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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第45話】ガーゴイルと風 その①

山村に佇むその館で


陶器の身体を雨風に晒し


悪魔の我は守り神として崇められ


獣にも似た顎を開けている

1


「こっちだ!!」


悪魔の堕慧児の本拠地に乗り込み、一番最初に立ち塞がった唐草の相手を、クロナと真子に任せた一同は、階段を使って地下へと駆け下りた。


響也を先頭に、カレン、鉄平、山田、八坂、アクア、味斗と続く。


しばらく、階段を降りていると、また広い場所に出た。


「ここは?」


先程、唐草が待ち構えていた空間と同様、学校の体育館程の広さを持つ。


唯一違うところと言えば、床であろう場所に砂が敷き詰められ、所々から岩が隆起していた。










「待ってたぜ!! 侵入者!!!」










天井のライトが点灯して、フィールドを照らしだした。


その明かりの下に立つのは、架陰を連れ去った張本人、【笹倉】だった。


「あいつ!!」


鉄平が目を見開き、歯ぎしりをした。


「あいつだ!! あいつが架陰を連れ去った野郎の一人だ!!」


響也とカレンは目を見合わせた。見たことがある男だったからだ。


「あいつ・・・」


「ええ、うちの高校に通っていた生徒だわぁ」


笹倉は纏っていたマントを脱ぎ捨てた。


袖の無い革鎧から、細くとも引き締まった腕が伸びている。


「架陰は、今手が離せないんだよ。お引き取りお願いしますか?」


笹倉は挑発するように言った。


鉄平は地面をダンッと踏みつけ、一歩前に出た。


「帰るわけねぇだろ!! オレはお前たちをぶっ飛ばしに来たんだからな!!!」


響也がぼそっと、「架陰を連れ戻しに来たんじゃないのか?」と言った。


笹倉は、「まあ、そうなるわな」と言って、腰の刀をすらっと抜いた。


「唐草が変なルールを付けたらしいな。この先に待ち構える、三人の悪魔の堕慧児を倒せって」


笹倉の握る刀の刃表面に、バチッバチッと電流が流れた。


「なら、二番手はオレだ。誰でもいい。どこからでもかかってきな・・・」


「おうおう!!ぶっ飛ばしてやる!!」


特に相談をする暇も無く、鉄平が鉄棍を握りしめ、戦闘態勢に入った。これにより、笹倉と戦うのは、カレン、山田、鉄平の【Cチーム】となった。


アクアがカレンの肩を叩いた。


「任せていいかしら?」


カレンはニコッと笑い、胸をどんと叩く。


「ええ、お任せ下さい」


地下二階には、鉄平、カレン、山田の三人が残った。


アクア、味斗、響也、八坂の四人は、笹倉の横を通り過ぎて先に進んだ。












「へえ、あんたたちがオレの相手か」


笹倉は赤く充血を始めた瞳で、三人の姿を交互に見た。


「なかなか、面白そうな布陣じゃねぇか」


「こちとら面白くもなんともねぇんだよ。さっさと片付けさせて貰うぜ!!」


鉄平はドスの効いた声を出すと、右手に握った鉄棍を高速で振り回した。


「山田と、オレは前線で戦う。カレンは、援護をしろ」


指図を始める鉄平に、カレンは難色を示すことなく、「わかったわァ」と一言頷いて、着物の帯に差した【翼々風魔扇】を抜き取った。


三人の準備が整ったことを確認した笹倉は、ぐっと腰を落とし、獣が飛びかかる時のような体勢となった。


「さあて、行くぜ!!」


その瞬間、笹倉の身体が変化を始める。


体表が褐色に染まり、腰と胴体が引き伸ばされ、パキパキと渇いた音を立てる。


ブチブチと血管と肉が引きちぎられ、笹倉の上半身と下半身が分離した。


革鎧を突き破り、コウモリのような翼が生える。


口が耳元まで裂け、腐敗したような臭いを吐いた。


「これがオレの能力、【ガーゴイル】だ!!」


笹倉の変貌を見たカレン、「まあ!!」と声を出した。


「本当に姿が変わるのねぇ。すごいわぁ!!」


「姿が変わるだけじゃねぇぜ!!」


笹倉が翼を仰ぐと、身体が天井付近まで上昇した。


「っ!?」


「どうだ、ここなら攻撃は当たらねぇぞ!!」


鉄平達と笹倉の距離は約20メートル。鉄平の鉄棍も、山田の拳も当たらない状況だった。


三人の攻撃が届かない安全地帯で、笹倉は刀の能力を解放させた。


「【雷光丸】!!!」


刀が、眩い光で覆われる。バチッバチッと雷光が弾け、空間に亀裂のようなものを軋らせた。


「喰らえ!! 【雷撃】!!!」


刀を振った瞬間、まるで龍のような雷が、三人に目掛けて放たれた。


「くっそ!!」


あの雷撃の威力を知っている鉄平は、たまらず地面を蹴って後退した。


鉄平がたっていた場所に雷撃が直撃して、砂煙を巻き上げる。


「てめぇ、汚ぇぞ!!!!」


「馬鹿だな、戦いに汚ぇも蜂の頭もあるか?」


笹倉はもう一度刀を振る。


天井から放たれる雷撃は、雷そのものだった。


「ぐっ!!」


鉄平と山田は躱すのに精一杯。


だが、カレンは違った。


雷撃の照準が鉄平に向いていることを確認すると、雷撃の合間を縫って前線に踏み出した。


地面を蹴り、笹倉へと接近する。


だが、飛距離が足りない。


「届かねぇよ!!」


「ここまで来れば十分よォ!!」


翼々風魔扇を思い切り振る。


「【風神之槍】!!!」


扇子から、高密度の竜巻の槍が放たれ、笹倉に迫った。


「っ!!」


笹倉が雷撃で相殺しようと刀を構えるが、それよりも先に、竜巻が笹倉の翼を貫く。


グラッとバランスを崩した。


「ちっ!!」


飛行能力を有する者の弱点、それは、「風」。


「あなたは、桜班副班長の、【城之内カレン】が相手よォ!!!」










その②に続く

その②に続く

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