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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
120/530

【第40話】 半人間半UMA その①

僕の中に流れる人間の血と


君の中に流れる悪魔の血は


果たして本当に別物なのだろうか

1


「おい、起きろ」


頬に鋭い痛みが走り、架陰は夢の世界から連れ戻されていた。


「・・・?」


目を開けたら、見知らぬ場所に横たわっている。


どこかの部屋だということはわかったが、競技会くらい開けそうなくらい広い。


床は白色タイルで覆われ、壁は紫がかった黒色で架陰を取り囲んでいた。


天井は、体育館と同じくらいだろうか。


「・・・ここは、どこ?」


「オレたちの本拠地だよ」


笹倉が隣に立っていた。架陰と戦った時はガーゴイルの姿をしていたが、今は元の人間の姿に戻っている。


「暴れんなよ。一応、お前はVIP扱いなんだから」


「VIP?」


つまり、特別待遇者のことか。だが、架陰にはそんな者になった覚えがなかった。


「ボクって、そんなにすごい人だっけ?」


自分の鼻を指さしてそう聞くと、笹倉は顔面蒼白となった。


「お前、知らないのか?」


「うん、知らないよ・・・」


本当に知らない。


強いて言うなら、魔影を発動させた時に時出てくる「謎の男」の姿が思い浮かぶくらいだが。


「しゃーね」


笹倉は面倒くさそうに頭をかくと、指をパチンッと鳴らした。


次の瞬間には、この本拠地全体が小刻みに揺れた。


「っ! 地震!?」


「違う」


体育館並に広い部屋の壁かの刻みに揺れた。いや、壁のように見えていたのは、「暗幕」だったようだ。


「紹介するぜ。これがオレの仲間だぜ!」


長方形型の部屋を取り囲んでいた暗幕が取り外される。


その瞬間、雄叫びのような声が響き渡った。


「おおおっ!! 我らが王よ!!」「彼が私たちの王様ね!!」「王様に似ているなぁっ!!」


「・・・、これは!」


目の前に姿を表したその光景を見た架陰は、静かに瞳孔を開いた。


それは、観客席だった。


ざっと数えて、2000人は入れそうな、折りたたみ式ベンチが並べられている。


まるで、何かの試合を見るために造られたようなデザインだ。


そこには、ざっと数えて2000人程の人間が座って、架陰の登場を心から喜んでいるように見えた。


「あの人たちは?」


「奴らも、悪魔の堕慧児だぜ」


「こんなにも・・・?」


笹倉と唐草を相手にするだけでも苦戦、いや、敗北を喫することとなったのだ。まさか、二人を追い詰めた悪魔の堕慧児が、2000人近くいるとは思えない。


「と言っても、奴らはまだ手術を終わらせて居ない奴らだ」


「手術?」


「ああ、【悪魔の堕慧児】の能力を手に入れるための手術だ」


「えっ!?」


架陰は驚きのあまり、数センチ後ずさって、笹倉の身体を指さした。


「さっきのガーゴイルの姿は、手術で手に入れたの!?」


「ああ、そうだよ」


笹倉は手足を動かして見せた。


「お前は、本当に何も知らないみたいだな。お前の中の主は、何をしてるんだ?」


「主・・・?」


やはり、架陰の心に住み着く、あの謎の男のことを言っているのだろうか。


「まあいいや」


笹倉は手を叩いて話を切り替えた。


「教えてやる。悪魔の堕慧児について」


「え、教えてくれるの?」


結構親切な人のようだ。


相変わらず観客席では、「悪魔の堕慧児」達が叫んでいた。


そのためか、笹倉の言葉も自然と大きくなる。


「悪魔の堕慧児ってのは、DVLウイルスに許された者のことを言うんだよ」


「許された?」










【補足】・・・DVLウイルスとは、10年前に世界中に蔓延したウイルスのことである。主な効果として、「能力者の素質がある者の、能力を開花を止める」、「生物に突然変異を促し、UMA化させる」というものがあげられる。










笹倉は説明を続ける。


「普通、DVLウイルスに感染した者は、能力の覚醒を妨げられる」











【補足】・・・DVLウイルスの感染者は、基本的に全員である。つまり、クロナや、響也、カレンも感染者である。










「だが、DVLウイルスに許された者は、【能力者】として覚醒するんだ」


「アクアさんみたいに、水を出したりすること?」


「少し違うな。DVLウイルスは、能力者の能力を強化させる。どちらかと言えば、【UMA化】に近いものだ」


「UMA化・・・」


UMA化するということはつまり、先程の笹倉のガーゴイルのような姿になるということか。


「DVLウイルスに許された者は、身体が急速に変化し始める。DVLウイルスが遺伝子を組み替えてしまうからだ。そして、完全に変換されると、全く別のもの生物になってしまう。それを防ぐために、オレたちは手術を受ける。そうすれば、UMA化の進行を止め、人間とUMAの姿の切り替えができるようになるんだ」


「ボクを蹴って気絶させた子も、変化ができるの?」


「ああ、唐草のことか。あいつも、UMAに変化できる」


笹倉の説明で、架陰ははっきりと理解した。


今自分の目の前に立つ者は、人間であり、UMAであるということを。


もし、その時が来るとしたら、架陰はこの人間を斬らなければならないのだ。


「・・・」


架陰は口を噤む。


まだ下手なことは言えない。下手に逆らえない。


興味が沸いた。


この悪魔の堕慧児達に。


自分の、生い立ちに。


(ここで、得られる情報は全て得てしまおう・・・)



架陰、孤独の戦いが始まった。











その②に続く

その②に続く

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