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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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死神の鎌 その③

死を司る神が故に死神か


死を恐れる神が故に死神か


そのどちらでもない私は


三日月のような鎌を湖畔に映す

3


地下一階に立ち塞がった笹倉の相手を、カレン達に任せた、響也、八坂、アクア、味斗は、鉄の階段を使って地下二階へと降りた。


「さあて、次は誰が来るかな!」


響也が若干期待した声で、階段を駆け下り、鉄の重たい扉を押す。


「ん?」


扉が少し開いただけで、その隙間から、甘い匂いが漂ってきて、一行の鼻を掠めた。


「これは、花の香り?」


響也は力を込め、扉を開け放った。


その先に待ち構えていた光景を見て、思わず「うわぁ」と感嘆の声を漏らす。


唐草、笹倉と同様に、そこには広大な部屋が広がっていた。床には土が敷き詰められ、赤、青、ピンク、黄色、この世界の全ての色を網羅したように、名前も分からない花々が咲き乱れていた。


「なんだ、これ・・・」


八坂は赤スーツの袖で鼻を押さえた。


「甘ったるくてクラクラしますよ」


「そうだな・・・」


響也も着物の袖で鼻と口を覆った。


ここまで花が咲き乱れ、香りを撒き散らしていたら、良い匂いは悪臭へと変わる。頭痛さえ催した。


(まさか、何かの毒ガスとかじゃないだろうな・・・)


四人は、警戒しながら、花畑の中へと足を踏み入れた。


「ようこそ!! 侵入者!!!」


女の声が響き渡った。


どこからともなく風が吹き付ける。花弁を舞い上がらせ、四人の視界を奪った。


「くっ!!」


風が止み、目を開けた時、二十メートル程先に、女が立っていた。


この花畑にふさわしい格好だ。


金銀赤青の花々があしらった着物を見にまとい、長く黒い髪を舞子のようにまとめている。


これから戦闘をするにはふさわしくない、花魁のような格好。


金色の簪の装飾が「シャランッ」と心地よい音を立てた。


「貴女方の相手は、悪魔の堕慧児の一人、【狂華】がお相手致します」


「きょうか?」


響也はゆっくりと足を踏み出した。


拍子抜けだ。一階、地下一階と、男が相手だったのに、最後の相手が、まさかこんな女だとは思わなかった。


自らを狂華と名乗った女は、大きな目で響也を見た。そして、大袈裟に頬をふくらませた。


「拍子抜けね。私のお相手が誰かと思えば、女の子じゃない・・・」


「あ?」


響也は眉間に皺を寄せた。


「女じゃ悪いか? お前も女だろう。いい勝負といこうじゃないか」


「やあね。女の子に勝ってもつまらないじゃない。」


すると、狂華の視線が響也から外れる。そして、好きなタレントをテレビで見つけた子供のように、「あー!」と声を上げて指を指した。


「いるじゃない! 男の子!!」


「え?」


八坂が自分の鼻を指す。


「ボクのこと?」


「そうよ。貴方のこと! ちょっとなよなよして殺しがいが無いけど、男の子に変わりはないわ!!」


八坂はポリポリと頬をかいた。


「響也さん、ボク、男らしいですよ?」


「ああ、うん。男だよな」


確かに八坂は男だ。だけど、素直に喜べない自分がいる。


アクアと味斗が、響也と八坂の横を走って通り過ぎた。


「じゃあ、この狂華って子の相手は任せたわよ!!」


ここはBチームに任せて、総司令官の二人は、さらに地下へと向かい、架陰の奪還を目指す。


戦いを任された響也は、「あ、はーい」と返事した。


「ん?」


狂華は、隣を通り過ぎた味斗が男だとは気づくと、「あ、待って待って!」と呼び止めた。


「貴方も男よね? 私の相手をして下さらない?」


味斗は立ち止まり、少し考える。


「じゃあ、また今度ね」


そのまま狂華に背中を向けて、アクアと共に走り出す。


狂華は「ええー」と残念そうな声をあげた。


「待ちきれないわ。今日殺してあげたいのに・・・」


「じゃあ、さっさと死んだらどうだ?」


狂華が味斗に目を向けている間に、響也が先制攻撃を仕掛ける。


地面が花のおかげで、踏み込んだ時の音は全くしなかった。殺気を押し殺し、狂華に武器を振り下ろす。










ギンッ!!!











狂華は着物の袖からナイフを取り出し、響也の一撃を防ぐ。


「ちっ!!」


響也は直ぐに狂華から距離を取った。


狂華は手の中のナイフを振り回しながら、ニヤリと笑った。


「無駄よ。貴方の動きは全部研究済み。貴女が【死神】の異名を持っていることも、貴女が、【死踏】と呼ばれる殺陣歩法を持っていることも、愛武器が、【The Scythe】だということも」


「へえ、私って人気者だったんだな・・・」


響也は手に握った武器を構える。


その様子を見ていた八坂は、とある違和感を覚えた。


響也の愛武器は、The Scythe。鉄の棍の両端に草刈り鎌のような刃が、「S」字状に伸びている。


そして、使わない時は、白い布で覆っているのだ。


先程、狂華に襲いかかった響也は、その白い布を取り払わずに向かっていった。


(なんで、布を払わなかった?)


頭に?を浮かべる八坂を他所に、響也はニヤリと笑い、武器に巻いた白い布を取り去った。


「じゃあ、私が、【新たな武器】を手に入れたってことは、まだバレていないようだな・・・」


The Scythe。いや、響也の新たな武器をおおっていた布が取り払われ、地面にパサリと落ちた時、響也の新たな力の全貌が明かされた。


「あれはっ!?」


八坂は思わず叫んでいた。


明らかに、形状が違う。


バンイップとの戦いの時に、八坂に押し当てた刃とは違う。











「これが私の新しい武器だよ」











響也は、新たな武器の刃を、狂華に向けた。


蛇山にて、機械生命体との戦いの末にボロボロになってしまったThe Scytheはその役目を終えた。


そして、機械生命体の素材を使って、新たに蘇った。


鉄の棍の両端に、草刈り鎌のような刃が付いている。その片方の刃は、The Scytheの時よりも、三倍程巨大化していたのだ。


まるで、【死神の鎌】のようだった。











「【Death Scythe(デスサイズ)】だよ」












第47話に続く


第47話に続く

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