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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
112/530

架陰奪還編開幕 その②

死してなお


羽ばたき続けて

2


校内には、ある噂が立っていた。


美桜という少女が、昼休みの時間を利用して、ある少年を探しているのだ。








「すみません。このクラスに、市原架陰という男の子はいませんか?」









当然、そのクラスに市原架陰という少年は居ないので、「いませんよ」と答える。


少女は肩を落として、教室を後にした。









補足(美桜は、【吸血樹編】に登場。吸血樹に襲われるも、架陰が命懸けで護った少女である)








美桜は手の中で、リボンの付いた小箱を転がしながら、「どうしよっかなあ」とため息をついた。


最近になって、ようやく学校に行けるまで回復した美桜だ。


それも、あの時吸血樹から身を呈して護ってくれた架陰のおかげだった。


美桜はそのお礼がしたかった。


そして、あわよくば。


などと無謀な計画を立てていたのだが、まず、市原架陰という男がこの学校に居ないという事実を突きつけられてしまった。


じゃあ、どこにいるのか。







途方に暮れて廊下を歩いていると、誰かが美桜に話しかけた。


「やぁやぁ、美桜ちゃん」


振り返る。


「え、誰?」


本当に知らない男の子が立っていた。


漫画に出てきそうな糸目に、クセのついた髪の毛。身長は平均値程。名札に、「笹倉」と彫ってあった。


「オレの名前は、笹倉聖羅。市原架陰くんのことをょぉーく知る男さ!」










補足(笹倉聖羅の初登場は、第2話を参照)










知らない男に話しかけられれば、冷たい態度をとる美桜だったが、今回は違った。


市原架陰のことを知れるのなら、知らない男とも話す気になれたのだ。


「市原架陰くんのことを、知っているんですか?」


「ああ、知ってるともぉ!」


笹倉は間延びした声で頷き、薄い胸をドンと叩いた。


「彼の名は市原架陰。17歳。身長172センチ。体重52キロ。ここから約三キロ先の○○高校の生徒。好きな食べ物はカレーライス。嫌いな食べ物は、バナナ。あのドロっとした感触が嫌いなんだと。家を出る時は必ず左足から踏み出す。靴紐は右から結ぶ !!」


「・・・、え、なんでそんなに知っているんですか?」


普通に過ごしていては知りえない情報を持っている笹倉に、美桜は半歩引いた。リアル過ぎて、「本当かどうかわからない」情報だった。


「知っているとも。オレと架陰くんの仲だからねぇ」


笹倉は美桜に近づき、その肩をぽんと叩いた。


「架陰くんは、まだ退院していないよ。そのプレゼント、病室に直接持っていったらいいんじゃない?」


そう言って、笹倉は廊下を歩いてゆき、教室の前で屯する者たちに紛れて消えた。


「なんなの、あの人・・・?」


奇妙な体験をした気分だった。


笹倉に触れられた肩に、何かが付いていた。


「なにこれ?」


メモ用紙。ていると思われる病院の住所と、病室の番号が記されていた。


「って、隣町じゃない!」


お見舞いに行くべきかどうか。


プレゼントの中身は、チョコレート。


(痛むのも良くないよね・・・)


美桜は、架陰の元に行く決意を固めた。











笹倉は、屋上に立ち、眼下に広がる町の風景を眺めていた。


涼しい風が吹き、彼の頬を撫でる。


「そう、彼はオレたちの、王様・・・」


そう言った瞬間、笹倉の目が赤く光った。


「さて、そろそろお迎えに上がらないとな・・・」


ブチブチ、メキメキと、骨が軋み、肉がちぎれるような音がした。


笹倉が身に纏う学ランが突っ張り、裂け、肩甲骨付近から、コウモリのような翼が生えた。


「さぁて、行こうか・・・」


笹倉の変化は止まらない。


今度は笹倉の腰が軋む音を発した。


ブチブチ。メキメキ。


ブチブチ。メキメキ。


メキメキ。ブチブチ。


そして、笹倉の下半身と上半身が、完全に切り離される。


血は流れなかった。


コウモリのような翼を羽ばたいて宙に浮く笹倉は、鋭く光る八重歯を見せて笑っていた。


「市原架陰・・・、その御身を、ただいまよりお迎えに上がります・・・」










ーーーーーーーーーーーーーーーー

UMA図鑑【ガーゴイル】

ランク【???】

体重【???】

体長【???】

能力【???】

特徴【????????????????????????????????????????????????????】

ーーーーーーーーーーーーーーーー









成田高校の地下に建設された、【未確認生物研究機関桜班本拠地】の、【総司令官室】にて。


ファッション誌を読んでいたアクアのスマホが震えた。


「もしもし?」


『俺だ・・・』


「ああ、鑑三さん。お久しぶりです」


『ああ、今、日本に着いた』


「へぇ、観光ですか?」


『違う。重大ニュースを持ってきたんだ・・・』


「重大ニュース?」


『ああ』


電話の相手の男は、静かに、口を開いた。




『【奴ら】が、動き出す・・・』










その③に続く

その③に続く

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