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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
122/530

半人間半UMA その③

絡め取られたら


もうおしまい


命尽きるまで


踊りましょ

3


「ま、待ってください!」


架陰は、今にも襲いかかって来ようとする女郎に静止を求めた。


「せめて、着物と、刀を返してくれないか?」


架陰は連れ去られた時と同じ格好。ジャージのズボンにTシャツだった。防御面だけでなく、攻撃面にも不安がある。


女郎は静かに頷いた。


「笹倉様・・・」


「おらよ」


笹倉が架陰から奪っていた刀と、着物が入った巾着袋を投げた。


架陰は若干の恥ずかしさを覚えながら、着物に着替え、腰に、名刀・赫夜を差した。


「よし、行けます!!」


「分かりました・・・」


女郎は赤く染まった眼球で架陰を見た。肩甲骨から生えた四本の蜘蛛の肢がパキパキと乾いた音を立てて蠢く。


「では、いかせて貰いますよ・・・」


赤褐色に染まった腕を翳した。


「・・・、【緊迫糸】・・・!」


パシュッ!!


掌から、白濁した粘液が放たれた。


「っ!!」


架陰は腰の名刀・赫夜に手をかける。


「はあっ!!」


一閃する。


どんな効果を持つ粘液か変わらないが、何とか薙ぎ払うことが出来た。


「えっ!?」


薙ぎ払ったつもりだった。


だが、名刀・赫夜の白銀の刃に、粘液が纏わりついたのだ。


「これは・・・!?」


「僕の能力の一つですよ・・・」


架陰の刀の斬れ味を奪った女郎は、静かに架陰との間を詰めてきた。


「その粘液は、相手の動きを封じる・・・!」


「くっ!!」


架陰は刃を振るう。


だが、女郎はそれを素手で受け止めた。


(防がれた!?)


リザードマンの硬い皮膚も、白陀の太い首も簡単に斬り裂いた刃が、見た目子供の女郎に簡単に受け止められた。


「もうこの刀はなまくらですよ・・・」


「くそっ!!」


架陰は刀を握っていない左手に力を込めた。


「能力、発動!!」


左拳から、黒色オーラが染み出す。


「【魔影】!!」


魔影を纏わせた拳を、女郎に放った。


「っ!!」










ドンッ!!!











衝撃波が、女郎の胸に炸裂した。


パキッ!! と骨が折れる音がして、女郎が後ずさる。


「さすがですね・・・」


女郎の口からドロっとした血液が流れ落ちた。


「肺をやられました・・・」


「ご、ごめんね・・・」


架陰は思わず謝った。人外の姿をしているとはいえ、人間の面影はある。


その言葉に、女郎は静かに怒りを表した。


「もしかして、謝りました?」


「え、うん・・・」


「謝らないで頂きたい。僕は、望んでこの姿になったんだ・・・」


女郎が架陰に襲いかかる。


足音がしない。だが、速い。


「くっ!!」


架陰は女郎が放った拳を、粘液が付着した赫夜で受け止めた。


「まだまだ!!」


女郎が立て続けに拳を放つ。





ギンッ!!


ギンッ!!


ギンッ!!


ギンッ!!








「くそ・・・!」


鬼蜘蛛の姿になろうと、腕力は大して上がらないようだ。何とか、威力を後ろに流すことが出来る。


(鉄平くんくらいの力かな・・・?)


このまま、様子を見て、切り返して攻撃をすれば・・・。


「っ!!」


その瞬間、架陰の背筋に冷たいものが走った。


反射的に飛び退く。









バチンッ!!









女郎の肩甲骨から生えた蜘蛛の肢が、いきなり閉じたのだ。


「あっぶなっ!!」


あのまま攻撃を受けていたら、串刺しにされていたところだ。


女郎は小さな舌打ちをした。


「仕損じました・・・」


「そういう戦い方ができるんだね・・・」


「何を言います」


女郎が右手を天井に掲げる。


「まだ僕は、能力の半分も見せてませんよ・・・」


掌から、白濁の粘液が放たれる。


今度は架陰の刃を封じたようなものではなく、繋がりあって、ロープのような形になる。


つまり、蜘蛛の糸だった。


「【硬粘糸】!!」


糸の全長は、約十メートル。


女郎はそれを新体操のリボンのように振り回した。


「っ!?」


ドンッ!!!


架陰の立っていた場所にうねった硬粘糸が打ち付ける。タイルにヒビが入った。


「【硬粘糸】・・・【直立】」


女郎がそうつぶやくと、柔らかそうに見えた糸がピンッ!! と直立に変形した。


それを、架陰目掛けて振り下ろす。


「受け止める!!」


架陰は赫夜の刃を向けた。


「【硬粘糸】・・・【湾曲】!」


女郎のその合図で、糸は一瞬で軟化した。


「っ!?」


ドンッ!!!


曲がる糸は防ぎようがない。


架陰は思い切り、硬い床に叩きつけられていた。


「がはっ!!」


「まだまだですよ」


女郎が糸を引く。


硬粘糸が右肩から胴にかけて付着した架陰は、逃れることも出来ず、引っ張られた。


「うわっ!!」


女郎は、架陰が絡め取られた糸を無慈悲に振り回す。


そして、叩きつけた。








ドンッ!!!









「がはっ!!」


「この程度なんですか? 王の力を持つ人間って・・・」












第41話に続く


第41話に続く

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