こちらに来るのがわかっているのに、反応が出来ない。


「終わりだ・・・」


耳元で鬼丸がそう言った。


ああ、本当に終わったよ。


八坂は全てを諦めた。さすがに、今日死ぬなんて思っていなかったな。唐突の死は、清々しささえ覚えた。


刃が、八坂の首に食い込む。


カッと首筋が熱くなって、血が吹き出した。


八坂の意識が、糸が切れたように途切れた。










八坂に刀を振るった鬼丸は、小さな舌打ちをした。


「仕損じたか・・・」


八坂は前のめりに倒れ、首と右肩からどくどくと血を流している。だが、まだ生きている。


「申し訳ない・・・」


切腹という言葉がある。大昔の侍たちが、腹に短刀を刺すことだ。だが、それだけでは死ねない。必ず、介錯を必要とする。


首は生物最大の急所。ここを切り落とせば、大体の者が息絶える。


この男も、そうするつもりだった。


一思いに首を刎ね、苦しまずに殺す。


それなのに、刃は中途半端に八坂の首の肉を斬った。


(あの男に刀を振った瞬間、暗闇から三日月型の刃が飛んできて、私の抜刀の邪魔をした・・・)


鬼丸は、横目で響也の方を見た。


(そうか、あの女が邪魔をしたのか。あの女の武器の能力も、さしずめ空間色覚・・・。綺麗に切り落としたつもりだったが、折れても使えるようだな・・・)


鬼丸は、刀を鞘に収めた。


そして、怒りの目を響也に向ける。


「貴様が邪魔をしなければ、この火縄銃の男は楽に死ねたのだ・・・」


暗闇の中の響也は、掠れた声で「ざまあみろ・・・」と言った。


「死なせるつもりは無い。お前らのくだらん死生観を私に押し付けるな・・・」


「万死に値する」


鬼丸は刀を抜いた。


そして、刀に念を込め、先程八坂の腕を切り落とした時のように、何も無い場所へと振り下ろした。


その瞬間、またしても死角から三日月型の刃が飛んできて、鬼丸の腕に食いこんだ。


「っ!?」


それを振り切って、刀を切り上げる。









ザンッ!!!!










鬼丸が放った斬撃は起動を逸らし、蹲る響也の右腕に直撃した。


血飛沫が上がり、響也の右腕がゴトっと床に落ちる。


「・・・、ちっ、防ぎきれなかった・・・」


「貴様も、死を受け入れぬか・・・。楽に死ねたものを・・・」


鬼丸はもう一度刀を構えた。


「右腕を失えば、火縄銃を握ることも、その死神の鎌を握ることも叶わん。そして、身体能力にも制限がかかる・・・」


「・・・、そうだな。出血性ショックで意識が飛びそうだ・・・」


「よく耐えた。だが、もう躱せぬ」


鬼丸が刀を振る。


刃から斬撃が放たれ、身動きの取れない響也に迫る。


響也は必死に考えていた。この状況を打開する術を。


(あの男は、何故斬撃を放てる・・・?)


架陰だって能力を発動した時は、斬撃紛いのものを放っている。だが、射程距離は限られている。この男の刃から放たれるのは、明らかに「飛ぶ刃」。


(ダメだ・・・、思考が定まらない・・・)


躱せない。


響也は強く目を閉じた。


その瞬間、響也の左腕を誰かが強く引っ張った。


「えっ!?」









ドンッ!!!!










響也が蹲っていた床が斬撃でぱっくりと割れた。


誰が自分を助けてくれたのか。


響也は理解出来ぬまま、気を失った。失血性ショックだった。


鬼丸が目を細める。


「次々と、邪魔者が・・・」









その③に続く

その③に続く

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