クロナ&真子VS唐草 その③
薄氷を砕くその蹄が
凍傷で赤くならんことを
3
「蹴り飛ばせ・・・、【山羊男】」
能力を発動した唐草の容姿が、一瞬で変化する。
小枝のように細い骨の周りに、引き締まった筋肉が付いていた唐草の脚が、パキパキと乾いた音を立てて変形する。
さらに細く。
さらに筋肉を引き締める。
「あれはっ!!」
クロナには見覚えのある姿だった。
「ふーぅ!!」
唐草の下半身は、山羊の後脚に変化したのだ。
「あれは、ゴートマンの下半身!!」
「そうだよ・・・」
唐草にニンマリと笑った。上半身の変化は全く無い。
「これは、ゴートマンの能力だ」
和傘を閉じて、フェンシングよハードレイピアのように構える。
「君は、ゴートマンと戦ったことがあるよね・・・」
【補足】・・・ゴートマンの初登場は、白陀編。頭は山羊の頭。上半身は大男。下半身は山羊の後脚。巨大な斧を装備している。響也によって殺された。
「え、ええ・・・」
と言っても、蛇山の時にゴートマンを倒したのは、響也とカレンだ。
唐草は、山羊の蹄でカツカツと床を叩いた。
「あれは、脳のない獣だった」
「獣・・・」
「だけど、僕は違う。僕は、人間の頭脳を持つ・・・」
唐草は姿勢を低くして、脚に力を込めた。
「俺の脚は、山羊の脚!!」
ドンッ!!!
踏み込んだ瞬間、床が粉砕した。
まるでロケットのような勢いで唐草が飛んでくる。
「っ!!」
「砕けろ!!」
山羊の後脚の蹴りが、クロナに迫る。
「くっ!!」
ギンッ!!
何とか、名刀・黒鴉の刃で受ける。
「っ!?」
蹴りの勢いが、数倍に跳ね上がっていた。
(受けきれないっ!?)
「オラァ!!」
踏ん張りが効かず、吹き飛ばされる。
(まずい!!)
空中で身体を捻り、体勢を整える。そのまま床に着地しようとする。
それよりも先に、唐草がクロナの着地点に回り込んでいた。
「遅い!!」
「っ!」
ギンッ!!
唐草が振り上げた名傘・雨乃朧月の、黒鴉がぶつかり合う。
「っ」
何とか受け流し、床に転がる。
隙を見せたクロナに、唐草は追撃する。
「名弓・天照!!」
真子が唐草に向けて矢を放った。
だが、直ぐに察知した唐草は、素手で矢を掴む。上体を捻って、真子に投げ返した。
「なっ!?」
真子は飛び退く。
床に矢が突き刺さり、爆炎をあげた。
(反射速度まで上がっている!?)
真子は試しに、もう三発矢を射った。
「無駄だよ!!」
唐草は一発を蹴り飛ばし、二発目を傘で弾き、三発目を素手で掴んだ。
再び投げ返してくる。
能力を解放して、反射速度が上がった唐草にとって真子ごときの矢など、恐るるに足らなかった。
唐草が真子の相手をしている間に体勢を整えたクロナは、唐草の背後から斬りかかった。
ギンッ!!
和傘に防がれる。
「さあ、楽しもうよ!!」
激しい剣戟が始まる。
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
「くそ・・・!」
唐草はかなり手を抜いて傘を振るってきた。
分かるのだ。
ぶつかりあった刃から、唐草が自分を舐めているのだと伝わってくる。
唐草はニコニコと笑っていた。
まるで、楽しい遊びをしている子供のように。
「あはははは!!」
「くっ!! うっ!!」
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
ギンッ!!
押される。
後ずさる。
「弱い弱い弱い!!」
「なめるなっ!」
クロナは黒鴉を切り上げた。
鋒が唐草の目を抉り出そうとする瞬間、唐草は人間離れした動きで身体を反らす。
「甘いよ!!」
そのまま、山羊の蹄で、クロナの顎を蹴りあげた。
「がはっ!!」
顎は、人間の弱点である。
顎を攻撃されれば、脳が揺れる。
故に、脳震盪を引き起こす。
(まずい・・・!!)
クロナに視界に火花が弾け、地面が歪むような感覚に襲われた。
意識を強く保とうとした瞬間、唐草の蹴りがクロナの腹に直撃する。
「がっ!?」
「ごめんね、女の子のお腹、蹴るなんて・・・」
クロナは意識を失った。
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる寸前で、真子が受け止める。
「クロナ姐さん!!」
「その女の子はもう動けないよ!!」
唐草が残りのUMAハンターを仕留めに入る。
「ちっ!!」
真子は白目を剥いたクロナを抱えて跳んだ。
「クロナ姐さんがやられたのは、サポートが上手く出来なかった私が悪い・・・!!」
真子は離れた場所にクロナを横たえる。
「逃がさない!!!」
「こっちっスよ!!」
クロナに攻撃が集中しないよう、距離を取る。
そして、素早く彼女に【回復矢】を放っておいた。
「さあっ!! こっからは私が相手ってスよ!!」
第42話に続く
第42話に続く




