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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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ガーゴイルと風 その③

熱風の吹き付ける渓谷を抜け


蝙蝠の狂騒に耳を傾け


苔むした岩肌を愛で


崩れゆく天蓋に首を擡げる

3


「ちくしょう・・・」


笹倉は手を地面に着いて、体勢を整えた。


ガーゴイル化している時は下半身が無いので、倒れた時に起き上がるのが不便だ。


翼を動かし、浮かび上がる。


「・・・・・・」


赤黒く充血した目を、山田に向けた。


椿班副班長【山田豪鬼】。


架陰誘拐計画を立てる上で、一応調べておいた人間だ。


寡黙で、剛腕の大男。


その程度の認識のつもりだったが、考えが甘かったようだ。


(まさか、ここまで強いとはな・・・)


笹倉の行動を読み、先回りしてくる勘の良さ。頭を掴み、動きを封じてくる圧倒的腕力。


下手したら、あの椿班班長の堂島鉄平よりも強いかもしれない。


「どうしました?」


山田がメガネを押し上げる。その動作も、不気味な何かを宿していた。


笹倉は名刀・雷光丸を握り直した。


(下手に近づけねぇな)


カレンの風と、山田の拘束攻撃が同時に仕掛けられたら、こちらも抜け出す手立てが無い。


桜班と椿班だ。しかも、今日この日に即席で作ったチームと言える。


さすがにこの短時間で、お互いの性質を理解して、お互いに連携を取ってくるような戦いはしないだろう。


(だが、様子は見ておくか・・・)


笹倉は翼を羽ばたいて、天井に飛び上がった。


「雷撃!!」


名刀・雷光丸を振り、雷撃を落とす。


今度の攻撃は、殺気が篭っていないものだった。


「ほう・・・」


山田はその巨体を振って雷撃を躱した。


「様子見の牽制攻撃ですか。良い判断ですね」


「ちっ、バレてたか・・・」


「バレバレですとも。攻撃に殺気が篭っていませんからね」


山田が指をバキバキと鳴らす。


筋肉で覆われた巨体から、寒気がする程の殺気が放たれた。


「さあ、来なさい。そんな天井に浮かび上がり、ちまちまとした戦いをするのではなく。男なら、正面から向かってきなさい」


山田の言っていることは、挑発だった。


正面から攻撃を仕掛けたところで、カレンの風にバランスを崩され、あの山田に押さえつけられるのは目に見えている。


笹倉は宙に浮いたまま、刀を構えた。


「残念だが、オレの思う【男らしい】ってのは、空を自由自在に飛び回ることを言うんでね!!」


柄を握りしめ、念を送ると、刃が眩い光に覆われた。


放散型だった雷撃を一点に集中させ、省エネルギーかつ高威力の形態へと変化させる。


「【名刀・雷光丸】・【避雷針】!!!」


雷を纏った刀を見て、鉄平は眉にシワを寄せた。


「なんだありゃ。雷の刀か?」


「ご名答。こいつは、雷を刃に収束させた刀だ。つまり、触れればタダじゃ済まないってことだぜ!!」


ガーゴイルの翼を羽ばたかせ、山田に向かって、一気に加速する。


「っ!!」


山田は飛び退いた。


「おらぁ、逃げんな!!!」


「少々まずいですね・・・」


先程のように、「放つ雷撃」では無い。「纏う雷撃」と言った方がいい。


力を刃一点に収束させた分、威力が上がっている。


「オラあっ!!」


振り下ろした名刀・雷光丸が地面に突き刺さる。高熱の刃が砂を溶かし、その下の床の素材までも溶かした。


(高温の刃!!)


山田と鉄平は、0,1秒の間、目配せをしあった。


椿班の班長と副班長だ。その気になれば、言葉を交わさずとも、お互いの考えは読むことができる。


「行きますよ・・・」


山田が笹倉に向かって走り出す。


拳を握りしめ、放った。










ドンッ!!!










山田の鉄拳は地面に直撃し、砂煙をあげた。


「っ!!」


飛び退いていた笹倉は、妙な違和感を覚えた。


この拳、全く殺気を感じない。


(陽動か!!)


砂煙が笹倉の周りを取り囲み、視界を奪った。


笹倉は気を集中させ、辺りの気配を探る。


前方には山田。さらに後ろにカレン。


(鉄平が、いない!!)


鉄平がいないことに気がついた笹倉は、とっさの判断で、名刀・雷光丸を地面に突き立てた。


「【雷光丸】・【雷華】!!!」


雷撃が地面を伝導して、半径10メートルの地面から湧き出した。


雷の結界だ。


上空から鉄棍を構えて襲いかかってきた鉄平の腹に雷撃が突き立つ。


「がはっ!!」


「【風神之槍】!!!」


カレンが翼々風魔扇で風を発生させ、鉄平を安全地帯へと吹き飛ばす。


「へっ! 残念だったな!!」


さしずめ、山田が笹倉の気を逸らし、そこに鉄平が攻撃を叩き込むつもりだったのだろう。


安易な連携だ。


この雷光丸を握る笹倉の敵ではない。


砂煙が晴れ、山田が姿を現す。


「本当にそうでしょうか?」


「なんだと?」


笹倉は全身が粟立つような感覚に襲われた。


山田の、メガネ越しのあの目。


あの目は、何かを企んでいるような目だ。


(とりあえず、空中に逃げておくか・・・)


翼を羽ばたき、天井へと上昇しようとした瞬間、笹倉の腹に鈍い痛みが走った。


「っ!!」


背中から何かが突き抜け、腹へと飛び出す。










鉄棍だった。











第46話に続く


山田「笹倉という男、なかなかのものですね」


鉄平「いや、地面を砕くお前も異常だけどな」


山田「それよりも鉄平さん。この山田、気になったことがあります」


鉄平「なんだよ」


山田「桜班の副班長殿のことを、呼び捨てにされていましたね」


鉄平「それがどうしたんだよ」


山田「三席殿を【姐さん】と呼ぶのなら、副班長のことも姐さんと呼ばないのですか?」


鉄平「呼ばねぇよ。何故なら、あいつは死神の側近みたいなもんだろ?」


山田「死神・・・、鈴白響也殿のことですか」


鉄平「おう。桜班の班長は【死神】。副班長は【カレン】。三席は【姐さん】。これがオレの呼び方だよっ」


山田「ちょっとよく分からないですね」


鉄平「次回、第46話【死神の鎌】!!」


山田「・・・」

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