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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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番外編【笹倉外伝】

たとえ人間の血が流れていようと


その牙で人を喰らったのなら


ただの化け物に変わりはない


たとえ化け物の血が流れていようと


その牙で人を護ったのなら


人間でありたいと願う

これは、オレが人間だった頃の話だ。





十年前、とあるニュースを見たことがある。


それは、アメリカのエリア51という場所に凶暴なUMAが出現して、辺りをめちゃくちゃにしてしまったという内容だった。


その時、六歳だったオレは、とても興奮していた。


テレビの中継画面に映し出されたUMAは、ある映画で見た怪獣のような巨体で、龍の首が七本も生えていた。コウモリのような翼を広げ、辺りに爆風を巻き起こす。


人はそのUMAを、【目次録の獣】と呼んだ。


そして、その最強最悪のUMAを討伐したのが、伝説のUMAハンター達だ。


日野光。


宝来風鬼。


平泉良。


アクア・サブリネ。


火村味斗。


たった五人。たった五人で、あの凶暴なUMAに立ち向かい、見事、勝利を収めた。


世界崩壊の危機を救った五人の英雄は、大いに称えられ、UMAハンターという極秘組織が、初めて公の場に姿を表した瞬間だった。










それからしばらくして、あるニュースが報じられた。










「突然変異を促すウイルス。全世界に蔓延」










あの目次録の獣の死体から放たれたものらしい。【DVLウイルス】は、生物に感染して、突然変異を促す。


つまり、UMA化だ。


あらゆる生物が巨大化したり、特殊な能力を有したりする。そして、凶暴化する。


ニュースの報道があって直ぐに、オレの家の近くでも、UMAによる被害があった。


巨大化した犬が、通りすがりの小学生を噛み殺したのだ。それだけじゃない。蜘蛛も巨大化して、辺りに巣を張り、人間をから娶って食す。


世界は、恐怖に支配された。


幸い、DVLウイルスは人体に無害だと報道がなされた。だが、人間以外には、容赦なくその力を発揮する。世界中にUMAが大量発生して、ツチノコなんて珍しくない世界になってしまった。










アメリカの未確認生物研究機関は、「UMAハンターの増員をはかる」という発表をした。


今やどこでも見かけるようになってしまったUMA。それを討伐するために、全世界各地域に、UMAハンターを派遣し、世界の平和の秩序を取り戻すという計画だった。


七歳になったオレは、UMAハンターになろうと決意した。あの日見た、五人の英雄のように、世界を守る戦士になろうと、誓った。











結論から言おう。オレは、UMAハンターにはなれなかった。











八歳になってすぐのことだった。


オレの身体に異変が起こる。どちらかと言えば白かったオレの皮膚が、赤褐色に染まり始めた。夏のグラウンドみたいにひび割れ、じわっと血が滲む。


腰が痛かった。まるで、首と足首を掴まれ、ゆっくりと引っ張られているような感覚だった。


あと、肩も痛い。


母さんは、直ぐにオレを病院に連れていってくれた。


そして、検査の末、オレは、「DVLウイルスに認められた」という診断を受けた。










話によると、世間一般で言われている「DVLウイルスは、人間には無害」という話は、嘘らしい。


何十万分の一の確率で、DVLウイルスによって、人間にも突然変異が起こるのだ。


オレは、DVLウイルスに認められた。つまり、UMAになるのだ。


医者は「手遅れだ」と言った。


オレは時期にUMAとなる。


体表が赤褐色に染まり、肩甲骨部分からコウモリのような翼が生え、上半身と下半身が切り離される。やがて自我を失い、人間に見境なく襲いかかる。


医者が言うには、このようにUMA化が進んだ人間には、「駆除対象」となるらしい。


殺されるのだ。オレがUMAになり、人格を失う前に。


死ぬのは嫌だ。だけど、自分を失い、化け物となって生き長らえるのはもっと嫌だった。


だから、オレは、医者の提案した「安楽死」を受け入れた。


DVLウイルスに認められた人間の駆除は、ひっそりと行われた。オレは、病院の地下室のカプセルの前に立っていた。


母さんは泣いていた。


父さんも泣いていた。


医者も、口を一文字に結んで、僕が毒ガス発生装置カプセルに入るのを見ていた。











その時だった。











突然、部屋の空気が揺れた。


医者の首に赤い線が走り、ごとっと床に転がる。断面から血液が噴出して、天井に飛び散った。


グラッと、首を失くした医者の身体が揺れ、床に倒れ込む。


さらに、悲鳴をあげた母さんの首が、たじろいだ父さんの首が、ゴトっと落ちて転がり、血液のシャワーを吹き出した。


オレは、何が起こったのか分からず、広がっていく血の海を眺めていた。


「ヤア、コンニチハ・・・」


いつの間にかオレの前に、身体中に包帯を巻いた男が立っていた。その横には、侍のような着物を羽織り、長い髪の毛を後ろで結った男。腰のあの刀で、医者を首を斬り落としたのだと理解した。


「カワイソウニ・・・、DVLウイルスニ認メラレナガラ、殺サレカケタンダネ・・・」


包帯男は、しわがれた声を発しながら、怯える僕の頬を撫でた。


「ボクガ、ソノ苦シミヲ救ッテアゲル・・・」











その日、オレは人間であることを辞めた。











悪魔の堕慧児は、DVLウイルスに認められ、生に執着した者たちの集まりだ。


あの包帯男の専属の医者が施した手術は完璧だった。オレは、人間の姿と、ガーゴイルの姿を切り替えることに成功した。自我だってある。


ギブアンドテイク。


オレは、生き長らえる代わりに、あの包帯男に仕えることとなった。


包帯男の望みはただ一つ。









「市原架陰トイウ男ノ子ヲ、ツレテキテオクレ・・・」










オレは行く。


あの日、オレの命を救ってくれたあの人のために。


もう何人も殺してきたから、精神が狂っているんだよ。


だから、オレは刀を握りしめ、あのお方に楯突く者を皆殺しにする。


オレの目の前に佇む三人のUMAハンターも同じだ。


あのお方が、架陰が奪った能力を取り戻すまで、オレは歯向かい続ける。


さあ、戦いの始まりだ。












第46話に続く。



第46話に続く

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