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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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死神の鎌 その②

幸福と不幸はプスマイナスゼロで


幸福を味わった僕達は不幸へと墜落して


不幸を味わった僕達は幸福へと飛翔する


結局この地面に立っていることに変わりはないのだ

2


「さあ、そろそろ終わりにしようぜ!!」


笹倉は翼を広げて出力を上げると、さらにカレンを追い込んだ。


翼々風魔扇の柄と名刀・雷光丸の刃が擦れ合い、「ギリギリ」と不快な音を立てた。


「くっ!!」


カレンも歯を食いしばって耐える。振り動作無しで風を発生させることは可能だが、雷光丸が熱を持っているせいで、上手く発動しない。


「カレン!」


「カレン殿!!」


鉄平と山田が、笹倉の背後に回り込む。


「近寄んな・・・」


その瞬間、笹倉の周りの地面から雷撃が湧き上がり、二人の行く手を阻んだ。


「っ!!」


「ちっ!!」


二人は腕で顔を覆い、引き下がる。


今のは、【雷光丸・雷華】。自身の周りから雷撃を伝導させ、雷の結界を作り出す技。下手に近寄ればこちらが雷撃を喰らってやられてしまう。


笹倉の至近距離にいたカレンは無傷だった。


(私は、無傷・・・?)


カレンは笹倉の攻撃に耐えながら疑問を抱いた。


なぜ自分は至近距離で雷撃を発動されているのに、被弾しなかったのか。


引っかかるところはまだある。【雷光丸・裁・裁きの雨】を発動した時、笹倉はこう言った。










「オレの方が雷撃の扱いには長けているんだよ!!」










つまり、雷撃に被弾しないよう、雷撃の起動を予測して、上手く旋回したということだ。


(やっぱり、この人、雷撃を操るものの、雷撃への耐性は兼ね備えたいないのね・・・)


雷撃を放つ時も、空中で放っていた。自分にぶつかるのを防ぐためだ。


そして、翼々風魔扇と刃を合わせている今も、下手に雷撃を放てないのだ。自分に伝導する可能性があるから。


だから、射程範囲の広い【雷光丸・雷華】を選んだ。


「なるほどねぇ」


カレンの目に勝機が宿った。


「気に入らねぇ目だな」


笹倉は舌打ちをして、さらに力を込めた。


翼々風魔扇の柄に、熱された刃がくい込む。


(もう、限界だわ)


その瞬間、カレンは力を抜いた。


「っ!!」


カレンを押すために力を込めていた笹倉がグラッと前のめりになる。


その顎に、カレンの蹴りが炸裂した。


「がっ!!」


笹倉の視界に火花が散る。


直ぐに飛び立とうとしたが、目眩がして、約一秒の隙を作ってしまった。


カレンは身を捻ると、笹倉の首に翼々風魔扇を振った。


翼々風魔扇の扇部が、鋭い刃物のようになって、笹倉の首に赤い線を走らせた。


「くっ!!」


首が落とされる前に、笹倉は空中へと逃げ出した。


「あらぁ、仕損じたわぁ」


カレンは血だらけな翼々風魔扇を振り、発生させた風で血を乾かした。


(あの女・・・!!)


笹倉は首から流れ落ちる血液を抑えながら、ギリッと歯ぎしりをした。


一瞬の躊躇もしなかった。真っ直ぐ、これが最善手だと信じて、あの扇子を振ってきた。


(やっぱり、気持ち悪いな)


もはや、時間はかけられない。


「もう、終わらせて貰う・・・」


笹倉は名刀・雷光丸を上段に構えた。


あの女は危険だ。直ぐにでも仕留めなければならない。


「【雷光丸・霹】!!」


最高出力の雷撃を、刃に纏わせた。


雷光丸が金色に輝き、「バチッ」「バチッバチイイインッ!!」と、耳を塞ぎたくなるような音を発した。


「おいおい・・・、まずいぞ」


未だかつて無い攻撃が来ることを察した鉄平は、額に冷や汗をかいて後ずさった。


「大丈夫よぉ」


カレンはニッコリと笑い、翼々風魔扇を地面に向かって振った。


「【風神之舞】」


巨大な竜巻が発生する。


「はっ、竜巻ごときでこの攻撃が防げると思うなよ!!!」


「思わないわよぉ」


カレンはそう言ったあと、「このままじゃね」と付け加えた。


その瞬間、竜巻が地面の砂を吸い上げ、褐色に変色した。


「【風神之舞】・【砂塵乱】!!」


「っ!?」


「少し不思議に思ったことがあるの。一階で出会った唐草って男の子の戦場は、足場が床だった。でも、貴方は砂を敷き詰め、ところどころには岩を置いてある。まるで沙漠よねぇ」


「・・・ちっ!!」


笹倉の顔が歪んだ。


カレンはニコニコしながら続ける。


「これ、強大すぎる雷撃を地面に流すためでしょ?もしもコンクリートにしようものなら、地面に触れた途端、蓄積した雷撃で感電してしまう。敵を倒すためなら都合がいいけど、自分にもそれを喰らってしまう可能性もあった。だから、保険をかけたのね」


カレンが発生させた大竜巻は、一つの生き物のようにうねり、砂を吸い上げ、巨大化していった。


「っ!!」


雷光丸に蓄積していた雷撃が、砂で褐色に染まった竜巻に吸い込まれる。


「しまった!!」


「地面は、雷撃を逃す」


雷撃を失った笹倉に残るのは、ガーゴイルの翼だけだった。


その翼でできることは、「逃亡」しか無かった。


「くそ!!」


羽ばたいて、竜巻から距離を取ろうとするが、亀の歩みだった。


「策士策に溺れる。終わりよぉ」


カレンはトドメと言わんばかりに、翼々風魔扇を振った。










巨大竜巻が、笹倉を飲み込んだ。


「うああああああああああああぁぁぁあああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁっっっっ!!!!」










その③に続く

その③に続く

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