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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
134/530

獄炎 その③

叩いた(なまくら)から星が散り


囲炉裏に火をつける





3


架陰と夜行の戦いを、悪魔の堕慧児達は観客席から眺めていた。


「・・・、苦戦してるな、架陰・・・」


笹倉が顎に手をやってそう言った。別に誰かに言ったつもりではなかったが、侍の着物を纏った鬼丸が頷く。


「そうだな、夜行殿の方が優勢と見る・・・」


「架陰は、あの刀に、王の能力。夜行殿は、剣に、剣の能力。不死の特性に、夜行殿本人の能力。一対一だが、多勢に無勢って感じですね・・・」


そう言いながら、笹倉は横目で包帯を巻いた男を見た。


包帯男は、ひび割れた唇の隙間から掠れた息を吐き、包帯の隙間からギョロっと蠢く眼球で、架陰と夜行の戦いを見ていた。


「モウスコシダ。モウスコシシタラ、彼ノ能力ガテニハイル・・・」


悪魔の堕慧児である笹倉だったが、この包帯男の目的は理解しかねていた。


架陰という男を、この場に連れてこい。


その命令を受けたので、疑うことも無く連れてきた。話によると、架陰はこの包帯男が「受け継ぐはずだった能力」を持っているらしい。


そして、その能力を持つ者を、皆は「王」と呼ぶのだ。


(あの包帯の中身は、どうなっているんだろうな・・・)


そんなことを考えていると、笹倉の横に誰かが立った。


「やあ、笹倉くん。久しぶりだね」


「あ、どうも。鉄火斎殿」


鉄火斎と呼ばれた男は、三十代程の男で、ボサボサに伸びきった髪が目元を隠していた。Tシャツに半ズボンと、かなりラフな格好で、重装備をしている笹倉や、着物を着ている鬼丸と比べて、浮いて見えた。


鉄火斎は、ニコニコと笑いながら、夜行の戦いを見た。


「うん、素晴らしいね。ボクの打った剣は」


その言葉を聞いて、笹倉は「ああ、そうか」と思った。


夜行が握っている、【地を這い仰ぎ見る黒狼の脊椎】は、この男が造った剣なのだ。


かなり残虐な武器だと思った。刃がノコギリのようになっているため、刺して、抜いた時に肉を抉る。


更には【能力】の【獄炎】だ。笹倉が夜行のついでに盗んだ【マナナンガル】の素材が使われている。


高身長の鉄火斎は、豆だらけの手で笹倉の頭を撫でた。


「君のおかげだよ。君がマナナンガルの死体を盗んでくれたから、最高の武器を打つことが出来たよ」


「ありがとうございます・・・」


笹倉の腰に差している刀、【名刀・雷光丸】も、この男によって打たれたものだ。


笹倉は一応尋ねることにした。


「あの、架陰という男の刀ですが・・・」


「うん?」


「もしかして、鉄火斎殿が打った刀でしょうか?」


すると、鉄火斎は面白がるように笑った。


「どうしてそう思うんだい?」


「何となくです。金属の響きとか、切れ味とか、硬度とか。どこか、オレの雷光丸に似ているなって・・・」


「へぇ、いい耳をしているね」


鉄火斎は何を考えているのか分からない笑みを浮かべていた。


「そうだね、あの【名刀・赫夜】は、ボクが打った刀だよ」


「ああ、やっぱりですか・・・」


「でも、あれは違う」


「は?」


思わず変な声が漏れた。


鉄火斎は架陰と夜行の戦いを見ながら口を動かした。


「確かに、ボクは、【名刀・赫夜】を打った。でも、あの少年が握っている刀は違う。さしずめ、贋作だろうね」


「贋作?」


鉄火斎は職人だ。彼の言っていることは確かなのだろう。


彼は、この悪魔の堕慧児に加盟するまでは、SANA専属の鍛治職人【匠】として、対UMA用武器を造っていたらしい。能力も使える。


そんな者が、どうして悪魔の堕慧児に手助けをするのか、笹倉には理解が出来なかった。


「じゃあ、あの贋作の刀は、誰が打ったんですか?」


「多分、ボクの一番弟子だろうね・・・。彼が、ボクが打った名刀・赫夜・真打を真似して、架陰という少年に刀を与えたのだと見た」


「へぇ、あの刀は、あなたの一番弟子、つまり、二代目鉄火斎が打ったってことですか」


「うん、嫌な響だね」


鉄火斎はニヤッと笑った。


「あの馬鹿な弟子。彼を二代目だなんて思ったことは無い。次に会う時、またあのような鈍刀を造っていたなら、ボクが真っ先に叩き折ってあげよう・・・」


「なまくら、ですか」


笹倉には到底思えなかった。


一度刃を交えただけで分かった。あの名刀・赫夜は、ただの刀ではないと。斬れ味も極上。硬度も高い。


それなのに、この男は、「なまくら」と言うのか。


(職人の世界って、怖いな・・・)


思わず、「二代目だとは思ったことは無い」と呼ばれた、どこにいるかも分からない刀鍛冶のことを可哀想だと思ってしまった。


その時、悪魔の堕慧児の下っ端が二人、駆けてきた。


「笹倉殿、鬼丸殿!! 侵入者です!!」


「侵入者?」


「はい、あの少年の仲間が追ってきたようです!! 現在、唐草様が応戦に向かっています!!」


一瞬、「馬鹿な」と思った。


架陰が所持してあったトランシーバーは破壊済み。彼を追えるGPSは存在しないはずだ。


「・・・、まあ、いい」


笹倉は腰の刀の感触を確かめた。


「オレが出ます」













第45話に続く



第45話に続く

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