薫風団、問題児の集まり?
当たり前の様にテーブルに着き、エールをグイッと傾けるギルドの最高責任者にその場にいた全員が動きを止めた。
「ぎ、ギルドマスター、ここで何してるんですか?」
我に返ったダルベルトが恐る恐るアイヴォンに尋ねた。
「ホホホ、お主らを労おうと思っての。ここ最近、主らには少しばかり無理をさせとるからのー」
アイヴォンの言う通り、ここ数日高ランクの冒険者たちは高難易度の依頼に従事させられている。
今日、私たちが壊滅させたゴブリンの集落の件も本来は複数のパーティで行う様な依頼だ。
恐らく、聖なる盾や白竜団も同じ様な依頼を請け負っていたのだろう。
「冒険者として当たり前の事ですよ」
サンディスが爽やかな笑顔でそう答えると、他の連中もうんうんと頷いている。
「儂らも原因を調査しておるんじゃなが、未だ原因が掴めんのじゃ」
「別に私は暴れられるんやったら何でもええでー。あ、私もエールで」
お代わりを頼むアイヴォンに便乗して、追加のエールを頼む私にシャルジュとジョゼが苦笑していた。
「明日も、ちと大変になるじゃろうが、宜しく頼む…『あぁーッ!』」
運ばれてきたエールをいそいそと口元へ運ぶアイヴォンの言葉を遮るように、ギルド内に大声が響き渡った。
「マスターッ!! こんなところでサボってたんですね! さあ、仕事に戻りましょう」
「ギャスタン君、少し待ってくれ。儂の、ワシのエール……」
ギルドの奥から現れたギャスタンと呼ばれる男性はアイヴォンを捕まえると、名残惜しそうにエールを見つめるアイヴォンを引きずりギルドの奥へ消えていった。
***
翌日、冒険者全員に召集が掛かり私たち薫風団もギルドに集まっていた。
「ふぁ〜……こんな早くに何やねん」
「何いってるんですか、もう昼ですよ」
大きな欠伸をする私に、ジョゼが小さく耳打ちをした。
「今回集まって貰ったのは……」
冒険者達の視線の先には昨晩ギャスタンという副ギルドマスターに連行されていたアイヴォンだ。
あの後も仕事をしていたのだろう、彼の目の下にはくっきりとクマが出来ていた。
…………。
今回、冒険者が召集されたのは、街道で頻発する魔物騒ぎをギルド全体で対処に当たる為らしい。
低ランクの冒険者は、街道沿いの警備と出現する魔物の討伐。
中ランクの冒険者は街道沿い、バーウィッチ近郊の森にて魔物の掃討戦。
そして、私たち高ランクの冒険者は、複数のパーティ合同で森の奥へ向かい、原因の調査という事らしい。
調査に高ランクの冒険者が複数パーティで向かうのは、余りにも高ランクの魔物が頻繁に出現する為らしい。
「それで調査へ向かうパーティの組み合わせなんじゃが……」
「はいはーい! あぃらはサンディスさんと一緒じゃないとこの依頼放棄しまーす!」
アイヴォンが調査の組み合わせを発表しようとした時、薫風団のアイラが突然そんな事を言い出したのだ。




