第36話 絶望を断ち切る翼 その②
空も笑っている気がしたんだ
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「明鳥黒破斬!!!」
クロナが名刀・黒鴉を一閃する。
振り切った勢いで、刃に生えた無数の黒羽が発射される。
空を切る。
もう、迷いは無かった。その一撃で、この10年間、クロナを縛り続けたものを、切り裂いた。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッッ!!!!
黒羽が、黒蛇を穿つ。
「キシャアアアア!!!」
全身に羽が突き刺さった黒蛇は、赤黒い血を吹き出し、今日一番の悲鳴をあげた。
防衛本能が働き、直ぐに身をふるわせる。
「変化する!」
身体を白鱗が覆った。しかし、肉にくい込んだ数百発の黒羽が邪魔をして、白黒と、不完全なフォルムチェンジとなった。
斑に大蛇を覆う、白鱗と黒鱗。
「キシャアアアア・・・、シィイイイイイ!!」
苦痛と怒りが混じった息を吐く。
体表から、黒い毒煙が吹き出した。
「まだ動けるのか・・・!」
響也はThe Scytheを握り直した。
カレンも、翼々風魔扇を構える。
「全く、白蛇なのか黒蛇なのか、分かったものじゃないわね」
クロナはため息一つ、名刀・黒鴉を握った。再び、能力を発動させる。
「痛いでしょ? 苛つくでしょ? 私だって同じなのよ。悲しい、辛い。痛い。全て乗り越えて、あんたの前に立っているのよ」
二度目の能力発動までに、時間はかからなかった。一発目の半分の時間で、黒鴉の刃は黒い翼に変化する。
「その毒も、鎧も私の翼が、打ち砕くわっ!!」
一閃。
「明鳥黒破斬!!!」
散弾銃のように発射された黒羽が、白黒蛇を取り巻く毒煙を吹き飛ばした。
そして、全弾命中する。
「キシャアアアア!!!」
「風神之槍!!」
カレンが竜巻の槍を放って追撃した。
「響也!!」
「わかってるよ・・・」
響也が間隙を縫って襲いかかる。
「オレも行きます!!」
桜餅で全快した架陰も響也の横に並んだ。
「同時に仕掛けるぞ!」
「はい!」
「死踏・・・、【六の技】・・・」
響也が脚の筋肉に全神経を集中させ、魚雷の如く跳ぶ。足元の石畳は粉砕した。
「【魔影】・・・弐式・・・【魔影刀】!!」
架陰は地面に突き立っていた名刀・赫夜を握ると、黒いオーラを刃に纏わせた。
赫夜は、漆黒の大剣と化す。
(行け!!)
クロナは強く願った。
大丈夫だ。自分は何とかやって行ける。
響也さんが、カレンさんが、私の前を歩いてくれるから、私は迷わない。
架陰が、私の隣にいてくれるから、私は暖かい気持ちでいられる。
みんなが、一緒にいるから、寂しくない。
(ありがとう・・・、お兄ちゃん・・・)
もう、二度と一人で背負わない。
もう二度、逃げない。
これから、もっと痛いことだって、悲しいことだってあるだろうけど、私には、大切な人がいる。
これからも、進み続けられる。
命を。
想いを。
分け合って。
今日を踏みしめていく。
「【死神刈り】!!」
「【魔影】+【赫夜】!!!」
ドンッッ!!!!!!
響也のThe Scytheの刃と、架陰の魔影刀の刃が、白黒蛇の首にあてられた。
次の瞬間には、胴体と首が切り離され、血まみれの首が弧を描きながら宙に舞った。
「やったぞ!!」
「殺った!!」
誰もが、この戦いの終わりを確信した。
だが。
蛇はしつこいのだ。
首を斬られてもなお、蛇は数秒間生きていた。
まだ死ねない。
死んでたまるか。
例え死んだとしても、この中の誰かを、道連れにしてやる。
その執念だけで、蛇の頭が跳ね上がった。
「っ!?」
架陰目掛けて、大顎を開いて襲いかかる。
「架陰!!」
クロナが地面を蹴り、放心する架陰を突き飛ばした。
蛇の牙が、クロナに突き刺さる。
「うっ!!」
サーベルを思わせる牙は、クロナの身体の深くまで突き刺さっていた。
鎖骨を砕き、左胸に雷が落ちたかのような傷を付ける。
もう片方の牙は、右腕にくい込んだ。
「あ、ああああああああぁぁぁ!!!!」
クロナは白目を向いた。
冗談にならない程大量の血が吹き出し、絶命した蛇の頭に掛かった。
「クロナ!!」
「クロナさんっ!!」
三人が駆け寄ってくる。
痛すぎて、痛くなくなった。
身体の中の血液が、消えていく。
(ああ、私、死んだな・・・)
そこで、クロナの意識は途切れた。
その③に続く
その③に続く




